宿泊施設や宿泊客の増加に伴い、ホテルや旅館は低価格競争に飲み込まれつつあります。
しかし、宿泊料金を下げることで客室の稼働率が上がったとしても1室あたりの利益は減少してしまいますし、低価格競争には価格崩壊のリスクもあります。
本記事では、価格競争に頼らずに自社を選んでもらうための、ホテルや旅館のブランディングについて解説していきます。
ブランディングとは?
ブランディングとは、自社の商品やサービスをひとつの「ブランド」とし、ほかとの差別化をはかるために行う取り組みのことです。
ブランドとは、そのサービスや商品が、他とは違う特別で信頼性のあるものであると顧客から認識されているもののことを指します。
ブランド力が高まり、認知度が高まると、自然と顧客から選ばれやすくなり、市場においてかなり優位に立てると考えられます。
さらに、顧客に商品を購入してもらい、その良さを実感してもらったら、自社に対してさらに信用を抱いてもらえるようになり、リピーターになってもらえる可能性もあります。
リピーター確保は長い目で見たときの経営の安定につながります。
ブランディングのメリットは、顧客集客力の向上だけではありません。
ひとつのブランドとして社会的信頼を勝ち取れば、仕入れ先などの取引相手ともスムーズな交渉ができますし、ひいては株価の安定にもつながります。
経営戦略を考える上で、ブランディンは欠かせない作業になってくるのです。
ホテルマーケティングにおけるブランディングの重要性
ブランドを構築することは、ホテルマーケティングにおいてとても重要です。
同じような宿泊プランを打ち出していたとしても、やはり知名度が高く信頼性のあるホテルや旅館、すなわち「ブランド力が高い」ホテルや旅館に顧客が多く付くのです。
冒頭でも述べましたが、ブランディングに失敗してしまうと、結局は宿泊料金の低価格競争に陥ってしまいがちなのがホテルや旅館といった宿泊業界の傾向です。
低価格競争は、価格崩壊を招いてしまいかねないというリスクも抱えていますが、あまりにも価格を下げすぎてしまうことで、かえって顧客からの信頼を失い、ブランディングに失敗する可能性もあります。
ホテルマーケティングにおけるブランディングは、施設やサービスの質といったほかのホテルや旅館では味わえないような宿泊体験を「強み」とし、それをブランド力としていくことが求められます。
「このエリアでこういう宿泊体験がしたいのならここ!」と顧客の頭の中にパッと浮かぶようになることが最終目標です。
ブランディングの手順
では、具体的にはどのようにブランディングを行っていけば良いのか見ていきましょう。
① ターゲットを明確にする
ブランディングを始める前に、まずはターゲットとなる層を明確にしておきましょう。
ターゲットが定まっていないと、どのような方向性のブランドにするのかが決めづらくなってしまいます。

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② 自社の強みを分析する
ターゲットの明確化と並行して、ブランドの主軸として売り出せるようなそのホテルや旅館の強みについて分析し、把握しておきましょう。
競合他社との差別化がはかれるような、「そのホテルや旅館でしか体験できないこと」が望ましいです。

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③ 競合相手を分析する
ターゲットや自社に関する分析ができたら、競合相手の動向についてリサーチしましょう。
競合相手がターゲットとしている層や、競合相手の強み、さらに競合相手は周囲にどのようなブランドとして捉えられているのかについて分析していきます。
競合相手とブランドイメージが被ってしまうと、差別化をはかることはできません。

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④ 自社の地位(ブランド力)について分析する
次に、自社がそのエリアの中で置かれている立場について分析します。
定めたターゲットに対して、競合相手とどのようにして差別化をはかるのか、顧客に選んでもらえるような強みとは何かについてリサーチしていきます。
この分析結果をもとに、そのホテルや旅館の地位、すなわちブランドについて分析します。

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ブランディングのポイント
ホテルマーケティングにおけるブランディングで大切なのは、ブランドイメージを統一してマーケティングを行っていくことです。
推し進めていきたいブランドイメージと実際に提供しているサービスに相違があってはいけません。
たとえば、高級なブランドイメージで売り出しているのにホテルが混雑していて、修学旅行生などがフロントで騒がしくしているところや、静かに過ごせることを売りにしているのに何度も仲居さんが出入りする旅館は、ブランドイメージと実際に提供しているサービスに違いが出てしまっています。
そのようなところでは、顧客が期待していたサービスを提供できていないことになり、ブランドイメージを損なっていると言えます。
まとめ
ホテルマーケティングにおけるブランディングについて解説しました。
信頼できるところとして顧客に認知してもらい、そのホテルや旅館のブランド力を高めていきましょう。