経営戦略を立てる時、まずはそのホテルや旅館が置かれている状況について把握する必要があります。
その際に役立つのが「SWOT分析」と呼ばれるものです。
本記事では、SWOT分析とは何か、どのようにして行えばよいのかについて解説します。
SWOT分析とは?
SWOT分析の「SWOT」は、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の頭文字を並べたものです。
SWOT分析とは、
内部環境、つまり「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」と、
外部環境、つまり「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」
について分析することで、客観的に今の状況を分析する方法です。
では、ホテルや旅館のSWOT分析を行う際、それぞれの項目は具体的にどのようなものを指しているのでしょうか。
「Strength(強み)」とは、そのホテルや旅館が持つ、顧客側から見て魅力的に映る点です。
逆に、「Weakness(弱み)」とは、顧客側から見てマイナスに映る点です。
そのホテルの設備や内装や歴史、サービスの質などはもちろん、口コミによる評判などもこれらの項目に含まれると言えます。
この2つの要素が「内部環境」と呼ばれるものです。
「Opportunity(機会)」とは、客観的に見て、ホテルや旅館が顧客をつかむチャンスとなっている外的要素を指します。
逆に、「Threat(脅威)」とは、客観的に見て集客を損なうような外的要素を指します。
駅や空港、周辺観光地からのアクセス、競合相手となる宿泊施設の有無、時の政府の政策に適応しているかなどが挙げられます。
この2つの要素が「外部環境」と呼ばれるものです。
「Weakness(弱み)」や「Threat(脅威)」といったマイナス面の分析は難しいことではありますが、これらをフラットな視点で分析し、改善することは、ホテルマーケティングにおいて非常に重要なことです。
SWOT分析の目的
SWOT分析の目的は、そのホテルや旅館の今現在の位置を確認し、今後の経営方針やサービス内容改善の計画を立てるなど、さまざまなことが挙げられます。
そのため、まずは何のためにSWOT分析を行うのかをはっきりとさせましょう。
漠然と良い面と悪い面を挙げても意味がありません。
ピンポイントの戦略を練るためには、はっきりとした目的をもって分析を行う必要があります。
SWOT分析の方法
SWOT分析は以下の手順で行います。
内部環境の分析
内部環境の分析の軸はいくつかあります。
営業や広報のようなマーケティング力や、サービスや従業員数といった人材力、そのホテルや旅館自体の歴史や周辺観光地といったブランド力、口コミやアンケートから得られる顧客満足度がその主な例です。
何本かの軸を基準として、それぞれのマイナス面とプラス面を挙げていくとやりやすくなるでしょう。
外部環境の分析
外部環境は、社会情勢や経済状態といった国内外の政治経済にかかわる規模の大きなものから、競合相手の有無や周辺のアクセス状況といったローカルなものまでありますが、どちらにせよ自分ではコントロール不可能な要素です。
そのため、「前提」となる条件を整理し分析することで、意思決定や戦略立案のベースを作っていくのです。
クロス分析
クロス分析とは、内部環境と外部環境を組み合わせて考えてゆく手法です。
内部環境と外部環境は2つずつ項目があるので、4通りの組み合わせがあることになります。
強み × 機会
そのホテルや旅館の強みを最大限に活かし、機会を逃さないようにする戦略のことで、SO戦略と言うこともあります。
たとえば、離れのある旅館なら、他の宿泊客との接触機会を減らすことができるということを前面に売り出せば、コロナ禍において非常に優位に立てるのです。
強み × 脅威
そのホテルや旅館の強みによって、脅威となる要因を回避するという戦略のことで、ST戦略とも言うこともあります。
たとえば、競合相手が近くにいたとしても、サービスの質の高さを売りにすれば周りからの差別からがはかれます。
弱み × 機会
そのホテルや旅館の弱みを改善し克服することで、巡ってきたチャンスをものにするという戦略のことで、WO戦略と言うこともあります。
たとえば、外国語に対応できるスタッフがいなかったが、新たに日本語以外も話せる従業員を雇い入れることで、インバウンド需要の増大というチャンスをものにすることができます。
弱み × 脅威
そのホテルや旅館の弱みを理解したうえで、脅威となるものから受けるマイナスの影響を最小限にとどめるという戦略のことで、WT戦略と言うこともあります。
たとえば、子供が思い切り騒げないような静かな雰囲気のホテルで、近隣で家族向けのプランを全面的に売り出しているホテルがあるならば、ファミリープランからの撤退も考えなければなりません。
分析結果の活用
上記のような分析結果を利用して、「攻め」の姿勢を取るのか「守り」の姿勢を取るのかを決断していきます。
弱みの補強や驚異の回避といった「守り」の姿勢は、あまり効果が出なくても損をすることはありませんが、大きな効果は期待できません。
逆に強みや機会をとらえて「攻め」の姿勢を取ると、大きな効果が期待できる分、失敗したときの損失が大きいことが多いです。
このあたりのバランスは非常に難しいですが、多少のリスクがあっても「攻め」の姿勢がないと現状打破の糸口は見えてこないかもしれません。
まとめ
SWOT分析について解説しました。
「敵(彼)を知り、己を知れば、百戦殆うからず」という孫子の言葉のとおり、戦略を立てるには、まずは自分の強みや弱みと周囲の環境を「知る」必要があります。
現状把握の手段の一つとして、SWOT分析を利用してみてはいかがでしょうか。