愛知県の東側は、かつては三河国と呼ばれていました。
三河出身の英雄と言えば、江戸幕府を開き、200年もの平和な時代の礎を築いた徳川家康。
そして彼が生まれたお城が、今回ご紹介する岡崎城です。
幼くして隣国へ人質にやられた家康ですが、幼少期を過ごし、そして長じて大名としての第一歩を踏み出した岡崎の地には特別な思い入れがあったことでしょう。
江戸時代に入ってからは岡崎の地は神聖視され、岡崎藩主は名誉ある役職とされていました。
本記事では、現在も岡崎市のシンボルとして市民に愛され続けている岡崎城について、その歴史と見どころを見ていきたいと思います。
江戸幕府初代将軍・徳川家康はじまりの場所
2023年の大河ドラマを機に改めて大きな注目を集めた岡崎城は、愛知県東部の岡崎市にあるお城です。
現在城址は本丸と二ノ丸が「岡崎公園」として整備され、市民の憩いの場となっています。
「日本さくらの名所100選」にも選ばれており、春の桜まつりやゴールデンウィーク藤まつりのシーズンになると多くの人でにぎわいます。
かつての建物の大部分は失われてしまいましたが、鉄筋コンクリート製の天守閣を中心に、いくつかの建物が再建されており、見応えも十分です。
ここでは、岡崎城の歴史を紐解きながら、その魅力について迫っていきたいと思います。
岡崎城と松平氏
江戸幕府を開き、日本史の中でも指折りの英雄となった徳川家康が生まれた岡崎。
家康の先祖である松平氏が代々治めてきた、小さいながらも忠義に篤い家臣に恵まれた地でした。
松平氏は内紛を繰り返しながら、三河の中で徐々に勢力を伸ばしていきます。
家康の祖父にあたる松平清康の時代になると、松平家はいよいよ三河統一へと乗り出します。
しかし、清康は織田信秀との交戦中に家臣の裏切りに遭い死亡。
世に言う「守山崩れ」です。
その子・広忠は当時わずか10歳。
叔父にあたる桜井松平家の信定との内紛が続きますが、今川義元の手を借りることによって岡崎への帰還が叶います。
広忠の時代は、隣国の織田信秀との交戦が絶えませんでした。
駿河国の今川義元と協力のもと何度か織田氏を迎え撃ちますが、そのほとんどが失敗に終わり、松平家中でも織田派と今川派に分かれ、骨肉の争いが繰り広げられます。
そんななかで生まれたのが家康です。
しかし家康が生まれた翌年には母・於大の方と父・広忠が離縁。
家康は幼いころに織田氏へと人質に出され、ほどなくして父を亡くし、今度は今川氏の方に人質として向かいます。
家康と岡崎城
14歳で元服した家康は今川義元から一字をもらい受けて元信と名乗り、二年後には祖父・清康からも字をもらって元康と改名。
同年に瀬名姫を妻に迎えます。
桶狭間の戦いには今川方の武将として参加した元康ですが、義元の死後は今川家と手を切り、「元」の字を捨てて家康と名乗るようになりました。
余談ですが、家康の「家」という字は鎌倉幕府創始者・源頼朝の祖父に当たる平安時代の武将である源義家からもらったそうです。
家康は織田信長と清州同盟を結び、先祖の悲願でもあった三河統一を成し遂げます。
藤原氏と繋がりがあるとされる徳川氏を名乗ることで朝廷から認められた家康は、名実ともに三河守となり、ここに私たちが良く知る徳川家康という名前も完成したのです。
家康はその数年後に浜松に拠点を移し、岡崎城は嫡男・信康に譲ります。
岡崎城の拡張
家康の時代の岡崎城は城の軍事機能のほとんどが本丸にあり、二ノ丸は居館であったと言われています。
岡崎城を現在のかたちにし、城下町を整備したとされるのが、家康の関東転封後に岡崎を治めた田中吉政。
元は羽柴秀次の家臣であった吉政は、築城や都市計画に優れた人物で、「田中掘」をはじめ、岡崎城を東海道の要所にふさわしい立派な城に仕上げました。
残念ながら地震によって失われてしまいましたが、吉政が築いた天守は犬山城に並ぶほどの立派なものであったと推定されています。
江戸時代以降の岡崎城
関ヶ原の戦いの功績が認められた吉政は九州で32万石もの領地を得、岡崎には以降徳川とゆかりの深い譜代大名が入ります。
岡崎藩は五万石と小藩ではありましたが、神君・家康公ご生誕の地ということで、岡崎藩主を務めるのは大変な名誉とされていました。
明治維新後は廃城令によりお城は取り壊されてしまいます。
大正時代には二ノ丸も含めて公園として整備され、昭和に入ると鉄筋コンクリートで天守閣が復元されました。
岡崎城見どころ
さいごに、岡崎城の見どころについて簡単にご紹介していきたいと思います。
天守閣
岡崎のシンボルである岡崎城の天守閣。
昭和に造られた鉄筋コンクリート製で、60年以上の歴史があります。
中は資料館のようになっていて、岡崎城や家康についての展示を見ることができます。
石垣
お城が好きな方は、ぜひ石垣にも注目してみてください。
清海堀と呼ばれる築城当時の古い石垣から、本丸の布積みの石垣まで、さまざまな時代の石垣を見比べることができます。
三河武士のやかた家康館
徳川家康について知りたいという方は、まずはここを訪れてみてください。
家康の生涯についての館内にはわかりやすい展示があります。