最近、若者の間でレトロなものが流行っていることをご存知でしょうか。
それに合わせて、ホテルや旅館といった宿泊業、飲食業など、さまざまな業種で、昭和や平成、またはそれ以前の古いものをあえて前面に売り出すような戦略を立てているところがあります。
若者がレトロなものに関心を抱くということには、消費傾向や消費行動の変化が関係しているのです。
本記事では、レトロなものを意識したマーケティング方法であるレトロマーケティングについて解説していたいと思います。
レトロマーケティングとは?
レトロマーケティングとは、その当時の懐かしさや親しみやすさといった肯定的な感情を、商品の購入へと繋げていくことを目指すマーケティング手法です。
懐かしさや親しみやすさという点では、年齢層の高いターゲットを想定しているように感じるかもしれませんが、実はレトロマーケティングはZ世代の若者へ向けたマーケティングにも当たります。
現在の生活様式や技術から見ると不完全で不便さを感じるようなものも多いですが、それがかえって若者の目には魅力的に映るのかもしれません。
2010年代から続くレトロブームは、元号が変わってから、新たに「平成レトロ」という言葉が生まれるなど、今もなお市場を拡大し続けています。
また、レトロな商品はSNSとの相性が非常に良いです。
SNSは非常に拡散力の高いコンテンツですので、マーケティングに組み込むことができるとかなり大きな効果を発揮すると考えられます。
SNSユーザーの中で広まった商品に関する情報は、広く共有され思いもよらないような空前のヒットを生み出す可能性もあるのです。

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なぜ「レトロ」は「エモい」に繋がるのか
「エモい」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
言葉にできないような心の動きを表すエモいというキーワードは、若者を中心に盛んに使われる造語のひとつです。
レトロなものとは何かを考えていくうえで、このエモいと言う概念は非常に重要なものになってきます。

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若者が商品を購入し、SNSで拡散する基準のひとつに、エモいという感情が挙げられるでしょう。
その商品を購入することで得た感情をSNSで共有するところまでが、最近の若者の一貫した消費行動になります。
ただ懐古的なものというだけでなく、エモいと感じることができるかというのが、レトロマーケティングにおいて重要な視点です。
レトロブームの背景
では、なぜレトロブームは拡大していったのでしょうか。
その大きな要因として考えられるのが、新型コロナウイルスの感染拡大などによる個人消費の落ち込みです。
パンデミックが起こる前からも、長く続く不況などによる個人消費の落ち込みは問題視されてきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大による行動制限で、さらに消費の機会は少なくなってしまいました。
行動制限が緩和されてしばらくたった今でも、完全に以前の水準を取り戻したとは言い難い地域や産業も多く、集客の戦略のひとつとしてレトロブームに乗っかり、その結果消費者からもそれが支持されていったということが考えられます。
観光業界を例に考えると、レトロブームへの投資は、新しい設備などを導入するよりもコストが抑えられるという背景があります。
今ある少し古い施設をうまく活用すれば、それだけでノスタルジーを感じることができるスポットになるのです。
レトロな建物や内装をSNSでうまく広めることが出来れば、大幅に集客が改善されるうえに、大規模な改修工事に比べるとはるかに低コストで経営改善を図ることができます。
また、消費者側の心理状況も大きく関連しています。
長く続く不景気に加え、新型コロナウイルスの感染拡大やその影響でさらに落ち込んだ経済状態により、ますます社会への不安が増大する昨今においては、過去への憧れや懐古の気持ちを持つという方も多いようです。
昭和のエネルギーにあふれたパワフルな時代や、平成初期のバブル経済のような豊かさを無意識に懐かしんでいたのかもしれません。
平成初期はバブル景気に浮かれていた日本も、バブル崩壊後は「失われた30年」に突入していきました。
そんな情勢の中でも明るく前向きに生活を営んでいこうとする当時の若者の姿に、この混迷の時代を進んでいかなければならない現在の若者の姿を重ねているという見方もあります。
レトロブームの背景には、なるべくコストを抑えながらも新たな集客を得たいという商品を売る側の事情と、社会への不安を抱えた消費者側の事情が背景にあったのです。
まとめ
レトロマーケティングについて解説しました。
懐かしさや親しみを消費のきっかけにしようというレトロマーケティングは、実際に当時のことを知る比較的高めな年齢層だけでなく、「エモい」を消費の基準とするZ世代の若者も対象にしたマーケティング方法です。
レトロさをうまく活用することで、新たな商品の魅力を開拓していくことができるかもしれません。