旅行の目的は、何も観光だけとは限りません。
心や体を休めて英気を養うことも、旅行の醍醐味と言えます。
「自分磨き」への関心が高まるなか、今注目を浴びているのが、ウェルネスツーリズムと呼ばれる旅行形態です。
本記事では、心身をリフレッシュできる、ウェルネスツーリズムについて解説していきます。
ウェルネスツーリズムとは?
ウェルネスツーリズムとは、旅行を通して心身をリフレッシュさせ、そのバランスを整えるというものです。
ウェルネスツーリズムでは、旅行の目的を観光のみに絞るのではなく、スパやヨガ、薬膳料理など、身体に良いことをして体の調子を整えたり、瞑想や他の宿泊客との交流によって自己の内面と向き合うことで心の健康を促進したりします。
ウェルネスツーリズムの起源には2つの説があります。
ひとつは古代の聖地巡礼がウェルネスツーリズムの起源であるという説です。
聖地巡礼とは、イェルサレムやメッカなど、宗教上重要な土地をめぐることで、新たな悟りを得ようとする旅のことです。
その旅の道中は、周辺の民家に宿泊することが多かったようです。
「hotel(ホテル)」や「hospitality(おもてなし)」の語源である「hospes」という語は、この聖地巡礼の旅人を無条件に厚遇し、保護するというところからきています。
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もうひとつは古代ローマのスパがウェルネスツーリズムの起源であるという説です。
スパというのは、温泉入浴のことです。
古代ローマには、日本と同じく温泉入浴や公衆浴場の文化があり、民衆が日常的に入浴したり、傷を負った兵士たちが湯治をしたりする習慣がありました。
温泉入浴による身体の健康への効能は医学的に証明されており、現在のウェルネスツーリズムの目的の約半数がスパであると言われています。
日本には温泉が多く、古くから当時の文化が根付いており、また宿泊客へのおもてなしが手厚いことでも有名です。
ウェルネスツーリズム需要拡大を受けて、国内の需要に対しても、インバウンドの需要に対しても、十分に応えられるだけのポテンシャルが日本にはあります。
ウェルネスツーリズム需要拡大の背景
ウェルネスツーリズムの需要拡大の背景には、主に以下の3つの要素があります。
新型コロナウイルスの感染拡大
新型コロナウイルスの感染拡大により、他の宿泊客や観光客との密接や密集を避け、なるべくホテルや旅館のなかで過ごすという傾向が生まれました。
ホテルや旅館の外での観光以外の旅の目的として、ウェルネスツーリズムへとつながるようなアクティビティの需要も自然と高まっていったのです。
健康志向の高まり
新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、近年健康へ気を使う方が増えてきました。
旅行を通して、健康に良いことをして免疫力をアップさせたいと思う観光客が増えてきたのです。
精神的充実への関心
「ストレス社会」と呼ばれるほど、現代社会を生きる上では、さまざまな精神的圧迫を受けなければなりません。
ウェルネスツーリズムを通して、そうしたストレスから解放され、また普段は余裕がなくて向き合えなかった自分自身の心の状態に向き合いたいという方も増えています。
旅行に精神的な充実を求める傾向が高まってきているのです。
ウェルネスツーリズムとホテル・旅館
では、ウェルネスツーリズムの需要拡大を受けて、ホテルや旅館はどのように対応していけば良いのでしょうか。
温泉
日本は温泉大国です。
火山列島でもある日本列島には、各地に温泉街があり、古くから湯治場として栄えてきました。
国内では昔から温泉旅行は定番でしたが、近年ではインバウンドの需要も高まってきています。
日本では刺青は反社会的組織を連想させることから入浴を断るところが多かったのですが、海外ではファッションとしてタトゥーを入れている方も多く、そのあたりの配慮も必要になってきます。
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各種アクティビティ
ヨガやスポーツなど、各種アクティビティをホテル内で体験できるように設備や講師を準備することもウェルネスツーリズムへの対応のひとつです。
身体を動かすことで健康へとつながり、また日常のストレスを発散することもできます。
周辺観光も兼ねたサイクリングツアーなども手軽で良いかもしれません。
精進料理・薬膳料理
精進料理や薬膳料理など、身体に良い食事を提供するのも良いでしょう。
とくに精進料理は、栄養バランスがとれ身体に良いだけでなく、肉食を禁じられた僧侶たちの長年にわたる工夫からとても美味しいことでも注目が集まっています。
写経・座禅
写経や座禅の体験を通して自己を見つめ直すことも、ウェルネスツーリズムにつながります。
周辺の寺院と協力して仏教説話の講演もしてもらうと、より自己への理解が深まるでしょう。
まとめ
ウェルネスツーリズムについて解説しました。
心にも身体にも安らぎを与えたいという現代社会に生きる消費者の需要に合わせて、ホテルや旅館も柔軟に対応していく必要があります。