火山列島である日本にはまんべんなく温泉地が分布していますが、それをうまく活用できていない地域もたくさんあります。
地方創生という観点からも、新たな観光資源の開拓は地方自治体にとって非常に重要なことです。
本記事では、地方創生とも関わりの深いヘルスツーリズムについて解説していきます。
ヘルスツーリズムとは?
「ヘルスツーリズム」という言葉をご存知でしょうか?
ヘルスツーリズムとは、文字通り旅行を通して健康を手に入れようというものです。
以下に観光庁によるヘルスツーリズムの定義について抜粋しておきます。
地域の資源を活用した観光地域づくりについて (ヘルスツーリズム)- 観光庁より
平成24年に閣議決定された「観光立国推進基本計画」では、国内外からの観光旅行者のニーズに応えるために、日本国内にある豊かな観光資源のなかからニューツーリズムを開拓することが大切だとしています。
ここで言うニューツーリズムとは、従来の観光業では取り入れられてこなかったような地域固有の観光資源にスポットを当て、体験型、交流型の要素を取り入れた新たな旅行形態のことで、ヘルスツーリズムもこのうちのひとつに当てはまります。
ヘルスツーリズムは、ウェルネスツーリズムなどに代表される健康の増進や疾病の予防などを目的としたものと、自国にはない先進医療を受けることを目的としたメディカルツーリズム(医療インバウンド)と呼ばれるものの2種類に分けることができます。
ウェルネスツーリズムとは、旅行を通して心や体の健康を促進するというもので、ホテルや旅館の宿泊プランのなかにも取り入れやすいコンテンツです。
メディカルツーリズムは医療インバウンドとも呼ばれ、主に日本の先進的な医療に基づく治療を受ける患者やその家族の滞在を指すもので、訪日外国人によるインバウンド需要を想定したものです。
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海外・国内におけるヘルスツーリズム
ヘルスツーリズムの起源は、古代ギリシャやローマ時代の休養や保養の文化にあると言われています。
17世紀以降は近代医学の発達により温泉や海が健康と深い関わりがあるとわかると、上流階級を中心に保養地が栄えました。
現在でも欧州では、健康増進を目的とした観光が盛んです。
一方、日本では古くから湯治の文化があり、その歴史は奈良時代にまでさかのぼることができます。
湯治とは、温泉の効能によってケガや病気を治す療養方法のことです。
民間療法から発展し、皇族や貴族たちの間で広まりましたが、鎌倉時代や戦国時代には大名をはじめとする武士たちも湯治を好むようになり、江戸時代には温泉旅行が民衆の間で大きなブームとなりました。
日本におけるヘルスツーリズムは、この湯治の文化の流れを汲む温泉旅行が主なものとなっています。
日本でも江戸時代から徐々に温泉の科学的効能が証明されるようになり、明治時代に入ってからも温泉は人々に愛されてきました。
温泉は地域の貴重な観光資源であり、温泉があるというだけである程度の集客があるものだというバイアスは思いのほか強く、なかには十分なマーケティングを行わなかったために廃れてしまった温泉街も少なからず存在します。
そうした地域を再び盛り上げるためにも、ヘルスツーリズムは非常に重要な概念になってきます。
また、温泉文学と呼ばれるものがあるように、日本の文化と温泉とは切っても切れない関係にあります。
健康増進のためだけでなく、周辺の歴史や文化に関する観光も取り入れていくと、より大きな集客を期待することができます。
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ヘルスツーリズムとホテル・旅館
ヘルスツーリズムによって地方創生をするためには、その土地のホテルや旅館の努力が必要不可欠です。
周辺の温泉や観光地との連携はもちろん、地元の食材を使った健康に良い料理を提供することでヘルスツーリズムの需要に応えることができます。
また、滞在中のアクティビティの充実もヘルスツーリズムにつながります。
ヨガのインストラクターや周辺のウォーキングなど、さまざまな企画が考えられます。
ホテルや旅館がそうした工夫で観光客を呼び込むことができれば、その地域での雇用が増え、地方創生に大きく貢献できるでしょう。
温泉旅行をはじめとするヘルスツーリズムはインバウンド需要も非常に高いです。
そのため、宿泊客が心身の健康を保つためのプログラムを作り出していくのと並行して、多言語対応やキャッシュレス決済、フリーWi-Fiの充実など、訪日外国人観光客を意識した施設整備もしっかりと行っていきましょう。
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まとめ
ヘルスツーリズムと地方創生について解説しました。
健康への関心が高まっているこの機会を逃すことなく、ヘルスツーリズムに力を入れることで、新しい顧客層を開拓していきましょう。