マーケティングを考えていく際には、まず内部環境と外部環境の双方の視点から見ていくのが主流です。
ここで言う内部環境とは、自社の内部にある要因のことで、外部環境とは、自社を取り巻く市場の様子や社会、経済などの要因のことです。
自社の内部環境と外部環境の両方を分析していくことで、事業の現状やこれからを考えていくのがマーケティングの基本です。
その中でも、外部環境を考えていくうえで大切になってくる2つの視点が、ミクロ環境とマクロ環境になります。
本記事では、外部環境の分析には欠かせない、ミクロ環境とマクロ環境の違いとそれぞれの意味について解説していこうと思います。
ミクロ・マクロとは?
「ミクロ」「マクロ」というような単語を、皆さんも一度は耳にしたことがあるかと思います。
物理学的に言うと、「ミクロ」は電子顕微鏡で見なければ見えないほどの非常に小さなもののことを、「マクロ」は肉眼でも見えるくらい大きなものをそれぞれ指します。
マーケティングにおいては、ミクロ環境とマクロ環境という捉え方は主に外部環境を分析するときに導入される視点で、ミクロ環境は広い視野で外部環境を分析していく視点、マクロ環境は狭い視野で外部環境を分析していく視点です。
つまり、ミクロ環境とマクロ環境の違いは、外部環境を分析していく際の視野の大きさの違いに当たります。
外部環境の分析は、思わぬところから事業に対して影響が及ぶこともあるため、広く視野を持って行わなければなりませんが、同時に自社の周りのことにも目を配らなければ、足元をすくわれてしまいかねません。
なので、ミクロ環境とマクロ環境をバランスよく見ていくことが、外部環境の分析においては非常に重要なのです。
ミクロ環境
ミクロ環境とは、比較的狭い視野で持って、自社で影響をコントロールするのが可能な環境要因について分析していく視点のことです。
ミクロ環境を分析していく際の視点については、主に5つあります。
買い手の交渉力
「買い手の交渉力」とは、消費者や取引先といったお客様との力関係を考えていく項目です。
同じような製品やサービスを扱う会社がいくつかあり、選択する際に消費者の心理的なハードルが低い状況のことを、「買い手の交渉力が高い」状況と言い、逆に同じような製品やサービスを扱う会社が少なく、選択の余地がない、つまり消費者の心理的なハードルが高い状態のことを、「買い手の交渉力が低い」状態と言います。
売り手の交渉力
「売り手の交渉力」とは、自社に原材料などを供給している業者との力関係を考えていく項目です。
原材料費が嵩み、利益が圧迫されている状態を、「売り手の交渉力が高い」状態と言い、逆に原材料費が安く抑えられ、利益がしっかりと確保できる状態を、「売り手の交渉力が低い」状態と言います。
業界内の競争
「業界内の競争」とは、競合他社との競争のことです。
競合他社が少なければある程度有利に物事を進めることができますが、競合他社がたくさんあると、その分価格競争などに陥って利益がしっかりと確保できないということが考えられます。
新規参入者の脅威
「新規参入者の脅威」とは、市場に新たな競合他社が入り込んでくる際に考えられるリスクのことです。
新しく市場に参入しやすいか否かは業界や業態にもよるかと思いますが、新規参入しやすい市場については、他社と差別化が図れるような強みを持っておくことが大切です。
代替品の脅威
「代替品の脅威」とは、今ある自社の商品が別の商品に取って代わられるリスクのことです。
一見別のものに見えても、ある視点から見れば消費者にとって代替が効くという場合もあり、商品が持つ「価値」に注目して分析していかなければならない項目です。
これらを分析していく代表的なフレームワークとしては、5F分析が挙げられます。
マクロ環境
マクロ環境とは、比較的広い視野で持って、自社ではコントロールができないような環境要因について分析していく視点のことです。
マクロ環境を分析していく視点は、主に4つあります。
政治的要因
「政治的要因」とは、税制や法律改正など、経済に影響をもたらすような政治の動きについての要因です。
一見市場には関係がないように見えるものでも大きな影響力を持つ者には注意が必要です。
経済的要因
「経済的要因」とは、景気そのものや、インフレ・デフレといった市場に影響を及ぼすであろう経済的な要因のことです。
特にエネルギー価格については、どのような業種でも原材料の高騰に結びつくので注意しておきましょう。
社会的要因
「社会的要因」とは、私たちの生活様式や消費者の趣向の変化のことです。
コロナ禍が良い例かと思いますが、生活様式は消費傾向に大きく影響を及ぼします。
技術的要因
「技術的要因」とは、市場に影響を及ぼすような技術革新のことです。
最新技術を導入することにより生じるメリットやデメリットについて分析していきます。
これらを分析していく代表的なフレームワークとしては、PEST分析が挙げられます。
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まとめ
ミクロ環境とマクロ環境の違いとそれぞれの意味について解説しました。
それぞれに対して適切なフレームワークなどを用いて分析していくことで、さまざまな角度から外部環境を見ていきましょう。