ホテルや旅館のマーケティング戦略を立てる時は、自社のサービスの質や価格設定だけを見直しても効果はありません。
世の中の動きによって、宿泊業界も刻一刻とその形態を変えているのです。
本記事では、世の中の動き、つまり外部環境を把握するための手段であるPEST分析について解説します。
PEST分析とは?
PEST分析とは、外部環境を整理する際に用いるフレームワークのひとつです。
そのホテルや旅館を取り巻く政治的、または経済的状況は、やみくもに新聞などで情報収集をしても、整然とした理解を得ることはできません。
そこで、PEST分析を使うのです。
PESTとは、Politics(政治的要因)、Economy(経済的要因)、Society(社会的要因)、Technology(技術的要因)の頭文字を取ったものです。
これらの要素を整理したうえで、それが今後どのようにそのホテルや旅館に影響していくのかを分析し、マーケティング戦略を練るのに応用するのがPEST分析です。
PEST分析の目的
PEST分析は、自社の状況を俯瞰的に見ていくためのフレームワークです。
そのホテルや旅館が今現在置かれている状況を調査することなく経営を続けていくことは、まったく視界が開けていないような状態で前に進んでいくようなものです。
宿泊予約数を伸ばし、経営改善をはかって成功を収めるためには、世の中の流れをつかみ、今世間ではどのようなものが求められているのかということをいち早くつかむことが非常に大切です。
そのような外部環境を把握するのは、容易なことではありません。
なので、PEST分析などのフレームワークを利用することには大きな意味があるのです。
PEST分析の内容
では、4つの項目それぞれの内容を見ていきましょう。
Politics(政治的要因)
政治的要因となりうるものとしては、国の諸政策や法規制や法緩和、税金関係、外交施策などがあります。
法規制や法緩和などは「脅威」としてとらえられることも多いですが、見方を変えれば大きなチャンスととらえられることもあります。
また、政権交代なども市場変化と関わりがあると言えるでしょう。
Economy(経済的要因)
経済的要因になりうるものとしては、株価や為替の動き、金利、景気そのものなどもありますが、賃金の変化や個人の消費の傾向なども大きな関連性があります。
食材や家具の輸入の際には、為替もダイレクトに仕入れ値に影響しますが、原油価格にも注意が必要です。
輸送するための船を動かすにも飛行機を飛ばすにも、ガソリンが必要です。
原油価格は、一見関係がないように思える分野でも、物価に多大な影響をもたらすことがあります。
また、経済的要因を考える上では、特に中長期的な視点を持つことを必要とします。
今ある情報の中から、将来の経済の動向と、それに伴うあらゆるリスクに対してのマーケティング戦略を立てる必要があります。
Society(社会的要因)
社会的要因となりうるものとしては、トレンドやライフスタイル、宗教や文化などがあります。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴うライフスタイルの変化によって、宿泊業界はその方針を大きく変えざるを得ませんでした。
また、昨今の「他人がしていないことをしてみたい」「気ままな一人旅がしたい」といったトレンドから、ホテルや旅館、旅行会社が打ち出す旅のプランも変化しつつあります。
さらに、インバウンド需要に期待が高まる中、外国人旅行客が信仰している宗教に配慮したり、その国の文化を尊重したりすることも非常に重要です。
ホテルや旅館が宿泊プランを「売る」ためには、ターゲットが何の目的でそこを訪れるのか、何を求めているのかを把握し、それに合わせたマーケティング施策をほどこさなければなりません。
Technology(技術的要因)
技術的要因となりうるもとしては、AIやインターネット環境の技術、機械そのものの進歩などがあります。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、非接触技術が大きく進歩しました。
それらを導入すると、お客様も従業員もさまざまな手間が省けて便利になりますが、導入にはそれなりにコストもかかります。
また、インターネット環境の急速な発展により、ホテルや旅館の宿泊予約は今やオンラインで行うことが主流になっています。
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このような流れを受けて、ペーパーレス化が進んでいるか、インターネット予約ができるようになっているのか、それはどのくらい便利なのかというのはとても重要な分析のポイントになってきます。
PEST分析の手順
日々あふれてくるニュースや新聞の情報をただ4つに分類していくだけでは、「分析」したことにはなりません。
ノートに羅列していくだけならば、それは整理にすぎません。
整理して4つに分類した情報を、「脅威」であるか「機会」であるか判断することに意味があります。
同じ情報でも「脅威」になるか「機会」になるかは、見方によって変わります。
なるべく多角的な視点から分析を行う必要があります。
そして、分析した情報をもとに、マーケティング戦略を立てていくのです。
まとめ
PEST分析の内容とその手順について解説しました。
自社の置かれた環境を客観的に分析するためにも、いちどはPEST分析をするべきなのではないでしょうか。