社会的な風潮や経済状態によって、消費傾向は大きく変わります。
高度経済成長期やバブル期までの消費の主流であったモノ消費に始まり、バブルがはじけて経済が低迷し、国内外を動揺させるような事件がいくつも起こった平成を経て、令和を迎え、コト消費、トキ消費、イミ消費など、消費傾向はさまざまな変遷をたどってきました。
そして今一番注目されていると言っても良い消費傾向が、エモ消費です。
本記事では、具体例を参照しながら、エモ消費について考えていきたいと思います。
Z世代が「エモい」と感じるもの
まずは、エモ消費の根幹となる「エモい」について考えていきたいと思います。
「エモい」とは、言葉にし難い感情を表す「得も言われぬ」や、英語の「emotional 感動的な」が語源となっていると言われており、心を突き動かされるような感動を表現した言葉です。
「作り込まれていなもの」、「自分だけの特別なもの」、「推し活」といった考えた方を軸に見ていくと、「エモい」を理解しやすくなります。
フィルムカメラなどの少し不便だけれども味があるものや、オリジナルのスマートフォンケースなどの世界に一つだけしかない特別なもの、アイドルやキャラクターなどの推しを応援するための活動など、Z世代はさまざまなものに「エモい」を感じているようです。
さらに、エモ消費を考えていく際には、「経験」「感動」「共有」3の柱が重要になってきます。
消費行動によって「経験」するだけではなく、そこから得た「感動」を、SNSなどで「共有」することによって完成するのです。
デジタルネイティブであるZ世代の若者の多くは、日常的にSNSでフォロワーと共に日々の出来事やそこから生まれる「エモい」を共有しています。
エモ消費は、人とは違った特別な経験や、自分が心を突き動かされたものなどをSNSで共有することで成り立っているのです。
顧客が商品の使用感などをSNSで共有することで、強い拡散力で持って商品の良さを伝えてもらうことができます。
実際に商品を使ったりサービスを体験したりした顧客の口コミは、企業からの一方的な広告よりも信頼できる情報として消費者に認識され、新たな顧客を生むファクターとなります。
そのため、このエモ消費と呼ばれる消費傾向は、マーケティングと非常に相性が良いです。
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具体例で見るエモ消費
では、エモ消費を捉えるためにはどのようなことを実践すれば良いのでしょうか。
この項では、具体的な事例を交えながらエモ消費についての理解を深めていきたいと思います。
美しい景色
「エモい」という言葉が聞き慣れない方からすると、「若者の感覚を捉える」と言われてもピンとこないかもしれませんが、純粋に深く感動できるものと考えて相違ありません。
もちろん世代による価値観のギャップはありますが、世代や年齢に関係なく感動できるものもたくさんあります。
たとえば、雄大な自然や摩天楼から見下ろす夜景などは世代を問わず美しいと感じることができるものなのではないでしょうか。
特に趣向を凝らさずとも、元から美しいものは誰もが美しいと感じます。
SNSでも、旅行先での美しい景色を拡散している人はたくさんいます。
線香花火・純喫茶・アンティークなど
時代を感じさせるようないわゆるレトロなものも「エモい」と深く関係しています。
「大正レトロ」、「昭和レトロ」、「平成レトロ」など、レトロブームの影響でさまざまな商品やサービスが開発されていますが、レトロマーケティングのターゲットは何も昔を懐かしむような世代だけとは限りません。
どこか懐かしさを感じさせるものや、郷愁を誘われるものなどは、若者からしてもどこか親しみを覚え、「かわいい」などの心の動きを促すものになります。
ホテルや旅館でも、内装や家具などの少し古びたアンティークな印象は、SNSで広く拡散される場合が多いです。
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フィルムカメラ
フィルムカメラなどの一見少し手間がかかってしまうようなものも、Z世代の「エモい」を引き出すアイテムです。
現像までどのような写真がとれたのかわからないフィルムカメラは、わくわく感をもたらしますし、仕上がった写真もデジタルにはないセピア色の郷愁を誘います。
推しの誕生日を祝う
この頃注目される機会が多くなった「推し活」ですが、同じ人物を推している人同士がSNSなどで繋がり合って、イベントを計画したり、推しの誕生日を祝ったりすることがあるというのはご存知でしょうか。
推しに直接アピールすることはかなわなくても、推しをお祝いする気持ちをフォロワーと共有することに「エモい」を見出しているのです。
最近では、百均などに推し活コーナーが設けられているだけでなく、ホテルやカラオケなどでも推し活プランを企画しているところがあります。
まとめ
具体的な事例を通して、エモ消費について考えていきました。
SNSでの共有までがセットになっていることが多いエモ消費は、商品やサービスの良さを広く拡散してもらうことができます。
エモ消費の需要を獲得して、うまくマーケティングに取り入れていきましょう。
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