新型コロナウイルスの感染拡大もひと段落し、再び日本に訪れる外国人観光客が増えてきました。
そこで問題になるのが、観光客の極端な増大による地域住民への被害や環境への配慮の欠如から起こる種々のトラブルです。
本記事では、オーバーツーリズムとは何か、オーバーツーリズムに対してホテルや旅館はどのように対応していけば良いのかについて解説していきます。
オーバーツーリズムとは?
オーバーツーリズムとは、ある観光地が許容できる観光客数を大きく上回る人々がその観光地を訪れることによって発生する観光公害のことです。
観光地に観光客が集まることは一見良いことのようにも思えますが、物事には限度というものがあり、それを超えてしまうと、観光客にとっても、地域住民にとっても、その土地でビジネスを行うさまざまな業種の人々にとっても困ったことが起きてしまいます。
オーバーツーリズムは世界的に問題視され、イタリアのヴェネツィアなどはよくニュースにも取り上げられています。
しかし、オーバーツーリズムはなにも国外に限った話ではありません。
国内でも、観光客の急激な増大に伴うさまざまな弊害が起こっているのです。
何年か前から取り沙汰されているのが京都で、どこに行っても人があふれかえっており、道は観光客でふさがれ、公共交通機関も、通勤通学や地域住民の移動といった本来の利用者がまともに利用できないような状態になることもあります。
京都だけでなく、日本には全国各地に観光地がありますし、今まで観光地でなかったような田舎のまちでも、アニメの舞台になった途端人が押し寄せ、地域住民が困惑するような事態となっているところがあります。
観光客が訪れることで地域が潤うのは間違いありませんが、そこに住んでいる地元住民の負担や、観光客がその観光地の雰囲気を存分に味わえるよう考慮すると、ある一定の制限があった方が良いように思います。
オーバーツーリズムによる被害
では、オーバーツーリズムは具体的にどのような問題を引き起こしているのでしょうか。
混雑
まず挙げられるのがとにかく混雑することです。
歩道がぎゅうぎゅう詰めになることはもちろん、狭い路地にまで人があふれ返り、車が通れなくなってしまうようなこともあります。
極端な混雑は地域住民にとっても迷惑ですが、観光客にとってもあまり良い話ではありません。
旅行する際は、その観光地の雰囲気を楽しむことも含まれています。
あまりにも人が多すぎては、景観も損なわれ、雰囲気を楽しむどころか人混みに酔ってしまいそうです。
混雑による不満足感はリピーター確保の妨げにもなります。
公共交通機関の乱れ
人が多く押し寄せると、当然公共交通機関も混雑します。
混雑するくらいならまだ良いのですが、極端な観光客の増大によってダイヤが乱れ、本来利用するべき地域住民が公共交通機関を利用できないようなことがあります。
ピーク時などは増便しても追いつかないような状態になるところもあるようです。
夜中の騒音
観光客と地域の住宅街は必ずしも明確にエリア分けされているわけではなく、特に外国人観光客からはその違いが分かりづらかったりします。
観光客が夜中に住宅街を歩いて移動したりすると、話し声や荷物を引き摺る音が響いて、近隣住民の眠りの妨げになってしまいます。
マナーの悪さ
観光客のマナーの悪さも度々問題視されます。
ごみをその辺にポイ捨てしてしまったり、一般の民家を写真におさめたり、ホテルの備品を持ち帰ったりと、時にありえないようなことをする人もいます。
あまり強い言葉で非難しすぎても日本に悪いイメージを持たれますし、かといって何も注意しないわけにもいかなく、難しい問題ではあります。
対策として、さまざまな言語で注意書きが貼ってあるところもあります。
雇用の不安定化
観光客の増減はその地域の雇用にも大きく影響します。
繁忙期には追い付かないほどの雇用の需要がありますが、閑散期には従業員を賄いきることが難しくなり、その人数調整に頭を悩ませるところも少なくありません。
雇われる側からしてみても、仕事がある時期はその目まぐるしさにストレスを感じ、仕事がない時期は雇用先を探すのにもひと苦労です。
違法な民泊
観光客が増えるとホテルや旅館といった宿泊業は大変潤いますが、一方で法の規定を満たしていない民泊も増える傾向にあります。
違法な民泊は近隣住民にも大きな負担となり、大変迷惑です。
環境問題
オーバーツーリズムにより、世界遺産などの重要な文化財が傷付けられることもあります。
中国の万里の長城や兵庫県の竹田城などがその例です。
遺跡が傷付けられること自体、由々しき事ではありますが、一部が欠けてしまったりすることによってその価値が損なわれてしまうこともあるようです。
ホテル・旅館のオーバーツーリズム対策
では、ホテルや旅館はオーバーツーリズムに対してどのようなアクションが取れるのでしょうか。
まず、宿泊料金を調節することが挙げられます。
繁忙期には宿泊料金を上げ、閑散期には割引をすることで、観光客の分散をはかります。
また、まちに出なくてもホテルのなかで楽しむことができる特別な体験を用意するのもいいでしょう。
伝統工芸品のワークショップや日本食の調理体験などはとくに外国人観光客の目を引き、宿泊予約数の増加にもつながると思われます。
さまざまな工夫をしつつ、地域住民への説明も十分に行ったうえで、オーバーツーリズムによるトラブルを少しでも減らすことができるように努めましょう。
まとめ
オーバーツーリズムについて解説しました。
オーバーツーリズムは人気の観光地に一極集中してしまうことで起こるトラブルですが、有名観光地だけが魅力的な観光地ではありません。
旅行をする際はなるべく人込みを避けて行動したいものです。
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