「ビーガン(完全菜食主義)」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
似たような言葉に「ベジタリアン」というものもあり、それぞれどのような意味の言葉でどのような違いがあるのか、またどのような目的でビーガンとしてのライフスタイルを貫いているのかはあまり知らないという方も多いかと思います。
日本ではそれほど一般的ではないビーガンですが、欧米ではビーガンの方も増えており、これからインバウンド需要が増えていくと考えられる中で、ホテルや旅館などでもビーガンについて知ることが求められています。
本記事では、ビーガンとはどのようなものなのか、またホテルや旅館としてどのようなところに配慮していけば良いのかについて解説していきます。
ビーガンとは?
ビーガンとは、日本語では完全菜食主義、または完全菜食主義者などと表記し、動物由来の食品を一切摂取しないというライフスタイルや、それを選択した人のことを指します。
ビーガンは動物性のものをまったく口にしないため、肉や魚だけでなく、乳製品、卵、中にはハチミツを食さない人もおり、動物やその一部を加工したものや、動物を利用して生産したものは食べないのです。
とはいえ、ビーガンのなかにもさまざまな考え方の人がおり、菜食主義の程度もさまざまです。
基本的には、動物由来のものは口にしないというのがビーガンです。
また、食事だけでなく、化粧品や衣類などの日用品においても、動物性のものを購入したり使用したりすることを忌避する「エシカル・ビーガン」という考え方もあります。
動物の毛皮などを購入しないのはもちろん、卵、乳製品、ハチミツなどを原材料に含まない化粧品(ビーガンコスメ)を選んで購入している人たちのことです。
日本ではあまり浸透していないようにも思われますが、ヨーロッパでは特にビーガンの人が増えており、飲食店や宿泊施設、小売店などでの配慮も進んでいます。
日本でも今後ビーガンの人の割合は増えていくと言われていますし、インバウンド需要が拡大している昨今の情勢を鑑みると、ホテルや旅館といった宿泊施設でも、ビーガンへの配慮が必要になってきているのではないでしょうか。
ビーガンとベジタリアンの違い
「ビーガン(完全菜食主義)」と似たような意味の言葉に、「ベジタリアン(菜食主義)」というものがあります。
この両者の違いは非常に難しいのですが、ベジタリアンの中のひとつのカテゴリーとしてビーガンというものが存在すると考えるとわかりやすいかもしれません。
ベジタリアンとは、日本語では菜食主義と表記するように、肉料理や魚料理を食べないというライフスタイルや、それを選択した人のことを指します。
ベジタリアンの中にも実にさまざまなパターンがあり、中には肉料理は食べてはいけないが魚料理は食べても良いとされているものもあり、厳格なものから比較的寛容なものまで実に様々です。
前述のとおり、ビーガンは動物そのものでなくとも、動物由来の食品はすべて口にしないというのが基本ですから、ベジタリアンの中でもかなり厳格な部類に入ります。
ビーガンの背景
ビーガンというライフスタイルを選んだ背景には、さまざまなことが考えられます。
まずは、宗教的な理由です。
日本でも精進料理というものがあり、仏教にはなんとなく殺生を嫌うようなイメージがあるかと思いますが、宗教によってはもっと厳格に肉食を禁じているものもあり、教えを守るためにビーガンとしての食生活を営むという人もいます。
最近では、宗教的な理由以外にも、思想や社会運動もビーガンに影響しています。
動物愛護の観点から、殺生や動物からの搾取を嫌うという人もいますし、酪農が環境破壊に繋がるという思想の下、ビーガンを貫いているという人もいます。
ほかにも健康や美容に配慮して動物性の食品を摂らないという人もおり、ビーガンを選択する背景は千差万別です。
それぞれの背景によって動物性のものを排除する程度も異なりますから、あまり固定観念を持たず、柔軟に他者の信仰や思想を理解しようとする姿勢が大切です。
ホテル・旅館が配慮しなければならないこと
では最後に、ホテルや旅館がビーガンの人たちに対して配慮しなければならないことについて考えていきましょう。
ホテルや旅館には、ビーガンの人も、もちろんビーガンではなく肉料理が好きな人も訪れますから、夕食や朝食の料理を完全にビーガン食に変える必要はありません。
しかし、個食や部屋食の場合には、ビーガン専用のメニューを作ったり、アレルギーの有無を尋ねるようにしてビーガンか否かをあらかじめ確認するようにしましょう。
また、ビュッフェ形式で食事を提供する場合には、その料理には動物性のものが含まれているか否かがわかるように表記するなどの配慮を心がけましょう。
まとめ
ビーガンについて解説しました。
これから増々身近なものとなっていくであろうビーガンについて知ることで、理解を深め、ホテルや旅館の経営にも活かしていきましょう。