ここ数年で、消費に対する価値観は目覚ましい変容を遂げています。
消費者が商品に対して求めているものが変化しているのです。
本記事では、新しい消費スタイルのひとつである「イミ」消費について、どのようなものなのか、そしてホテルや旅館にはどのような関わりがあるのかについて解説していきます。
「イミ」消費とは?
「イミ」消費とは、社会や地域に貢献している商品を購入しようとする消費傾向のことです。
「地産地消」という言葉がありますが、これもまさに「イミ」消費と呼ばれるものでしょう。
その地域で採れた野菜や、それを使った食品を購入することで、地域に貢献していることになるのです。
地域貢献だけでなく、社会貢献も「イミ」の対象です。
被災地の農産物や有機農法で生産された食材を購入したり、容器やストローにプラスチックが使われていないものを購入したりして社会に貢献することも「イミ」消費です。
スーパーマーケットなどでプラスチックのかわりに紙でできた袋に入ったお菓子を見かけたことがあるかと思いますが、これも「イミ」消費を意識したパッケージ戦略だと思われます。
飲食店やカフェでは、プラスチックストローが廃止され、紙ストローに切り替えたお店も多いです。
「イミ」消費という言葉は、飲食店の予約やクーポンを扱う企業が編み出したものです。
飲食店は、ホテルや旅館と同じくサービス業や接客業に分類される業種です。
いかにお客様をおもてなしするのかに重きを置いていた接客業やサービス業から「イミ」消費という言葉が生まれるくらい、社会貢献や地域貢献は、消費者のなかで注目度が高いことがらなのです。
「イミ」消費の背景
「イミ」消費という言葉が注目を浴びる背景には、度重なる天災や疫病の流行といった、飲食業や観光業が大きな痛手を受ける出来事が相次いで起こったことが挙げられます。
2011年の東日本大震災では、東北地方の広い範囲がさまざまな被害を受け、農林水産業や観光業も大打撃を受けました。
そこで、国や農業組合が中心となって、東北地方の食品を積極的に食べようという取り組みがなされたことは記憶に新しいと思います。
これが日本における「イミ」消費の先駆けであると言われています。
これ以降、広島の豪雨災害や熊本の地震など、大きな災害が起こるたびに、その土地の食品を食べようという運動が行われてきました。
新型コロナウイルスの感染拡大によって事業閉鎖に追い込まれる飲食店が後を絶たないなか、これらを支援しようと飲食店での消費を活発に行おうとする動きがあったのも、「イミ」消費の一例です。
また、昨今ではSDGsという言葉が非常に意識されるようになりました。
企業や国がSDGsを積極的に推し進めているイメージがありますが、消費する側からもそれを後押ししたいという人が増えているのです。
「イミ」消費に積極的なのはおもにZ世代と呼ばれる人たちです。
生まれたときから経済が落ち込んでいたZ世代は、もともと大量消費に積極的でなく、物を買うことに消極的な傾向にありました。
この消費に慎重な傾向が、「モノ」の価値やブランド力に重きを置く、いわゆる「モノ」消費ではなく、社会や地域への貢献に重きを置く「イミ」消費への関心を高めたのかもしれません。
ホテル・旅館と「イミ」消費
ホテルや旅館の経営では、自然破壊をしてしまうこともままあります。
まず、建物を建てること自体が自然破壊につながってしまうこともありますし、その他にもフードロスや汚水排出など、問題は山積みです。
では、「イミ」消費という消費傾向に対応するための社会や地域への貢献として、ホテルや旅館はどのようなことができるのでしょうか。
地産地消・フェアトレードを意識した食材を使う
地産地消は、先ほども触れたとおり、地元で採れた食材を使用することです。
旅行の目的のひとつに、その土地の名産品を堪能するということも挙げられますから、社会貢献だけでなく地元の食材目当てに宿泊してくださるお客様もいらっしゃるかもしれません。
フェアトレードとは、発展途上国などから食品を輸入する際、適切な労働環境で生産したものを適正価格で購入する取引のことを指します。
不当に安い価格で購入したり、人権を無視した労働環境下で生産された食品は購入しないようにしたりすることで、社会貢献につなげるのです。
備品などに地元の伝統工芸品を使う
ホテルや旅館の調度品や食器などに地元の伝統工芸品を使うことで、地元の産業に貢献するというものです。
伝統工芸品は目で見ても楽しめるものですから、社会貢献だけでなく写真映えもして、お客様に喜ばれることでしょう。
環境に配慮したアメニティを使う
オーガニック製品など、環境に配慮したアメニティを使うことも社会貢献につながります。
また、何でも使い捨てにするのではなく、スリッパなどは次のお客様も利用できるような備品にすると良いかもしれません。
節水・省エネなどを徹底・発信する
節水や省エネをすることによって、環境への負担を減らして社会貢献へつなげることができます。
また、節水や省エネを行うだけでなく、それらの取り組みをお客様に知ってもらうことも忘れないようにしておきましょう。
まとめ
「イミ」消費について解説しました。
ホテルや旅館が社会に対して何ができるのかを今一度考え直すタイミングが来ているのかもしれません。