街中を歩いていると、以前よりも中東の方を見かけるようになったと感じる人も多いのではないでしょうか。
主に中東で広く信仰されているイスラム教は、日本人にはあまり馴染みがないものの、世界ではキリスト教に次いで2番目に信仰している人が多い宗教であるというデータもあります。
最近は技能実習生や観光客の中にもイスラム教圏の人が増え、日本でもイスラム教徒(ムスリム)に対する配慮が必要になってきています。
本記事では、ムスリムの食事に着目し、ハラルフードとは何か、またホテルや旅館はどのようなことに配慮していけば良いのかについて考えていきたいと思います。
ハラルフードとは?
イスラム教の経典である「コーラン」には、信徒の生活にまつわるさまざまな規定が記されており、食事に関してもさまざまな規定がなされています。
さまざまな規定をクリアし、ムスリムの方でも安心して食べることができる食事のことを、ハラルフードと呼んでいます。
あまりイスラム教に造詣が深くはないという人でも、豚肉やアルコールが禁じられているということは聞いたことがあるかと思います。
豚肉以外の動物の肉であっても、決まりに則って屠殺しなければ口にすることができないということになっていますし、料理にアルコールが少しでも入っていると食べることができませんから、料理酒が入っているすき焼きなどは口にすることができません。
このように、あまり宗教的な理由で食事を制限される人がいない日本では、ハラルフードを提供する飲食店が少なく、ムスリムの旅行者や労働者は限られた場所でしか食事を取ることができません。
日本人としても、特に肉の屠殺方法までとなると、どのように配慮していけば良いのかわからないことも多いかと思います。
イスラム教には、決まった時間にメッカに向かって礼拝をしなければならないなど、日本人にはあまり馴染みのない決まりごとがたくさんあります。
これからグローバル化が進めば増々ムスリムの方とも接点が増えてくるかと思いますので、民間レベルでも国レベルでも対策が必要です。
イスラム教の教えと食べ物
「コーラン」で定められている食べ物の規定は、ざっくりと言うと、豚肉とアルコールを避ける、ということで間違ってはいません。
豚肉から出汁を取ったものや、豚や豚肉と一緒に輸送したもの、豚肉を調理した器具と同じもので調理したもの、豚肉に触れた食器に載せられたもの、製造途中でアルコールが発生するものを使用したものも食べることができませんし、消毒にアルコールを使用することも禁じられています。
かといって、鶏肉や牛肉ならば何でも口にしてよいのかと言えば、そうではありません。
「コーラン」では、屠殺の方法についても細かく規定があり、頸動脈を鋭利なもので刺して即死させ、血を抜くなど、イスラム教の教えに則って屠殺された肉のみ食べることができます。
血を嫌う傾向にあるので、生き血を使用した食べ物も厳禁です。
宗派によってはうろこの無い魚介類も禁じられていたり、血の色が見える肉の断面を嫌う人もいたりします。
なぜここまで厳しい規定がなされているのか、と理由が気になるところですが、実はその答えは「コーラン」の中には書かれていません。
イスラム教の元となったユダヤ教の経典の中に答えがあるのではないかと主張する人もいます。
また、豚という動物の特徴に原因があるのではないかという見方もあります。
豚は感染症を起こしやすく、また汗腺がないために体温調節が難しいことから、身体に泥をこすりつける習性があるために、不潔であるとみなされることが多いということです。
さらに雑食の動物ですので、飼育するためには草以外にも人間の食べ物を分けてやる必要があり、牧草のみで飼育することができるほかの動物と比較すると、飢饉の際には疎まれた可能性があります。
これらはあくまで憶測ですし、多くのムスリムの方はあまり疑問を持つこともなく、忠実に教えを守っているようです。
ホテルや旅館が配慮しなければならないこと
さいごに、ホテルや旅館が配慮しなければならないことについて解説していこうと思います。
イスラム教の規則に則った食品である印のひとつに、「ハラール認証」というものがあります。
この認証マークが付いた食品は、ハラルフードであることが認められており、認証を取得してメニュー表などに記載するとわかりやすいです。
メニュー表に、豚肉やアルコールが含まれているか否かを明記することも必要です。
また、ほかのお客様と食器を分けなければなりません。
まとめ
ハラルフードについて解説しました。
中東からの観光客は年々増えており、ホテルや旅館でもさらに対策が必要になって来るかと思います。
お互いの文化に配慮しつつ、どのような対策が必要なのかをしっかりと理解していかなければなりません。