農業、畜産、漁業など、自然に恵まれ、近代以降さまざまな産業が発達してきた北海道には、おいしいものがたくさんあります。
広大で肥沃な土地を持つ北海道では、地域ごとにさまざまな食文化があり、バラエティ豊かな食事を堪能することができます。
地域の自然や文化を知れば、地元のグルメもよりおいしくいただけるもの。
本記事では、道央、道北、道南、道東の4つの地域にわけて、北海道の食文化を見ていきたいと思います。
ジンギスカンは地域によって食べ方が異なる⁈
さて、北海道グルメと言えばジンギスカンを思い浮かべるという方も多いのではないでしょうか。
ジンギスカンは、もともとはモンゴルのシュウパウロウや中国のコンヤンロウという料理を日本人が食べやすいようにアレンジしたものであると言われており、北海道の全域で食べることができます。
厳密な定義はありませんが、羊の肉を鍋で焼き、独特な形をした鍋の縁に野菜を置くことで肉のうまみと共に野菜を堪能するという食べ方が一般的です。
一家に一台ジンギスカン鍋があると言われているほど北海道民のソウルフードと言っても過言ではないジンギスカンですが、同じ北海道の中でも地域によって食べ方が異なるというのはご存知でしょうか。
ジンギスカンには、軍服に羊毛を使用することから羊を国内でも飼育することになり、羊の肉を食用にすることとなったという経緯がありますが、北海道内でジンギスカンが発祥したのは種羊場(羊の研究や飼育を行うところ)があった内陸部です。
その内陸部ではあらかじめタレに羊の肉を漬け込んでおく「味付けジンギスカン」が主流ですが、のちに広まった沿岸部や都市部では、肉を焼いてからタレをつけて食べる「後付けジンギスカン」が主流であるようです。
道央地域の食文化
この項からは、地域ごとに北海道の食文化について見ていこうと思います。
まずは、石狩平野を中心に稲作地帯が形成されている道央地域について見ていきましょう。
道央地域の主な地名としては、美唄(びばい)、札幌、石狩、千歳、小樽、登別などが挙げられます。
道央地域では特に「赤飯」が有名で、通常はもち米と共に小豆を炊くところを、道央地域では甘納豆を炊いており、食紅で色を付けて紅ショウガなどが添えられることもあります。
札幌で誕生した甘納豆の赤飯は、やがて北海道全域に広がり、ほのかに甘い味は子どもたちにも人気なようです。
道央地域では、海の幸をふんだんに使った石狩鍋のほかにも、芋もち、美唄のとりめし、鮭のチャンチャン焼きなど、素朴で素材の味を感じることができる家庭料理も人気です。
道北地域の食文化
続いては、日本海とオホーツク海に挟まれた道北地域です。
道北地域の主な地名としては、美瑛、宗谷、稚内、旭川、富良野、留萌(るもい)などが挙げられます。
ニシン漁で栄えた留萌では、古くから本州とも交易があり、内臓などを取り除いて干した「見抜きニシン」は、日本海を通って現在の福井県のあたりに卸され、京都府では「にしんそば」として親しまれています。
ニシンを使った料理としては、鮭やニシンを野菜と一緒に煮込んだ三平汁が有名です。
道北地域では、ほかにも毛ガニが獲れることでも知られ、ぶつ切りのカニが入った「鉄砲汁」と呼ばれる味噌汁があります。
道南地域の食文化
次は、かつて松前藩が存在し、北海道唯一の城下町があった道南地域について見ていきましょう。
道南地域の主な地名としては、松前、函館、厚沢部、江差、大沼などが挙げられます。
比較的本州に近く、開国の際に外国に開かれたことから西洋文明も早くから入ってきていた道南地域では、交易で栄えたのももちろんですが、南北に伸びた積雪の少ない土地は、農業にも向いており、さまざまな農作物が育てられています。
松前と言えばイカと昆布を醤油で漬け込んだ松前漬けが有名ですね。
ほかにも、イカにご飯を詰め込んだ「いかめし」も人気です。
道東地域の食文化
さいごに、道東地域の食文化について見ていきましょう。
道東地域の主な地名としては、知床、帯広、幕別、釧路、根室、網走、紋別、北見などが挙げられます。
十勝平野を中心に畜産業が盛んな道東地域では、豚や鳥などを使った郷土料理が有名です。
甘辛いタレが食欲をそそる豚丼は老若男女問わず人気を博しています。
中国のから揚げである「炸鶏(ザーギー)」に運が付くようにと「ン」を付けたザンギも食べ応えがあってとても美味しいです。
地域ごとに異なる特徴を持つ自然が育んだバラエティ豊かな食文化
北海道は、国土の約22パーセントを占める広大で肥沃な土地に恵まれ、地域によって異なるさまざまな食文化が発展してきました。
ジンギスカンひとつとっても地域性が出るように、北海道にはバラエティ豊かなグルメがそろっています。
食文化の背景にある自然や文化を知ることで、旅先の食事ももっとおいしくなるはずです。