西側は日本海に面し、東側は1000メートル級の山々に囲まれた福井県。
「越山若水(えつざんじゃくすい)」の別名のとおり、山々の自然と清らかな水に恵まれた土地です。
恐竜の化石が多く発掘されていることでも有名で、「恐竜王国」の異名を持ち、勝山市には全国の恐竜ファンが集まります。
新鮮な海の幸や独特なご当地グルメが揃う福井県に訪れた際には、ぜひ美味しいものをたくさん味わいたいですね。
本記事では、福井県の食文化やご当地グルメをご紹介していきたいと思います。
海の幸・山の幸と清らかな水に恵まれた土地
四季の移り変わりがはっきりとしており、比較的日照時間の長い福井県。
霊峰・白山から流れる支流、九頭竜川や足羽川、さらには地下水や湧き水にも恵まれており、豊かで清らかな水が、稲作や酒造りを支えてきました。
日本海に面した漁港では越前ガニや甘エビなどの水揚げが有名で、暖流の魚と北方の魚の両方が獲れます。
北前船の寄港地であったため、昆布やニシンももたらされ、それらを用いた食文化も発展しました。
また、福井県はもともと「若狭国」と「越前国」に分かれていたことや、地理的・気候的条件などから南北で大きく食文化が異なります。
ここでは福井県を、木ノ芽峠を境に「嶺北」と「嶺南」に分けて食文化をご紹介していきたいと思います。
嶺北精進料理の食文化
まずは、嶺北の食文化の中でも精進料理にまつわるものをクローズアップして取り上げたいと思います。
仏教信仰が広く深く根付いている嶺北には「永平寺」をはじめとする寺院が多く、なかでも浄土真宗が古くから民衆に篤く信仰されてきました。
親鸞聖人の命日に行われる「ほんこさん」と呼ばれる縁日があり、かつては近所で「お齋(おとき)」という精進料理を用意して読経のあとに食べていたようです。
現在ではそのような文化はほとんど廃れてしまいましたが、「厚揚げの煮たの」や「すこ」といった「ほんこさん」の定番メニューは今も郷土料理として残っています。
ちなみに福井県で言う「油揚げ」は一般には「厚揚げ」と呼ばれるもので、その厚さは4センチもあるのだとか。
メーカーごとに味も異なり、こだわりを持っているご家庭も少なくないそうです。
嶺北の食文化
雪深い嶺北では精進料理以外にも、越冬のための保存食の文化が発達しています。
漬物、うち豆(大豆をつぶして乾燥させたもの)、魚の粕漬など、さまざまな保存食がありますが、なかでも秋に収穫される里芋をみたらし団子のような甘辛いたれで煮た「里芋のころ煮」は定番料理で、古くから冬に親しまれてきた郷土料理です。
ほかにも、すりつぶした大豆を味噌汁に入れた「呉汁」や独特の風味が特徴の「とち餅」など、素朴な伝統料理が食べられてきました。
また、嶺北では「半夏生(はんげしょう)の鯖」と言って、夏至から数えて11日目にあたる半夏生の日にサバの丸焼きを食べる風習があります。
嶺南の食文化
古くから関西との交易が盛んであった嶺南では、言葉にも関西のものが混じるなど、上方文化の影響を深く受けています。
天皇や神に捧げる「御贅(みにえ)」を供給する「御食国(みけつくに)」としての役割を担い、特にサバや甘鯛は「鯖街道」を通じて都へ送られました。
「鯖街道」沿いでは「王の舞」や「地蔵盆」といった京の民衆行事も根付いており、食文化で言うと砂糖を使う文化が関西に非常によく似ています。
サバや鯛はもちろん地元でも食べられており、「小鯛のささ漬け」はお土産としても人気です。
山間部の厳しい冬を越すための保存食「へしこ」は福井名物。
全国的にはサバを使うイメージが浸透していますが、嶺北ではイワシを使うことが多かったようで、「こんか漬け」とも呼ばれることもあるそうです。
夏の味覚「丸焼き鯖」は生姜醤油と魚の脂がとてもよく合います。
福井県のご当地グルメ
さいごに、福井県のご当地グルメをご紹介したいと思います。
越前おろしそば
大根おろしが載せられた「越前おろしそば」は、福井県の各地で食べることができます。
昭和天皇が武生市で食べた大根おろし入りの蕎麦を「越前のそば」として気に入ったのが始まりであると言われ、そのあと大根おろしを載せるようになったそうです。
ぶっかけスタイルのものも、つけ汁スタイルのものもあります。
丁稚ようかん
上方に丁稚奉公で出ていた者が福井に里帰りした際に持ち込まれたと言われている丁稚ようかん。
通常のようかんよりも甘さ控えめなのが特徴で、つるんとした食感が特徴です。
若狭くじ・若狭フグ
若狭湾で獲れる甘鯛は京都では特に「若狭くじ」と呼ばれ、高級食材でした。
また、若狭湾ではトラフグの養殖も盛ん。
福井県には甘鯛やフグを使った料理を出すお店が多くあります。
若狭たかはま鮨
奈良時代にちらし寿司を平城京に献上したという記録が残る寿司発祥の土地・福井県。
現在でもお祝い事や冠婚葬祭でちらし寿司が振る舞われることが多く、飲食店や旅館でも提供されていることがあります。
価格にも内容にもさまざまなバリエーションがあるので、お店を選んで食べに行くことができます。