ホテル経営者なら、「レベニューマネジメント」という言葉を1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
レベニューマネジメントを活用し、経営状態の改善に取り組む宿泊施設は増えていますが、「ホテルの経営に、なぜここまで普及しているのだろうか」と疑問を感じるかもしれません。
そこで本記事では、レベニューマネジメントの概要やホテル経営との関係について、分かりやすく解説します。
レベニューマネジメントとは
レベニューマネジメントとは簡単にいうと、「需要予測をベースに料金を変動させるマネジメント手法」のことです。
その由来は、イギリスの国営航空会社が実施した「アーリーバードディスカウント」(早期割引料金)といわれています。同社では、早期割引料金の実施により空席在庫の軽減につなげたということです。
需要に合わせて価格を調整するレベニューマネジメントは、他の業界からも注目を集めるようになりました。
現在では、空室を減らしたい宿泊業界や、入場券をできるだけ多く販売したいテーマパーク業界など航空業界以外の業界にも幅広く利用されています。
レベニューマネジメントの特徴
レベニューマネジメントの主な特徴について、以下にご紹介します。
需要予測をベースに料金を変動させるマネジメント手法
レベニューマネジメントは需要を予測し、それをもとに価格を調整します。
需要が供給を上回る場合は、販売価格を上げ、反対に需要が供給を下回る場合は、販売価格を下げます。
これが、「需要予測をベースに料金を変動させる」ということです。
この考え方はレベニューマネジメント特有のものであり、航空業界やホテル業界などで広く利用されるようになった理由といえるでしょう。
利益の拡大を目指したマネジメント手法
レベニューマネジメントは、需要に合わせて価格を変え一定数の需要を確保しようとします。
その目的は、利益を拡大すること。
例えば、1室の料金が1万円の客室を20室持っていたとします。
各部屋を通常料金の1万円で全室販売すると、1日の売上の最大値は20万円です。
一方レベニューマネジメントでは、20室を販売する場合、以下のように価格を設定します。
・10,000円×7室=70,000円
・15,000円×10室=150,000円
つまり売上は244,000円で、 全室を通常料金の1万円で販売するよりも44,000円高くなります。
これは、全室埋まった時を仮定しているため、計算通りにはならない可能性はありますが、レベニューマネジメントを活用すれば、通常よりも収益の最大が見込めることがお分かりいただけると思います。
このように、レベニューマネジメントは需要予測をベースに販売を制限し、利益の拡大を目指したマネジメント手法なのです。
あらゆる宿泊施設に対応できるマネジメント手法
これまでホテルの価格設定でいうと、平日は客室単価を下げ、客室が埋まりやすい休前日は単価を上げることが一般的でした。
レベニューマネジメントは、イベントといった外的要因も分析に含めます。
さらに、利用者の属性や予約状況などを分析し、詳細を照らし合わせながら「どのくらい需要が期待できるか」「どのくらい価格を抑えるべきか」といったことを検討しながら、最終的に適正価格を決定します。
外的要因が予約状況に影響するのは、ホテルだけではなく、旅館や民宿も同じです。
つまり、レベニューマネジメントの手法は、宿泊施設を選ばずに応用できるマネジメント方法であるということです。
レベニューマネジメントがホテル業界に普及している理由
レベニューマネジメントがホテル業界に定着したのは、「客室を販売する」というビジネスモデルの特徴に適したマネジメント手法であるからといえます。
ホテル業界には、
・需要は季節やイベントによって左右される
という特徴があります。
レベニューマネジメントには、その時の需要を予測し、それに合わせて販売価格を調整します。
この「需要予測に合わせて価格を調整する」という点が、ホテル業界のビジネスモデルにぴったりとあてはまるのです。
利益を可能な限り確保する手段として活用できることが、レベニューマネジメントがホテル業界に普及した大きな理由と言えるでしょう。
レベニューマネジメントの手順は2ステップ
レベニューマネジメントを実践する手順は、以下の2ステップです。
ステップ2:価格を調整する
レベニューマネジメントでは最初に、客層をグループ分けし、これまで蓄積したデータやイベント、シーズン、予約状況などさまざまな情報を分析して需要予測を立てます。
予測を立てたら、その需要に合わせて販売価格を調整します。
価格の調整方法はいくつかありますが、例えば需要が供給を上回る場合は、高い料金を支払うことに抵抗のないお客様(リピーターなど)を優先して販売し、利益の拡大を目指す方法が挙げられます。
反対に、需要が供給よりも低いと予測した場合は販売価格を下げて、できるだけ空室が出ないように販売します。
需要予測の精度は、仮説と検証を繰り返すことによって上がっていきます。
正確性の基準は各宿泊施設によって異なりますが、「先月末に立てた予測」が「今月の結果」に対して3%以内であることを目安とするとよいでしょう。
まとめ
レベニューマネジメントの概要について説明しました。
需要予測から販売価格を調整するレベニューマネジメントは、ホテルをはじめ宿泊業界に適した販売管理の手法です。今後ますますホテル業界に普及することが予想されます。
レベニューマネジメントを活用して、利益の拡大を目指しましょう。
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