福島県は、東北地方の中で唯一関東地方と接し、また奥羽山脈に連なる山々、日本海と太平洋の両方の海、阿武隈川や猪苗代湖などの河川や湖沼といった豊かな自然に囲まれた場所です。
尾瀬国立公園や日光国立公園といった、雄大な自然に触れることができる場所も数多く保有しています。
恵まれた自然環境を持つ福島県では、農業、林業、水産業がそれぞれバランスよく発達しており、それらを背景とした豊かな食文化を育んできました。
特にくだものの生産は全国的に見ても盛んであり、お土産や贈答品としても多くの人に選ばれています。
本記事では、自然の豊かさに裏打ちされた福島県の食文化やご当地グルメについて、「中通りエリア」、「会津エリア」、「浜通りエリア」の3つに分けて紹介していきたいと思います。
福島県の食文化を育んだ自然
自然環境に恵まれた福島県では、「ふくしまイレブン」をはじめとした稲作、キュウリ、さやいんげん、こんにゃく芋、アスパラガス、トマトといった野菜、桃、日本梨、りんごなどのくだもの、福島牛、川俣シャモ、会津地鶏などの畜産物、ヒラメ、タコ、サンマ、カツオといった水産物など、実にバランスよく農林水産業が発達していることで知られています。
また、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、山形県、宮城県の6つもの県と接していることから、さまざまな土地から影響を受けて幅広いジャンルの食文化を作り上げてきました。
福島県は自然に恵まれ農林水産業も盛んですが、同時に昔から雪や寒さにも悩まされてきました。
「凍み餅」、「凍み豆腐」など、北西から強く吹く季節風である「吾妻おろし」をうまく活用して凍らし、乾燥させた保存食である「凍み」の文化が根付いています。
豊かな自然と冬の厳しい雪や寒さが生み出した福島県の多種多様な食文化は現代にも残っていて、旅行に訪れた際にはぜひ存分に味わっておきたいものです。
中通りエリア
まずは太平洋に面し、比較的温暖な気候の浜通りエリアから。
梅雨と秋に降水量が多く、ほかのエリアと比較すると積雪量が少ないのも特徴です。
福島県の沿岸部では「ほっき貝」がよく獲れ、甘くて大きく、柔らかな食感の「ほっき貝」をふんだんに使用した「ほっきめし」はご飯が貝のうまみをたっぷりと吸収した一品。
するめいかとにんじんを細切りにし、醤油やみりんで甘辛く炊いた「いかにんじん」は、ご飯のお供として県内で広く愛されています。
「いわき七浜」と呼ばれる浜では年中魚が獲れ、なかでも秋に獲れるサンマを使った「さんまのボーボー焼き」は、ハンバーグのような形状の家庭料理です。
カジキも水揚げされるため、カジキ料理がいただけるお店もあります。
会津エリア
続いては積雪量も多く、寒さが一段と厳しい会津エリア。
夏の山間部は涼しくなるものの、山に囲まれた盆地では蒸し暑くなります。
中通りエリアの伝統的な汁物・「ざくざく」と比較されることもある会津の伝統料理「こづゆ」は、地元の伝統工芸品である「会津塗」の「手塩皿」に、貝柱ベースの出汁で煮込んだきくらげ、わらび、里芋などを盛り付けた汁もの。
昔は「一の重」「二の重」または「一の露」「二の露」と、2つのお椀に分けて出されていたようですが、戦後しばらく経ってからは1つのお椀で「こづゆ」として提供する今のスタイルが確立されました。
また、江戸時代は鮮魚が獲れなかった会津では、北海道で水揚げされたにしんを塩漬けにした「みがきにしん」がたんぱく源として食べられていました。
「見抜きにしん」に山椒の葉をかぶせ、醤油、酢、酒などで味付けした「にしんの山椒漬け」は、「にしん鉢」という専用の器があるほど地元で愛されています。
健康に良いということで最近注目を集め始めたえごまは、福島県では「じゅうねん」と呼ばれ、昔から親しまれてきた食材でした。
「じゅうねん」をすりつぶし、味噌、砂糖、酒、みりんなどで味付けしたタレをすりつぶしたご飯に塗って焼いた「しんごろう」は、素朴でやさしい味わいです。
会津を象徴する会津磐梯山を模したご飯のかたちをした「磐梯山ジオパークカレー」やボリューミーな「ソースカツ丼」もぜひいただいてみたいものです。
浜通りエリア
さいごは、夏は暑く、冬は寒く積雪が多い、四季がはっきりとした浜通りエリア。
鯉の養殖が盛んな郡山市では、「鯉のあらい」や「鯉の甘露煮」など、新鮮な鯉を用いた郷土料理が昔から食べられてきました。
賽の目状に切った野菜や鶏肉を、煮干しの出汁で煮た、二本松の「ざくざく」は、同じ福島県の中でも会津エリアに伝わる「こづゆ」と比較されることの多い汁物。
冠婚葬祭やお祝い事などの時に食べられることが多いそうです。
伝統料理以外にも、ふっくらとした餃子を円盤状に焼いた「円盤餃子(福島餃子)」や、地元の食材をふんだんに使った「安達太良(あだたら)カレー」なども人気のご当地グルメです。
まとめ
福島県は、その豊かな自然を活かした美味しいものがたくさんあります。
また、「くだもの大国」と呼ばれるほどフルーツの生産が盛んなことでも知られているので、お土産に迷った際には、郷土料理だけでなく、季節のフルーツを選ぶのも良いかもしれませんね。