箱根と熱海という日本で屈指の温泉街に挟まれながらも、長年にわたって人々から愛され続けている湯河原温泉。
その歴史は古く、万葉集にも詠まれていることで知られています。
また、湯河原には温泉以外にも美しい自然を満喫できる観光スポットがたくさん。
本記事では、湯河原の歴史と定番観光スポットをご紹介していきたいと思います。
万葉の人々と湯河原
「あしがりの 土肥の河内に 出づる湯の 世にもたよらに 子ろが言はなくに」
この歌は、「万葉集」の相模国の歌のひとつです。
「万葉集」にある温泉に関する歌は実はこれだけで、湯河原は唯一「万葉集」に詠まれた温泉であると言えます。
温泉が湧き出る様子を思い、人が自分を思ってくれる気持ちの強さにたとえた朴訥さは、まさに万葉のおおらかさを体現しているようですね。
万葉の人々にも愛された湯河原温泉は、今日も多くの人々の疲れを癒しています。
「万葉公園」の入り口付近に歌碑がありますので、興味のある方はぜひ見に行ってみてください。
源頼朝と湯河原の武将
湯河原はもちろん温泉のまちですが、この項では少し趣向を変えてゆかりの深い武士のお話をしたいと思います。
時は平安時代末期。
源頼朝は打倒兵士のために石橋山で蜂起しますが、十倍の兵力差を前に敢え無く敗れてしまいます。
逃げ延びた頼朝を受け入れたのが、当時湯河原の地を治めていた武将・土肥実平です。
実平の助けを借りて頼朝は房総で再起し、無事平氏を滅ぼして鎌倉幕府を立ち上げます。
武士の世の始まりの陰には、湯河原の武将の力があったのです。
実平は源平の双方から高い評価を受けていた武将で、のちに鎌倉幕府から瀬戸内海を任されるほどになります。
現在でも湯河原では「実平踊り」を起源とする「やっさ祭り」が行われており、実平は今も地元の人々の間で愛されているのです。
「五所神社」は実平が戦勝祈願をしたと伝わる神社。
湯河原に訪れた際はぜひ参詣してください。
文化人と湯河原
江戸時代にも温泉地として高い評価を受けていた湯河原ですが、その人気が高まるのは明治時代に入ってから。
SLが走るようになると、湯河原は温泉地としての立場を確固たるものにしていきます。
そんな湯河原に療養にやってきたのが、日本画家の竹内栖鳳です。
「東の大観、西の栖鳳」と言われた巨匠で、第一回文化勲章を受章した人物で並び称された横山大観も湯河原には度々訪れたといいます。
画家だけでなく、夏目漱石、国木田独歩、芥川龍之介など、名だたる文豪が湯河原の地で執筆活動をしていました。
湯河原は庶民だけでなく、多くの文化人からも愛された名湯なのです。
湯河原の定番観光スポット
この項では、温泉に留まらない湯河原の魅力的な観光スポットをご紹介していきたいと思います。
万葉公園
ご紹介した万葉集の歌碑がある「万葉公園」。
公園内にある縄文文化を取り入れた茶室は必見。
カフェやコワーキングスペースも充実しており、豊かな緑に囲まれながらのワーケーションにも最適な場所です。
熊野神社
万葉公園の中にあり、手水舎が温泉の源泉だという何とも温泉地らしい神社・「熊野神社」。
湯と健康を司る「湯権現」が祀られており、ひっそりとした静かな佇まいに趣があります。
御所神社
土肥実平とゆかりの深い「五所神社」。
境内にある「明神の楠」は樹齢850年とも言われ、ボケ防止や長寿にご利益があるのだとか。
各所に祀られている七福神を巡るのも楽しみのひとつです。
不動滝
その力強さから不動明王の名前を冠した「不動滝」。
四季折々の自然が美しく、滝を望むお茶屋さんでは昔ながらの和スイーツを楽しむことができます。
湯河原梅林
幕山の斜面に梅の花が咲き誇る「湯河原梅林」。
梅のシーズンには一般公開され、各種イベントが執り行われます。
幕山公園
アスレチックやバーベキューが楽しめる「幕山公園」は、子どもから大人まで幅広い層に人気のアウトドアスポット。
ゆったりとハイキングを楽しむこともできます。
星ヶ山公園 さつきの郷
相模湾と花々のコントラストが美しい「星ヶ山公園 さつきの郷」。
自由に散策することができ、SNS映えする写真を撮ることができます。
湯河原駅前広場
JR湯河原駅は、「足湯」ならぬ「手湯」が体験できます。
新国立競技場を設計した隈研吾氏による駅の建物も注目ポイントです。
美しい景観と温泉で日ごろの疲れを癒す旅へ
相模湾に面し、美しい自然に恵まれた湯河原温泉。
万葉集のなかで唯一温泉が詠まれた地であり、江戸時代には幕府に薬湯を献上するほどの名湯として広く認識されていました。
都心からのアクセスも良いので日帰り温泉を楽しむ場としても人気です。
熱海や箱根といった大きな温泉地に挟まれた立地でありながら、それらにはない独自の魅力で人々を魅了し続けています。
皆さんも、日ごろの疲れを癒しに湯河原温泉へ訪れてみませんか。