徳川幕府が拠点を置き、明治時代以降は皇居として利用されている江戸城。
自由に出入りすることはできませんが、事前に手続きをすれば中を見学することができます。
江戸城は、ただ日本の中心であったというだけでなく、さまざまな人々が関わって作った実に堅牢な城で、その足跡や防御の工夫をいたるところで見ることができます。
本記事では、江戸城の歴史や見どころについてご紹介していきたいと思います。
戦国時代・安土桃山時代までの江戸城
「江戸」という地名が歴史書に登場するのは、意外にも鎌倉時代に入ってから。
江戸城が築城されたのは15世紀の半ばごろのことで、扇谷上杉氏の家老・太田道灌(おおたどうかん)によって築城されました。
道灌はその有能さゆえに主家に暗殺されてしまい、嫡男・資康も城を追われてしまいますが、20年かけてやっと江戸城に戻ることができたそうです。
今は野鳥が集まる場所としても知られる「天神濠」は、道灌の菅原道真(天神)好きが由来であるといわれており、現在もその一部が残されています。
16世紀に入り、北条氏が関東一円を支配するようになると、江戸城にはその家臣である遠山氏が入城。
以降、豊臣秀吉による「小田原攻め」によって北条氏が滅ぼされるまで、江戸の地は北条氏の手中に収められていました。
ここまで、江戸は全国的には全くの無名の地であったといっても過言ではありません。
江戸のまちを大規模に作り変えたのは、天正18年(1590年)に秀吉の命によって関東に飛ばされた徳川家康でした。
徳川家康と江戸城
徳川家康は三河や遠江を拠点とし、秀吉にとって脅威となるくらいの大きな勢力を持っていましたが、北条氏を滅亡させ名実ともに天下人となった秀吉に表立って逆らうわけにもいかず、関東へおとなしく引き下がり、水運の拠点である江戸を中心に据えることとしました。
道灌の時代には寺社などの建立もあって活気づいた江戸も、その後100年以上放置されたことによって荒廃し、当時は一面にすすき野が広がるような状態であったと考えられています。
家康は、本丸、二ノ丸に加え、西ノ丸、三ノ丸、吹上、北ノ丸を増築し、さらに周辺の堀や河川も大胆に整備して現在の江戸城の城郭を作り上げました。
江戸幕府を開くと、諸藩に命じてさらに大規模な工事を進め、慶長12年(1607年)、現在の富士見櫓あたりに「慶長天守」と呼ばれる家康時代の天守が完成します。
その後、大坂の陣で普請は一時中断されますが、家康は50年もの年月をかけて幕府の中枢にふさわしい荘厳で堅牢な城を完成させました。
秀忠、家光と代替わりするごとに「元和天守」、「寛永天守」と天守が再建され、秀忠の時代から現在の天守台のあたりに作られるようになったそうです。
火事と江戸城
「火事と喧嘩は江戸の華」と言われるとおり、江戸のまちはたびたび火災に悩まされてきました。
特に、明暦3年(1657年)の「明暦の大火(振袖火事)」は江戸の大部分を火の海にし、江戸城の天守も焼け落ちてしまいます。
火元は諸説ありますが、とにかく被害規模の大きい火事で、これ以降江戸は防火を意識したまちづくりを行いました。
明暦の大火後、財政悪化もあって江戸城の天守が再建されることはなく、天守台のみが今も残されています。
その後しばらくは江戸城に火の手が上がることはありませんでしたが、幕末期には放火と思われる火事が場内で多発。
ちなみに、江戸城まで火の手が回ることはありませんでしたが、「明和の大火」、「文化の大火」と、城下は「明暦の大火」のあとも何度も大小の火事に見舞われています。
戊辰戦争と江戸城
慶応4年(1868年)、京都での「鳥羽・伏見の戦い」で火ぶたが切って落とされた戊辰戦争は、やがて江戸の方に戦場が移されます。
新政府軍は慶応4年(1868年)3月15日を江戸城総攻撃の日と定め、多くの血が流れることが要されましたが、西郷隆盛と勝海舟の尽力もあって江戸城は無血開城。
江戸幕府は事実上の終焉を迎えます。
明治元年(1868年)4月11日に江戸城は新政府軍の手に渡り、翌年の東京奠都を経て、江戸城は皇居となりました。
関東大震災や東京大空襲などで江戸時代の建物の多くが焼失してしまいますが、今も徳川時代の遺構が残っている部分もあります。
江戸城の見どころ
江戸期の江戸城の縄張りを行ったのは、築城の名手・藤堂高虎。
「の」の字を書くように張り巡らされた堀が鉄壁の防御を実現しています。
江戸城で実際に合戦が行われたことはありませんが、長期の籠城にも耐え得ることでしょう。
江戸城の往時の姿を体感するには、まずは「皇居東御苑」がおすすめ。
江戸時代の建物が比較的多く残っており、天守台や百人番所、忠臣蔵にも登場する松之大廊下跡などを見学することができます。
桜田門外の変の舞台となった桜田門など、江戸城の足跡を肌で感じられる場所や遺構がたくさん残っている定番の観光スポットです。
事前に手続きをすれば、伏見櫓や富士見櫓などを見学することができ、より深く江戸城に触れることができます。
東京旅行の際には、ぜひ江戸城を見学してみてください。