日本海に面し、残りの三方を山に囲まれた富山県。
3000メートル級の山々と水深1000メートルの富山湾から成るダイナミックな地形が特徴です。
「天然のいけす」とも呼ばれる富山湾からは豊富な海の幸が獲れ、山々から海にそそぐ川の流域にある平野部では農業が盛ん。
海の幸にも山の幸にも恵まれた富山県には、さまざまな美味しいものがあります。
本記事では、富山県の食文化や郷土料理をご紹介していきたいと思います。
豊富な水源と雄大な自然が育む農産物
典型的な日本海沿岸気候を持つ富山県では、降雨量・降水量ともに非常に多く、それらが県の総面積の2/3を占める森林地帯でろ過されて豊富な水源を生み出しています。
県内には黒部ダムで有名な黒部川をはじめとする7つの清らかな河川が流れており、その良質な水が農業、特に稲作を支えています。
米づくりが盛んな富山県では、お米を用いた郷土料理が数多く伝わっており、行事ごとやお祭り、祝いごとなどの際には餅菓子が出されることが多いです。
富山県の代表的な郷土料理である「ます寿司」や「おせ寿司」は、駅弁などのかたちで手軽に食べることもできます。
地元のお米を使った地酒も楽しみたいですね。
梅、梨、ブドウなど、くだものの生産も盛んです。
餅の食文化
先ほども触れたとおり、稲作が盛んでお餅を食べることが多い富山県。
この項では、富山県の餅の食文化について掘り下げていきたいと思います。
臨月の際に近所へ配る「ころころ餅」、産後3日目の母親が食べる「三日の団子汁」、結婚した年に花嫁の実家が送る「針歳暮」、弔事や法事の際に食べる「黒豆おこわ」など、富山県民の人生の節目節目にはお餅を使った郷土料理が登場します。
長野県などと共通して、「五平餅」も県民から愛され、お土産としても定番のおやつです。
また、富山県ではお雑煮のバリエーションが非常に豊富。
角餅と醤油ベースの味付けを基本として、地域や家庭によって具の種類や量が実にさまざま。
東部では魚介類や根菜がたくさん入った豪華なものが、西部では比較的シンプルなものが多いですが、その土地の特産品などが入ったお雑煮もあるようです。
あまり旅行先で年中行事の料理やお雑煮を食べることはないかもしれませんが、知っておくと旅行がさらに楽しみになりますね。
富山湾の食文化
氷見漁港、新湊漁港、岩瀬漁港、滑川漁港、黒部漁港と、いくつもの漁港が点在する富山湾。
富山県では新鮮な魚介類が手軽に楽しめます。
コリコリとした食感と磯の香りが特徴の「バイ貝」は、富山県民のハレの日には欠かせないものです。
特に滑川漁港では春の訪れを感じさせるホタルイカがよく獲れ、「ホタルイカの酢味噌和え」は各家庭でも広く食べられています。
夏が旬のシロエビは出汁や寿司、刺身などはもちろん、かき揚げにしても絶品。
秋に獲れる肉厚な紅ズワイガニは、カニ味噌もおいしいと評判です。
冬の寒ブリは古くから食べられており、正月には「ぶり大根」がよく食べられてきました。
江戸時代ごろには内陸の長野県あたりまで寒ブリが運ばれていたことから、「ぶり街道」とも呼ばれていました。
また、北前船を通して昆布がよく広まった地域でもあり、「昆布締め」、「昆布巻き」、「昆布巻きかまぼこ」など、富山県は「昆布大国」と呼ばれるほど現在でも昆布料理が良く食べられています。
まだ海苔が貴重であった時代にはおにぎりにとろろ昆布を巻いていたそうで、現在でも「とろろ昆布おにぎり」は県民から広く愛されているご当地グルメ。
コンビニエンスストアなどでも手軽に購入することができますので、ぜひ食べてみてください。
山間の食文化
一方、庄川沿いの山間部では岐阜県との県境にある五箇山の「合掌造り」に代表されるように、のどかな日本の原風景が広がっている地域です。
浄土真宗の信仰が盛んな富山県では、親鸞聖人の命日(11月28日)に「報恩講料理」というものが振る舞われます。
野菜や山菜を中心とした山の幸がふんだんに使われており、素朴でありながら豊かな味わいの料理が並びます。
堅豆腐を使った「五箇山豆腐の煮付け」や、小豆と根菜を炊いた「いとこ煮」がその代表です。
寒い山間部ということもあって、「かぶら寿司」などの発酵食品も古くから食べられてきました。
醤油、みりん、砂糖などを入れた寒天を煮込んで卵を加えた「ゆべし(べっこう)」も、おかずやおやつとしてよく食べられています。
まとめ
富山県の食文化や郷土料理についてご紹介しました。
海の幸や山の幸に恵まれ、稲作をはじめとした農業も盛んな富山県には、さまざまな個性的な郷土料理があります。
穏やかな富山湾で育まれた新鮮な魚介類、特にカニ料理は魅力的です。
ダイナミックな自然を糧に、積雪量の多い厳しい冬を乗り切る人々の工夫も、食文化に如実に現れています。
富山県に訪れる際には、ぜひバリエーション豊富で魅力的な郷土料理を食べてみてください。