盛岡の自然と歴史が育んだ伝統工芸品―南部鉄器

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盛岡の自然と歴史が育んだ伝統工芸品 南部鉄器

岩手県の伝統工芸品と言えば、南部鉄器を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
錆びにくく長持ちし、熱伝導が均一で保温性も高い南部鉄器は、主に茶の湯の世界を通じて広く日本全国に浸透していきました。

南部鉄器と言えば鉄瓶のイメージが強いかもしれませんが、最近では、鍋、風鈴、アクセサリーなど、お土産として気軽に購入できるような商品も増えています。

本記事では、そんな南部鉄器の歴史と魅力に迫っていきたいと思います。

南部鉄器とは?

南部鉄器とは、岩手県の盛岡や奥州水沢などで作られている金物の伝統工芸品のことです。
江戸時代中期に南部藩で誕生したことからその名が付いたと言われています。

ぼこぼこと突起が無数にあることから鉄の表面積が広がり、熱が均一に伝わりやすくなっており、また錆びにくく長持ちすることも特徴的です。
鉄でできているため素朴でありながら重厚感があり、見る者を惹きつける魅力を持っています。

昭和50年(1975年)に当時の通商産業省から伝統工芸品に指定され、現在では国内のみならず世界でも有名な工芸品になりました。
一時は鉄瓶を使う家庭の減少などが問題視されていましたが、最近では鉄分補給のためにあえて鉄製の調理器具や食器を使用する家庭もあるそうです。

南部鉄器の製造行程

では簡単に、南部鉄器の製造工程について見ていきたいと思います。

① デザインを考える

まずはデザインを作成し、木型をつくります。
木型は、現在は鉄でつくっているそうです。

② 鋳型づくり

実型(さねがた)のなかに砂や粘土を入れ、木型を回して鋳型をつくります。
実型は鋳型の外枠にあたり、素焼きレンガのような素材でできた円筒状のものです。

③ 紋様付け・肌打ち

鋳型の内側に紋様を付け、肌打ちを施していきます。
南部鉄器の内側には、動物や植物を模した独特の紋様があり、これが南部鉄器の風格を決めると言っても過言ではありません。

肌打ちとは、粘土や川砂などを少量の水で溶いて団子状にしたものを鋳型に押し当てていく作業です。
乾燥させて焼けば、鋳型は完成です。

④ 中子づくり

粘土と川砂を混ぜたものを内側の型である中子と外側の型である鋳型の間に敷き詰めていきます。

⑤ 組み立て

鋳型と中子を手で組み立てていきます。

⑥ 鉄の溶解・鋳込み

鉄を溶解炉で溶解し、鋳型に注ぎ込んでいきます。
一般に鋳物や鋳造と聞くと、この工程を思い浮かべるのではないでしょうか。

⑦ 型出し

鋳型を取り外し中子を壊して、中の製品を取り出していきます。

⑧ 金気止め

型から取り出した鋳物を高温で蒸し焼きにすることで、酸化被膜を作り鉄器を腐食から守る作業です。
これは南部鉄器に特有の錆び止めの方法で、「窯焼き」と言うこともあります。

⑨ 研磨・着色

金気止めをした鉄器に鑢を掛けて研磨し、漆やおはぐろを使って着色します。

⑩ 完成

着色を終えれば、南部鉄器の完成です。

鉄瓶には「鉉(つる)」と呼ばれる取っ手の部分が必要ですが、これには「鉉師」と呼ばれる専門の職人がいます。

南部鉄器の歴史

岩手県で鉄の鋳造が発達した背景には、鉄鉱石や砂鉄、粘土、石炭などの資源が豊富に産出したことや、北上川による水路での商品の運搬が容易であったことなどが挙げられます。

盛岡の南部鉄器と奥州水沢の南部鉄器の特色やルーツは少し異なります。

まずは盛岡の南部鉄器について見ていきましょう。

盛岡の南部鉄器は、17世紀ごろに現在の岩手県を治めていた南部藩が茶釜を作らせたことが始まりであると言われています。
藩のお抱えであったこともあり、茶の湯の道具や贈答品などの目的で作られることも多かったので、盛岡の南部鉄器は奥州水沢の南部鉄器と比較すると、洗練された芸術品としての側面も重要視されてきました。

それに対し、奥州水沢の南部鉄器の始まりは古く、平安時代にまでさかのぼります。
平安時代の岩手と言えば、平泉を中心に奥州藤原氏が栄えた時代です。

世界遺産にもなっている「中尊寺金色堂」などを手掛けた優れた上方の技術者たちが次第に奥州水沢の方へと南下していって現在に至ると言われています。
奥州水沢の南部鉄器は、民衆の暮らしに寄り添った製品が造られてきましたが、奥州藤原氏の衰退とともに離散してしまいます。
一部地元に残ったものが、伊達藩によって保護され今日までその技術を伝えています。

南部鉄器の選び方

さいごに、南部鉄器の選び方のポイントについて見ていきましょう。
今回は主に鉄瓶の選び方について見ていこうと思います。

まずは容量。
鉄瓶には基本的に容積の7~8割くらいまで入れてお湯を沸かすことを考えると、一度に1、2人くらいで使うなら1リットル程度の容積のもので構わないと思います。

もっと大きなものも販売されていますが、鉄瓶はその名の通り鉄でできているため大きさに比べて重いと感じる人が多いと思います。
ちなみに、1.5リットルくらいの容積のものはなんと2キログラムも重さがあります。

また、ご家庭のキッチンにも注意が必要です。
IHコンロを使っているご家庭では、IHに対応した製品でないと使うことができません。

また、きちんと金気止めがされているのかも要注意。
ホーロー加工と言って、表面に釉薬を塗って錆び止めをしているものもあります。
どちらも錆び止めはしっかりとしてくれますが、鉄分が摂取できるか、お湯の味わいがまろやかになるか、などの観点から行くと、金気止めの方が優位です。

いろいろと細かいポイントはありますが、最終的にはデザインの好みで選んでみてください。
長く使うためにも、自分が気に入ったデザインのものを購入することが一番です。

岩手県に旅行に行った際は、ぜひ南部鉄器をお土産に購入して帰ってください。

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