静かな場所で、自分の心と向き合ってみたいと思うことはありませんか。
慌ただしく日常生活を送っていれば、自分自身と向き合うような機会も滅多にありません。
神社やお寺に参拝して心洗われたいと思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、寺社に参詣するだけではなく、寺社に宿泊して修行体験などをさせていただくことができる、宿坊というものについて解説していきます。
宿坊とは?
宿坊とは、神社やお寺のなかに設けられた宿泊施設のことを指します。
宿坊は基本的に寺社に参詣するための宿泊施設ですが、最近ではさまざまな修行体験ができるところが増えています。
「神社やお寺のなかに宿泊する」と聞くと、少し仰々しいイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、宿坊は基本的に参拝客全てに開かれた場所です。
近年、ホテルや旅館といった宿泊施設の予約はインターネット上で行うことが主流となりつつありますが、宿坊の予約もまたインターネット上でも受け付けているところが多いです。
霊験あらたかな場所で、心身を清めるために訪れるのですから、普通の旅行のように浮かれたような気持ちで宿坊に行くのは少し違うかもしれませんが、あまり気負うことなく境内で寝泊まりすることができます。
宗派などによっても宿坊の雰囲気は異なりますので、一度ホームページなどを読んでおくと、自分の目的に合った宿坊を選ぶことができます。
宿坊の成り立ち
ところで、宿坊はどのように現在のかたちに収まっていったのでしょうか。
宿坊の始まりは、平安時代にまでさかのぼると言われています。
かつては神主や僧侶たちが寝泊まりするための施設であったようですが、当時貴族たちの間で流行った熊野詣の影響で、都からの道中や目的地の寺社の宿坊が宿泊施設として利用されたようです。
平安時代の時点では、皇族や貴族などの位の高い人々しか利用することができなかった宿坊ですが、時代が下るにつれて武士や庶民の間でも広がりを見せていきます。
江戸時代に入ると、国境に関所が出来て、何か理由がない限り国と国とを行き来することは難しくなってしまいました。
そこで庶民の娯楽として度々ブームを巻き起こしたのが「お伊勢参り」や「善光寺参り」といった、寺社を参拝することを目的とした旅行です。
参拝者は比較的簡単に関所を通り抜けられたようです。
寺社仏閣参りが流行すると、全国各地の宿坊がにわかに活気づきました。
ところが、明治時代に入ると関所が廃止され、自然と参拝客の足も遠退いてしまい、宿坊も徐々に姿を消してしまいます。
しかし、現在でも宿坊で参拝客を受け入れている寺社は全国各地にあり、かたちを変えながら運営を続けているようです。
もともとは参拝がメインであり、宿坊は宿泊施設としての役割のみを持つ簡素なところが多かったのですが、ここ最近の宿坊ブームを受けて、高級旅館のようなおもてなしをするようなところなど、さまざまなスタイルのものが登場しています。
宿坊で体験できること
では、宿坊で体験できることについて詳しく見ていきましょう。
空間そのもの
まず、宿坊は空間そのものに非常に価値があります。
神社やお寺の清浄な空気を感じることができるだけでなく、何百年と受け継がれてきた建物や調度品などを見ることができ、また実際にそれを使うことができます。
歴史の流れや長く受け継がれてきた信仰を感じることも、宿坊に泊まる魅力のひとつではないでしょうか。
精進料理
宿坊に泊まる際、精進料理を楽しみにしているという方も多いのではないでしょうか。
精進料理とは、仏教などの教えに従って、四つ足の動物の肉を一切使っていない料理のことです。
実際の僧侶の方々はもちろん毎日質素な食事を食べて修行に励まれているのですが、多くの宿坊では参拝客向けに豪華な精進料理を提供してくださいます。
写経・写仏
写経や写仏の体験も宿坊の醍醐味のひとつです。
写経とはお経を書き写すこと、写仏とは仏像の絵をなぞって写すことで、主に精神統一が目的です。
ひとつのことに没頭して取り組むことで、雑念を打ち払い、心を落ち着けることができます。
座禅
座禅の体験を行っている宿坊も非常に多いです。
座禅も、写経や写仏と同じく、心を無にして自分と向き合うための修業です。
朝のお勤め
宿坊に宿泊した際には、ぜひ朝のお勤めに参加してみてください。
参加が強制ではないところが多いですが、早朝から修行に取り組むことで、すがすがしい気持ちになれます。
各種修行体験
ほかにも、神社やお寺によってさまざまな修行体験ができます。
どのような体験ができるのかを事前に調べてから予約を取ると良いでしょう。
まとめ
宿坊について解説しました。
最近の宿坊は手厚くおもてなしをしてくださるところも多いですが、あくまで心身を清めるために寺社に泊めていただいているので、門限や禁酒など、宿坊でのルールは必ず守るようにしましょう。
皆さんも、宿坊に泊まって自分自身と向き合う時間を作ってみてはいかがでしょうか。