今や「モノづくり大国」と呼ばれるまでに成長した日本。
高い技術力とモノづくりにかける独自のこだわりが評価され、世界中から絶対的な信頼を寄せられています。
今日の日本が「モノづくり大国」と呼ばれるまでの技術力を付けた背景には、明治時代に急速に進んだ産業革命があります。
日本の産業革命は世界でも類を見ないほどのスピードで成功したことが海外でも評価され、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」として世界遺産にも登録されました。
本記事では、明治日本の産業革命遺産についてわかりやすく解説していきたいと思います。
近代化の背景
まずは、明治日本で急速に進んだ近代化について見ていきたいと思います。
アヘン戦争での隣国・清の敗北や黒船の来航を受けて、日本は欧米諸国への開国を迫られ、同時に押し寄せる外国の脅威から国を守り、また外国と対等に渡り合うための国力を身に付けなければなりませんでした。
当時の江戸幕府の対応に賛否が分かれるなか、近代化の必要性をいち早く説き、実行に移していったのが長州藩です。
中央集権、軍事力強化、産業革命など、日本の近代化の必要性を主張し、最終的には薩摩藩、土佐藩、肥前藩なども味方に付けて江戸幕府を滅ぼし、明治政府を立ち上げました。
脅威である外国から学び、それを日本という国の形に合わせて落とし込んでいくという作業を、世界でも稀にみるほどの最短スピードで成し遂げた明治政府。
内戦を最小限に抑えて革命を成し遂げ、わずか数十年で列強に並ぶ国力を付けた日本の近代化は、近年多くの歴史家たちによって再評価されています。
日本における産業革命
ここからは、明治政府による近代化事業のなかでも、今回ご紹介する産業革命遺産にまつわる部分について見ていきたいと思います。
日本の産業革命は、ざっくりと3つのステップに分けることができます。
近代化の機運の高まり
先ほども触れたとおり、幕末日本では外国の脅威から如何にして自国を守るのかが大きな課題とされていました。
外国と対等に渡り合うための軍事力や政治力とともに、産業の近代化も非常に重要視されてきたのです。
こうした近代化の機運の高まりから、日本の急速な産業革命が進んでいったと考えられます。
留学・人材育成
欧米列強をモデルに産業革命を目指すことにした日本は、イギリスやプロイセンなどの西洋諸国に人材を派遣。
外国の実態を確かめるとともにその技術やノウハウを学びました。
西洋技術・機械の導入
帰国した留学生たちは、西洋で学んだ技術をもとに製鉄・鉄鋼・造船・石炭の製造を開始します。
いわゆる「お雇い外国人」の力も借りつつ、西洋の機械を導入しながら生産力を高めていきました。
このように西洋の技術を柔軟に素早く取り入れた日本は、国内事情に合わせて試行錯誤を重ね、半世紀足らずで列強諸国に肩を並べるほどの技術力を持つようになりました。
8つのエリアについて
ここからは、産業革命遺産を構成する23の遺跡を、8つのエリアに分けてご紹介していきたいと思います。
萩
吉田松陰をはじめ、日本の近代化における重要人物を数多く輩出した萩のまち。
幕末志士たちが闊歩したであろう城下町の風景が今も広がるまち並みです。
思想だけでなく、反射炉や造船所などの産業施設も建設され、保存されています。
鹿児島
長州藩と同様に、早い時期から近代化に取り組んでいた薩摩藩。
「日本のマンチェスター」とも称された紡績所や、反射炉、造船所、疎水溝が残されています。
韮山
近代化の必要性は薩長土肥の急進派の藩だけでなく、幕府も強く感じていました。
韮山反射炉は、幕領を治める韮山代官が佐賀藩から技術者を招いて作ったもの。
完全な形で残されており、教科書にも掲載されるような日本の近代化の象徴です。
釜石
洋書を頼りに建設された橋野鉄鉱山の高炉では、日本で初めて連続出銑に成功。
従来のたたら製鉄ではかなわなかった均質な鉄の大量生産が実現されました。
佐賀
幕末に活躍した諸藩のなかでも、特に西洋技術に精通していた佐賀藩。
長崎の海軍伝習所で学んだ藩士らが築いた三重津海軍所跡は、明治日本の造船所の手本になりました。
長崎
江戸時代から唯一の西洋への窓口としてさまざまな学問が取り入れられていた長崎。
国防の要としても重要視されていた地で、造船や石炭を中心に多くの遺産があります。
三池
明治政府が掲げた「殖産興業」というスローガンの下、石炭業を中心に大きく栄えた三池。
三池炭鉱の遺構を中心に、輸出するために使用した三角港なども保存されています。
八幡
和洋折衷の赤レンガ造りの八幡製鉄所。
現在も現役で活躍している遠賀川水源地ポンプ室も製鉄において大きな役割を果たしていました。
鉄鋼業を中心に栄えた八幡は、現在の北九州の発展にもつながっています。
まとめ
明治日本の産業革命遺産について解説しました。
今日の日本の発展の礎となった明治時代の産業革命。
全国に散らばる遺産を一度に見てまわるのは難しいかもしれませんが、近くを訪れた際はぜひ足を運んでみてください。