飛鳥時代に建てられた世界最古の木造建築が今もなお使用されている法隆寺。
7、8世紀の大陸の建築様式の影響を大きく受けた建物だけでなく、鎌倉時代や江戸時代など、さまざまな時代の仏教建築が集結しているという点でも非常に歴史的価値の高いお寺です。
また、仏教伝来からそう間を置かずに聖徳太子が建立したお寺としても知られており、初期の日本仏教や太子信仰、日本仏教の各宗派への影響力など、日本仏教史における大切な役割を果たしたお寺でもあります。
修学旅行や遠足で訪れたことがある方も多いかもしれませんが、その歴史や建築様式などについては案外知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、法隆寺の歴史や見どころについてご紹介していきたいと思います。
日本初の世界遺産のひとつ
姫路城、白神山地、屋久島などとともに、日本で初めて世界遺産に登録されたことでも知られる法隆寺。
日本仏教のはじまりの段階として重要な位置づけであり、のちの仏教建築にも大きな影響を与えました。
さらに、大陸からもたらされた仏教建築を日本の気候や風土に合わせて適応させていったこと、何より現存する世界最古の木造建築群が非常に良い状態で保存されており、その装飾も美しいことが評価されたのです。
聖徳太子が法華経の講説を行った岡本宮がもとになったと言われている法起寺もともに世界遺産に登録されています。
法隆寺と聖徳太子
法隆寺は、聖徳太子が父・用明天皇の遺志を受け継ぎ、斑鳩(いかるが)宮の西側に若草伽藍(斑鳩寺)を建立したのが始まりです。
太子の死後、戦乱により斑鳩宮および若草伽藍は焼失。
ほどなくして若草伽藍は法隆寺西院伽藍として再建され、さらに高僧・行信によって斑鳩宮跡に夢殿を含む東院伽藍が築かれました。
この夢殿は、後の時代に民衆を中心に広まった太子信仰の中心的存在となっていきます。
太子信仰とは、日本に仏教を広めた聖徳太子への畏敬の念と観音信仰が合わさってできたと言われる概念。
聖徳太子にはさまざまな逸話があり、その多くは後世の創作であるとされていますが、そのように特別な存在として扱われるようになった背景には、やはり太子信仰の影響が大きいように思われます。
8世紀の木造建築が戦火に焼かれることなく現存しているのは、皇室や時の権力者からの厚い庇護を受けていたことはもちろん、他宗派や民間にも広がっていった太子信仰も大きな役割を担っているのではないでしょうか。
法隆寺の見どころ
では最後に、法隆寺の見どころについてご紹介していきたいと思います。
西院伽藍
戦乱により焼失した若草伽藍を8世紀前半に再建させたもの。
回廊で囲った敷地中心部の東側に金堂、西側に五重塔がある配置は法隆寺式伽藍配置と呼ばれています。
なかでも金堂は西院伽藍最古の建築物で、建物自体も重心が低くどっしりとした印象を与える美しい造りになっているほか、収められている仏像も非常に貴重なものです。
東院伽藍(夢殿)
太子信仰の聖地ともいえる夢殿を含む東院伽藍。
聖徳太子を偲んで斑鳩宮跡に建立されました。
御本尊である久世観音菩薩立象が収められている夢殿は八角形になっており、鎌倉時代に大きく改修されたものの、天平建築の面影を色濃く残しています。
夢殿の御本尊は春と秋の年2回、御開帳されるので、ぜひ日程を合わせて訪れてみてください。
大宝蔵院
法隆寺が所有する宝物の数々を展示・保存している施設。
特に、玉虫厨子や百済観音像、焼失した金堂壁画などは、教科書で目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
飛鳥時代を中心に、古代の日本を代表するような貴重な文化財を見ることができます。
東大門・築地塀
西院と東院の間に位置する東大門は奈良時代を代表する建築物で、中ノ門と呼ばれることもあります。
三棟造りという珍しい構造をしており、平安時代に現在の場所へ移されたそうです。
また、築地塀は安土桃山時代から江戸時代ごろにかけて築かれたもの。
版築と呼ばれる、粘土を棒で何層にも付き固めて作る工法を取っているそうです。
境内の区画を分けるのに使われており、歩いているとまるでタイムスリップしたかのような不思議な感覚になります。
法起寺
聖徳太子が法華経を講説したと言われる岡本宮がもとになっているお寺。
法隆寺、中宮寺、四天王寺などとともに、太子御建立七ヵ寺のひとつに数えられることもあり、法隆寺とともに世界遺産に登録されました。
境内にある三重塔は現存最古のものであるとされており、度重なる改修の末に原型はほぼわからなくなっているものの、昭和の解体修理によって本来の形に近いものが復元されたと言われています。
まとめ
法隆寺の歴史や見どころについてご紹介しました。
仏教が日本に入って来たばかりのころの建築を今に伝える貴重な木造建築群や、それらが歩んできた歴史、そして人々の信仰が詰まった魅力的なお寺です。
奈良を観光する際はぜひ法隆寺やその周辺の寺院にも立ち寄ってみてください。