人類史上初めての被爆地となった広島。
現在も広島のまちには、負の世界遺産・原爆ドームをはじめ、原爆の威力と被害の惨状が生々しく残る遺構が点在しています。
修学旅行の際にあまりわからないまま、あちこちを見学したという方も多いかもしれませんが、大人になってからじっくりと遺構を巡り、平和について考える機会を持つことも大切です。
本記事では、広島の原爆に関する遺構について解説していきたいと思います。
世界中に知られている「Hiroshima」の悲劇
戦争被害の象徴であり、平和の象徴である広島のまちには、世界中から多くの人々が訪れます。
原爆投下については国や個人によってさまざまな主張があり、考え方はそれぞれ違いますが、まちひとつが簡単に吹き飛んでしまうほどの恐ろしいものであることに変わりはありません。
80年近く経っても残る戦争の生々しい爪痕は、私たちに平和とは何かを問いかけ続けています。
原爆投下による広島の被害
中国地方方面の軍事拠点であった広島は、軍都として発達し、多くの人々でにぎわう地方都市でした。
戦時下の物資に乏しい状況は軍都であっても変わりはありませんでしたが、35万人もの人々が暮らす活気のあるまちであったのです。
多くの人々が戦時の苦しい中でも営んでいた日常風景は、1945年8月6日午前8時15分、一瞬にして爆風の中に消えました。
爆発の衝撃や熱波によってその日のうちに人口の半分近くが亡くなり、よく知られている通り、生き残った人々も高濃度の放射線を浴びたことによる後遺症によって命を落とし、現在も苦しんでいる方がたくさんいらっしゃいます。
市民を狙った無差別な大量虐殺が行われた痕跡は、まちのなかにも、被爆者の方の体の中にも、人々の心の中にも深く残り続けています。
原爆に関連する施設・遺構
では、広島への原爆投下と深い関わりを持つ施設や遺構をご紹介していきたいと思います。
原爆ドーム(旧広島県産業奨励館)
原爆の威力の大きさと当時のまちの惨状を物語る原爆ドーム。
チェコの建築家・ヤン・レツルの設計によって大正時代に建てられたもので、石材とモルタルで外装されたモダンな建物は完成当初から広島の新たなシンボルとして大きな注目を集めていました。
日本で初めてバームクーヘンが販売されたことでも知られています。
爆心地から160メートルほどの場所にあったこの建物は、その大部分が一瞬のうちに倒壊。
内部にいた人々は全員即死しました。
奇跡的に残った建物の一部は保存され、人類史上初の被爆地を物語る代表的なものとして、戦争の恐ろしさと平和の尊さを人々に訴えかけ続けています。
平和記念公園
負の世界遺産・原爆ドームを中心に、平和について改めて考えさせられるような遺構やモニュメントがあります。
被爆した影響により12歳で亡くなってしまった佐々木禎子さんをはじめとする、被爆した子どもたちのために建てられた慰霊碑である「原爆の子の像」は特に有名です。
公園内にあるレストハウスは、大阪に本店があった大正呉服店の店舗であったもの。
当時はまだ珍しかった鉄筋コンクリート製のモダンな建物で、木造建築ばかりのまちの中ではひと際目を惹いたそうです。
爆心地から170メートルほどの場所にあったこの建物は奇跡的に原型を留めていましたが、中にいた人々は地下にいたひとりを残して全員死亡しました。
現在は保全工事がなされ、旧中島地区の歴史資料が展示されています。
袋町小学校平和資料館・本川小学校平和資料館
どちらも爆心地から500メートル圏内にあった鉄筋コンクリート製の小学校(国民学校)の遺構です。
生き残ったのはわずかに数人ほどで、建物は倒壊を免れたものの、大きな被害を受けました。
現在はどちらも保存・改修され、一部の遺構を残しつつ資料館になっています。
広島大学旧理学部1号館
昭和6年(1931年)に広島大学の前身である広島文理科大学本館として鉄筋コンクリートで建てられた建物。
爆心地から1420メートルほどの場所にあり、学徒動員で校舎内にほとんど生徒はいなかったものの、一部の理系学生などが犠牲になりました。
戦後も大学の教室として利用されていましたが、老朽化などにより移転しました。
現在は保存活動が行われており、活用方法については検討が重ねられています。
旧日本銀行広島支店
鉄筋コンクリート製の建物で、爆心地からは380メートルほどの場所にあります。
建物は甚大な被害を受け、多くの命が失われました。
移転後は広島市が管理し、現在は一般公開されています。
まとめ
広島の原爆に関連する遺構について解説しました。
被爆者の語り部の方が高齢化していくなか、原爆による被害をありのまま私たちに伝える遺構や当時の資料を展示する施設は非常に重要なものになってきます。
広島にはほかにもさまざまな観光地がありますが、やはり原爆ドームに訪れる方は多いです。
広島の原爆の遺構を巡る旅は、戦争について、また平和について改めて考えてみる機会を持つ良い機会になるかと思います。