山口県を代表する観光スポットである秋吉台。
人間の歴史よりもはるかに長い時間をかけて造り上げられた景色は圧巻。
草原と浮き出た石灰石のコントラストが美しく、また地下の洞窟も見ごたえがあります。
3億5000万年前から、現在もなお変化し続ける自然の営みを感じられる場所です。
本記事では、カルスト地形とは何かを軽く解説しながら、秋吉台の定番観光スポットについてご紹介していきたいと思います。
大自然が生み出した美しい芸術作品
山口県中西部に位置する秋吉台。
国内最大級のカルスト地形が広がる標高300メートル前後の緩やかな台地で、急崖と平野に囲まれています。
途方もないほどの長い時間をかけて石灰岩が堆積し、それが溶け出すことによって造られた美しい景観はまさに大自然が生み出した芸術作品。
四季折々の自然を感じながらゆっくりと散策することもできますし、ジオツアーに申し込めば秋吉台について深く学びながら観光を楽しむことも可能です。
カルスト地形とは?
まずは、そもそも「カルスト地形」とはどのようなものなのかについて見ていきましょう。
カルスト地形とは、ひとことで言えば石灰岩が二酸化炭素を含む水によって化学的に溶かされることによって出来た地形のこと。
石灰岩の主成分は水に溶けませんが、二酸化炭素と反応して別の物質になることで、水に溶けるようになるのです。
かつてサンゴが生息していた浅瀬や温泉が湧き出る場所には石灰岩地形が多く見られ、そこに地下水や雨水が流れることによってカルスト地形が生じます。
秋吉台は、南方の海に生息していたサンゴが石灰岩となって海から山へ何層も堆積し、そこへ雨水が流れ込んで出来たと考えられています。
化石が多く含まれる石灰岩
秋吉台の草原に羊の群れのように突き出ている岩は、地中に埋もれていたサンゴ礁の石灰岩がプレート運動により地表面に隆起したものです。
3億5000万年前から積み上がってきた石灰岩には、古生代の海洋生物の化石も含まれているそうです。
タイムカプセルのように地球の古い記憶が詰まった石灰岩がいたるところから突き出ている秋吉台は、散策しているだけでも地球の営みの大きさとロマンを感じますね。
ドリーネ(窪み)について
カルスト台地を眺めていると、ところどころにすり鉢状の窪みがあるのがわかります。
これは溶食凹地(ようしょくおうち)と言って、鍾乳洞を形成する過程で地面が陥没することで生じるものです。
鍾乳洞とは、石灰岩が地下水などで溶け出し、削られることによってできる洞窟を指します。
溶食凹地のなかでも直径数メートル~数百メートルの大きな窪みが、ドリーネ。
単体のドリーネはきれいなすり鉢型をしていることが多いです。
余談ですが、ドリーネが複数連結して出来たものをウバーレ、それがさらに大きくなり、盆地を形成したものをポリエ(溶食盆地)と呼んでいます。
秋吉台などの観光地化されたカルスト台地ではドリーネ周辺をロープや柵で囲い、人が入れないようにしていますが、むやみに近づくのは非常に危険です。
非常に底が深いため救出も困難で、実際に事故が起こったこともある層なので十分に注意して観光してください。
秋吉台の定番観光スポット
では最後に、秋吉台の定番観光スポットについてご紹介していきたいと思います。
秋吉台カルスト展望台
秋吉台のカルスト台地を360度見渡せる円形の展望台。
石灰岩が浮き出た草原がどこまでも広がる美しい眺望が堪能できます。
隣接するおしゃれなカフェにもぜひ立ち寄りたいですね。
バリアフリーにも配慮されており、気軽に幅広い世代が観光できるようになっています。
秋芳洞
青々とした草原と石灰岩が織りなす雄大な台地の地下100メートルには、洞窟が広がっています。
ひんやりとした杉木立を抜けると、国内屈指の鍾乳洞である秋芳洞の入り口が見えてきます。
洞窟の中は年中17度に保たれており、夏は涼しく、冬は暖かいので快適に見学できる観光スポット。
自然が造り出した空間は、時が止まっているかのようにも見えますが、今も刻一刻とその形を変え続けています。
景清洞
壇ノ浦の戦いに敗れた大庭景清が落ち延びたという伝承がある景清洞。
入り口から700メートルほどの場所まではバリアフリーにも対応しており、気軽に観光を楽しめます。
その先の400メートルは真っ暗な世界が続いており、ヘッドライト、ヘルメット、長靴を借りて探検することが可能。
団体で探検ツアーに参加する場合は希望すればガイドを付けることもできます。
大正洞
戦乱が起こった際に人々が牛を隠していたことから、「牛隠しの洞」とも呼ばれていた大正洞。
大理石の石柱で造られた藤棚の通路「ロマンロード」を抜けると、洞窟の入り口が見えてきます。
連続した数層からなる石灰洞で、比較的観光客が少ないので自分のペースで観光ができるのも魅力のひとつです。