将棋駒の生産量の実に9割以上のシェアを誇る山形県天童市。
近年は、インターネットでの対局中継による将棋観戦・いわゆる「観る将」が増加したり、新たな世代の棋士の台頭、漫画やメディア媒体の題材として取り上げられたりと、何かと将棋が話題になりブームになっています。
注目を集める将棋の一大イベントと言えば、将棋のまち・天童で行われる人間将棋ではないでしょうか。
本記事では、天童と将棋の関わりや、天童桜まつりで行われる人間将棋についてご紹介していきたいと思います。
将棋のルーツ
まずは、将棋のルーツについて簡単に解説しておきたいと思います。
将棋は、古代インドのボードゲーム「チャトランガ」がもとになっている、日本独自の室内遊戯。
「チャトランガ」から発展したボードゲームは世界中に存在し、特にヨーロッパのチェスが有名です。
奈良県の興福寺で発見された平安時代のものと考えられる駒が日本最古の将棋の駒。
当初は玉・金・銀・桂・歩の5種類の駒を動かしていたようです。
平安将棋のころから日本独自のルールとして特筆すべきなのが持ち駒です。
持ち駒とは、相手から取った駒のことで、自分の駒として使うことが可能。
相手から取った駒を自陣で使うことができるボードゲームは世界的にも珍しいようです。
現在の将棋は、9×9の盤面に各々20枚ずつ、計40枚の駒を並べ、二人で対局するかたちになっています。
先に刺す方を先手、後に刺す方を後手と言い、交互に差していき、先に相手の王将を追い詰めた方が勝ち。
実際に王将を取る場面は基本的にはなく、負けを悟った方は「負けました」と宣言し、投了という形を取ります。
ちなみに、将棋をプレイすることを同じボードゲームの囲碁と一緒くたにして「打つ」と表現する方もいらっしゃいますが、これは正確には間違いで、「指す」が正しいです。
天童と将棋
では、天童はなぜ全国でも屈指の将棋駒の生産量を誇るのでしょうか。
天童で将棋駒の生産が始まったのは江戸時代ごろ。
転封して天童へやって来た織田氏が前の領地である高畠のころから将棋駒の生産を行っており、それが持ち込まれる形で天童でも将棋駒の生産が始まりました。
江戸時代後期になると、貧困にあえいだ武士たちの内職として奨励され、定着しました。
将棋の駒に書かれる文字の書体は150種類以上あると言われており、駒に使われる木材や文字のプリントの仕方にもさまざまな種類があります。
天童桜まつり 人間将棋
ここでは、天童で行われる大きな将棋イベントである人間将棋についてご紹介していきたいと思います。
毎年4月に開催される天童桜まつりで行われる人間将棋。
その名の通り、戦国時代の甲冑や着物を着た人々を将棋の駒に見立て、対局者の号令に合わせて巨大な盤上を移動していくイベントです。
豊臣秀吉が伏見城で「将棋野試合」という人間将棋に近い催しを行ったとの逸話が残っているそうです。
天童の人間将棋は1956年から行われており、現在は舞鶴山山頂で行われています。
1992年からはプロ棋士が対局者を務めるようになっており、加藤一二三や藤井聡太など、著名な棋士がゲストや対局者として参加しています。
ルールは基本的に普通の将棋と変わりありませんが、原則としてすべての駒を1回は動かすという暗黙の了解があるそうです。
全国各地で類似のイベントが行われており、海外では人間チェスが行われているところもあります。
甲冑を着て駒の役割を果たす駒武者は一般公募なので、興味のある方はぜひ応募してみてください。
関連観光スポット
ではさいごに、天童にある将棋に関連した観光スポットを見ていきたいと思います。
天童市将棋資料館
山形新幹線の停車駅でもある天童駅に隣接する将棋の博物館。
将棋の歴史や、天童と将棋の関わりなどについての展示を見ることができます。
館内にはたくさんの将棋の駒や、人間将棋の様子を切り取ったミニチュアなどが展示されています。
天童温泉
竜王戦や十段戦など、20回以上もタイトル戦の会場になった旅館がある天童温泉。
タイトル戦とはプロ将棋の大きな棋戦のことで、名人、竜王、棋聖など、ニュースで耳にしたことがある称号は、タイトル戦を勝ち抜くことで得られます。
厳しいリーグ戦を勝ち抜いた挑戦者ひとりが現タイトルホルダーと対局してタイトルを争うことができ、この挑戦者対タイトルホルダーの頂上決戦をタイトル戦と呼ぶことが多いです。
数々の名局を生み出してきた「竜王の間」という対局室は宿泊者のみ見学が可能なので、興味のある方はぜひその旅館に宿泊してみてください。
街中の詰将棋
天童の街中には、タイルや電柱など、さまざまなところに詰将棋が隠されています。
街を歩きながら詰将棋を解いていくのも楽しいですね。
まとめ
天童と将棋の関わりや、天童桜まつりで行われる人間将棋について解説しました。
将棋駒の圧倒的な国内シェアを誇る天童は、まさに将棋のまち。
人間将棋は非常に迫力があるので、ぜひ一度訪れてみてください。