水戸黄門が残した日本の考古学の基礎―上侍塚・下侍塚古墳

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水戸黄門が残した日本の考古学の基礎 上侍塚・下侍塚古墳

時代劇のご老公として親しまれている水戸黄門こと水戸光圀。
水戸のご老公が実際に日本全国を旅して困っている人々に手を差し伸べていたのかはわかりませんが、光圀は「大日本史」を編纂し、日本という国がこれまでどのような歴史を辿って来たのかについて熱心に調査して資料を蒐集したことで知られています。

そんな水戸光圀が命じ、日本で初めて本格的な考古学調査が行われたのが上侍塚・下侍塚古墳です。

本記事では、水戸光圀が日本で初めて本格的な考古学調査をしたと言われている上侍塚・下侍塚古墳や、場所は離れていますが水戸光圀に関連した水戸周辺の観光スポットについてご紹介していきたいと思います。

上侍塚・下侍塚古墳の概要

栃木県の那須地域にある上侍塚・下侍塚古墳は、水戸光圀が日本で初めて本格的な考古学調査を行った考古学発祥の地として知られています。
日本で初めての考古学調査と言えば、明治時代に入ってから大森貝塚の調査を行ったいわゆるお雇い外国人のモースが有名ですが、その数百年前から本格的な考古学調査と遺跡保存を行っていたのです。

侍塚古墳と総称されることもあり、那珂川の西側段丘上に南北に約800メートル間隔で並んでおり、南が上侍塚古墳、北が下侍塚古墳で、古墳時代前期のものとされています。
下侍塚古墳より北には8基から成る古墳群が連なり、田園風景と古墳ののどかな景色を楽しむことができるエリアです。

古墳時代研究の第一人者であった森浩一が「日本で一番美しい古墳」と著書に記したこともあるほどで、地域最大級の規模を有することから那須地域の首長的存在であった人物が埋葬されているのではないかと推察されています。

那須のほかの観光地からは少し離れていますが、周囲には出土品や江戸時代の発掘の様子についての展示を行っている「大田原市なす風土記の丘湯津上資料館」があるので、ぜひ実際に訪れて古墳の規模に触れ、江戸時代の発掘調査の様子に思いを馳せてみてください。

水戸光圀が行った調査

水戸藩というと茨城県を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、栃木県那珂川町の馬頭地区も当時は水戸藩に組み込まれていました。

領内の視察中に大金重貞から献上された「那須記」に記された「那須国造碑」に目を留めた水戸光圀は、儒学者である佐々介三郎宗淳と大金重貞に命じて上侍塚・下侍塚古墳を調査させます。

大金重貞が記した「湯津神村車塚御修理」によると、鏡、玉、鉄器、甲冑などが発掘され、それらを絵師にスケッチさせたのちに箱に入れ、再び地中に埋めたようです。

また、発掘後には土をかけて埋め直し、周囲に松の木を植えて土が崩れないように処置したとも記されています。
一連の考古学調査の本来の目的であった被葬者の名前を解き明かすことはかないませんでしたが、光圀が被葬者に対して敬意を払い、史跡を保護しようとしたことがうかがえるエピソードです。

「那須国造碑」については未だにはっきりとわからないことも多いようですが、古代に造られた石碑が遺っていることは珍しく、「日本三古碑」としても知られています。

水戸光圀による日本で初めての本格的な考古学調査は、当初の目的を十分に果たすことが出来なかったとはいえ、出土品の記録など現代の発掘調査にも通じる作業が行われていました。
また、水戸光圀が遺跡保護の考え方を持っていたというのも興味深いですね。

水戸光圀の関連観光スポット

さいごに、今回ご紹介した上侍塚・下侍塚古墳からは離れていますが、水戸光圀や水戸徳川家ゆかりの観光スポットについて見ていきたいと思います。

偕楽園

石川県の兼六園、岡山県の後楽園とともに日本三名園と称される日本庭園。
9代水戸藩主徳川斉昭によって造営されたもので、国内外問わず多くの観光客が訪れます。

水戸城

土づくりのお城としては日本最大級の規模を誇る水戸城。
天守も石垣もなく、見落とされてしまいがちですが、張り巡らされた土塁による防御力の高さと御三家にふさわしい圧倒的なスケールの縄張りを堪能できます。

弘道館

偕楽園と同じく徳川斉昭が設立した日本最大規模の藩校。
「水戸学」の拠点となった場所で、その思想はやがて尊王攘夷の大きな波を作り上げていくことになります。

徳川ミュージアム

水戸徳川家の子孫が大名道具や古文書などを寄贈して造られた博物館。
水戸光圀が編纂した、「大日本史」の草稿本や、それを書くために全国から集めた古文書類も収蔵されています。

まとめ

上侍塚・下侍塚古墳の歴史や見どころ、水戸光圀に関連した観光スポットについてご紹介しました。

水戸光圀によって日本で初めて本格的な考古学調査が行われた上侍塚・下侍塚古墳。
那須の主な観光スポットからは少し離れていますが、古墳が好きな方にとっては、古墳と田園風景が織りなす景観や「大田原市なす風土記の丘湯津上資料館」の展示は非常に心躍るものかと思います。

また、水戸市内の水戸光圀ゆかりの場所にも訪れてみてください。

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