室町時代後期から江戸時代にかけて建設されていった日本のお城の天守閣。
かつては日本全国に数多くあったお城も、江戸時代の一国一城制や、明治時代の廃城令、太平洋戦争時の空襲などによってその数を大幅に減らし、現在天守が残されているお城はわずかに12のみ。
そのうちの5つは国宝に、7つは国の重要文化財に指定され、大切に保護されています。
各地の名城を巡って、その歴史やそれを取り巻く人々に思いを馳せてみませんか。
本記事では、国宝に指定されている五城についてご紹介していきたいと思います。
国宝に指定されている5つの名城
天守が現存する12のお城のうち特に史学的、建築学的価値の高い、姫路城(兵庫県)、彦根城(滋賀県)、犬山城(愛知県)、松本城(長野県)の5つは国宝に指定されています。
さらにそのなかでも、当時の城郭建築がほとんどそのまま残されている姫路城はその軍事機能の高さや見た目の美しさが評価され、国内で初めて世界遺産に登録されました。
姫路城と同じく、規模の大きさや保存状態の良さが評価されている彦根城も、近々世界遺産に登録されるのではないかと言われています。
ここからは、世界的にも大きな注目を集め始めている国宝五城を見ていきましょう。
松本城(長野県)
松平氏、堀田氏、水野氏など、譜代大名が治めたお城。
16世紀前半ごろに築城されたと考えられており、現存するお城のなかでは最古のものであるとされています。
天守が現存するお城には珍しい平城で、現存する天守のなかでは大きな部類に入る五層六階。
層塔型のシンプルな造りに見えますが実は望楼型で、小天守以外にも月見櫓などが増築された複雑な連結複合型。
戦国時代に築城された大天守や乾小天守には、実践を意識した緻密な防御機構が備えられ無骨な印象を受けますが、江戸時代に築城された辰巳附櫓や月見櫓には美しい装飾が施されており、優美な印象を受けます。
堀の水面に写った天守が美しく、外国人観光客からも人気の高いお城です。

現存する天守は国内にわずか12しかないことをご存知でしょうか。 長野県にある松本城もそのひとつで、現存天守のなかでも珍しい平城です。 地上五層と地下の6階建てで、現存天守のなかでも比較的規模の大きなお城になります。 背後に控える日本アルプスの山々との対比が印象的で、黒と白のコントラスト...
犬山城(愛知県)
こちらも16世紀前半に築城された比較的古いお城。
小高い山と背後を流れる木曽川をうまく利用し、後ろ側からの攻撃を見事に防いでいます。
「唐破風」と「入母屋破風」が取り入れられた天守は外観も華やか。
三重四階の望楼型天守は最上階に廻縁と高欄があり、外に出てぐるりと一周できるようになっています。
風情ある城下町の観光には近年おしゃれなカフェも多くでき、若い世代からも人気を集めているそうです。

現存する12の天守閣のなかでも最も古い犬山城。 織田信長の叔父によって築かれ乱世に翻弄された犬山城は、江戸時代やそれ以降の激動の時代を経てもなお生き残り、今日私たちが目にすることができています。 歴史ある犬山城は一見地味に見えるかもしれませんが、その実とてもデザイン性の高いお城。 細かい部...
彦根城(滋賀県)
彦根藩主・井伊氏が治めたお城。
琵琶湖の湖畔に築かれており、櫓や天守からは美しい湖の景観を楽しむことができます。
天守、櫓、門、庭園など、江戸時代の政治の拠点であったお城の姿がそのまま保存されており、当時の武家の生活を知る上でも大きな手掛かりとなっています。
彦根はもともと豊臣家の重臣であった石田三成が治めていた地域。
関ヶ原の戦い後に彦根城を築城した井伊氏は、西国大名への牽制も込めて美しく機能的な城郭に仕上げました。
三重三階の天守はさまざまな種類の破風が取り入れられ美麗に装飾されていますが、内部は狭間や隠し部屋が取り付けられ、籠城戦が強く意識されています。
天守以外にも非常に良い状態でさまざまな建物が残されているので、非常に見ごたえのあるお城です。

貴重な現存天守を持つ彦根城。 井伊直政を藩祖に持つ井伊藩が代々治めたお城です。 その見た目の美しさもさることながら、防御機構ももちろんしっかりとしており、城郭としてかなり見応えがあります。 また、四季の自然の移り変わりも美しい城で、特に玄宮園の季節の花々とともに見る天守閣は格別です。 ...
姫路城(兵庫県)
「白鷺城」の異名でも知られる日本屈指の名城。
日本の近世城郭のお手本のような渦郭式平山城で規模も大きく、「暴れん坊将軍」をはじめ、数々の時代劇の撮影に使用されているほどです。
五重六階の白く輝く天守は、大天守と3つの小天守を渡櫓でつないだ連立層塔型。
姫路城のシンボルである白漆喰は、美しいだけでなく重火器による延焼を防ぐ役割もあります。
街道の要所である姫路城は西国大名の監視という役割も担っており、非常に大規模でありながら細部にまで計算された守りの堅いお城です。
実戦が強く意識されたお城でありながら、姫路城は戦争、災害、火事などの被害をほとんど受けず、彦根城同様非常に良い状態で多くの建物が残されており、世界中から観光客が訪れる日本屈指の観光名所になっています。

白壁が美しい、世界遺産・姫路城。 白鷺城の異名でも知られ、毎年国内外から多くの観光客が訪れる城です。 400年間守り継がれてきた姫路城は国内有数の規模と数々の遺構を今に伝えており、私たちが当時の建築を知る重要な手がかりになっています。 複雑な縄張りと青空に生える美しい天守は、まさに日本の城...
松江城(島根県)
宍道湖の湖畔に築かれたお城。
もともとこの地域にあった山城である月山富田城は非常に守りの堅いお城で何度も敵を退けた名城ですが、近世のお城の在り方としては立地が不便なため、湖畔に松江城が築城されました。
四重五階の望楼型天守で、天守内部から付櫓へ攻撃することができる狭間が取り付けられた珍しい構造になっています。

国内に12しかない現存天守のひとつであり、さらにその中でも5つしかない国宝天守でもある松江城の天守。 松江城は近世城郭を代表する防御機能の高さと藩政における利便性を兼ね備えた名城で、現存する天守のなかでも2番目に広く、3番目に高い天守を有しています。 江戸時代の雰囲気が残る塩見縄手のまち...
まとめ
国宝に指定されている五城についてご紹介しました。
規模や見どころはそれぞれ異なりますが、どれもその地域の歴史や人々の想いを大きく反映し、ロマンにあふれたお城です。
お城だけでなく、城下町歩きや周辺の関連史跡を巡るのも良いですね。
次のお休みにはお城を観に旅行へ行きませんか。