ドアノブは回す、目盛りが付いていれば定規のように長さを計る道具として扱う、など、特に説明されなくても直感的に物の使い方が理解できるという経験はありませんか?
アフォーダンス理論は、こうした人間の認知・心理を指したもので、多くの身近な製品に適用されています。
ビジネスやマーケティングに応用すれば、ユーザーのさらなる購買意欲向上・利用促進につなげることも可能です。
本記事では、具体例や応用例などを通じて、アフォーダンス理論への理解を深めていきたいと思います。
アフォーダンス理論とは?
「アフォーダンス」とは、「~を提供する」「~を与える」を意味する英単語「afford」から造られた造語です。
アメリカの心理学者・ジェームス=ジェローム=ギブソンが提唱したアフォーダンス理論は、環境から得る情報が人間や動物の行動を「提供する」「与える」という考え方を指します。
つまり、環境との相互作用が人間や動物の行動を引き出しているということです。
これを発展させたのがアメリカの認知科学者・ドナルド=アーサー=ノーマン。
物の色や形状といった性質が人間や動物の行動を促すという考え方で、主にデザインの現場で活用されてきました。
アフォーダンス理論が使われている身近な例
理論について簡単に解説してきましたが、これだけではわかりづらいかと思いますのでいくつか身近な例を挙げてみたいと思います。
ドアノブ
アフォーダンス理論の説明の際にたびたび具体例として挙げられるのがドアノブの形状です。
誰かから教えられたわけでも説明書を読んだわけでもなく、私たちはごく自然にドアノブを回してドアを開けます。
アフォーダンス理論では、これはドアノブの形状が私たちに「回す」という行動を促していると考えているのです。
定規
定規もアフォーダンス理論を分かりやすく示している製品です。
「これは定規です」と説明されなくとも目盛りと数字が書かれていれば長さを計測する道具だと直感的に理解できますし、数字がなくとも線が等間隔に規則正しく並んでいれば定規だとわかります。
音楽機器の再生・停止ボタン
音楽機器の再生・停止ボタンも直感的に意味が理解できるデザイン。
「||▷」は再生、「□」は停止と説明書が無くてもわかります。
ピクトグラム
ピクトグラムとは、シンプルなイラストを用いて誰にでもわかりやすく場所や機能を説明したもの。
お手洗いの男女や、非常口、電車の優先座席など、言語や文化の違いを超えて意味や取るべき行動が理解できるようになっています。
交通標識
交通標識もピクトグラムと同様に言語や文化の違いを超えて意味や取るべき行動が理解できるようになっているデザイン。
赤い丸の中に数字が書いてあれば、これ以上速度を出してはいけないということが直感的に理解できます。
国によって多少異なりますが、信号の色も私たちに取るべき行動を促しています。
マウスカーソル
製品や空間だけでなく、ウェブデザインでもアフォーダンス理論が使われています。
その代表例がマウスカーソルです。
普段は斜め上に傾いた矢印になっていますが、クリックしてほかのページに飛べる部分にカーソルを持ってくると指のような形状に変化し、さらに文字に対して何らかのアクションができる部分では縦棒のような形状になります。
これらも特に説明を受けずとも取るべき行動や操作方法がわかる良い例です。
アフォーダンス理論のマーケティングへの応用
では、アフォーダンス理論はどのような点においてにマーケティングへの応用が可能なのでしょうか。
まずは、ウェブサイト・広告・サービスなどをユーザーが使いやすいように改良できるという点です。
言葉での説明やアイコンをシンプルでわかりやすくすることによって、誰でも簡単に理解・行動・操作が可能になります。
たとえば、浮き上がって見えるデザインのアイコンはユーザーにクリックするという行動を促します。
もうひとつは、ウェブサイト・広告・サービスなどの設計を工夫することで、ユーザーの購買意欲向上・利用促進につなげることができるという点です。
単純に価格を下げると手に取りやすくなる、というのもそうですし、好意的なレビューを強調して表示すればユーザーはよりその製品に惹きつけられます。
このように、アフォーダンス理論はマーケティングへも応用することができるのです。
まとめ
アフォーダンス理論について解説しました。
あるものの形状や視覚的情報から、ユーザーが直感的に使用方法や取るべき行動を理解するという人間の認知・心理を指すアフォーダンス理論。
ドアノブの形状や音楽機器の再生・停止ボタンなど、身近な多くの製品にこの理論が使われています。
アフォーダンス理論はプロダクトデザインだけでなく、ビジネスやマーケティングの現場でも応用可能な理論です。
ユーザーにとって使いやすいウェブサイト・空間・サービスの設計や、価格設定やレビューの強調によりユーザーの購買意欲向上・利用促進につなげることもできます。
アフォーダンス理論をしっかりと理解して、ユーザーに寄り添ったマーケティングを行いましょう!