日本一の高層ビル・あべのハルカスから10分少々歩くと、広大な敷地面積を持つお寺が見えてきます。
聖徳太子が建立した四天王寺です。
四天王寺は日本で初めて国が造り運営した官寺で、その歴史は1400年前までさかのぼります。
地元の人々からは「四天王寺さん」の名称で古くから親しまれてきた庶民の信仰の拠り所でもあります。
本記事では、四天王寺の歴史や見どころについて解説していきたいと思います。
都会の中心にある古刹
近鉄、地下鉄、JRの駅が集結する天王寺駅界隈は、日本一の高さを誇るあべのハルカスがあるなど、大阪でも屈指の繫華街です。
高層ビルや高層マンションが建ち並ぶ中にある四天王寺は、都会の中心にありながら歴史と人々の信仰の厚みを感じることができる場所です。
近年は外国人観光客にも人気が高い観光スポットになっています。
実は「天王寺」という地名は「四天王寺」が縮まったもの。
その土地の名前になるほど地域に定着したお寺なのです。
広い境内は美しく整備され、見どころもたくさんあります。
ここでは、四天王寺の歴史や見どころを紹介しつつ、その魅力に迫っていきたいと思います。
四天王寺と聖徳太子
推古元年(593年)に建立された四天王寺。
廃仏派の物部守屋と崇仏派の蘇我馬子の合戦で崇仏派についた聖徳太子は、持国天、増長天、多聞天、広目天の四天王の像を自ら彫り、戦に勝った暁にはこの四天王をお祀りする寺院を建てると誓いました。
この戦で見事戦勝した聖徳太子が建てたのが四天王寺です。
当時は海沿いであったこの地域は、船で日本へ訪れた大陸の人々が最初に目にする場所。
日本もほかの東アジア諸国と同じように仏教を信仰し、大きな寺院が築けるほどの権力、財力、技術力を持っていることを知らしめる必要がありました。
四天王寺の伽藍配置は「四天王寺式伽藍配置」とも呼ばれ、6~7世紀の大陸の影響を大きく受けています。
大陸と対等に渡っていこうという聖徳太子の気概が、四天王寺の造りからも伝わって来るようです。
聖徳太子信仰について
「聖徳太子は存在しない」という説が一時期話題になりました。
これには、『「聖徳太子」と名乗っていた人物は存在しない』、という意味と、『聖徳太子の業績はひとりの人間によるものではなく、当時の人々の活躍をひとつの人物の功績にして「聖徳太子」を信仰するようになった』、という意味があります。
確かに近年、「聖徳太子」ではなく「厩戸皇子」と表記する教科書が増えてきたようです。
用明天皇の第二皇子であった厩戸皇子は、推古天皇の摂政として奔走し、「日出づる所の天子、日没する所の天子に…」で有名な文書を遣隋使・小野妹子に託し、隋の皇帝を激怒させたものの、大陸との交易の礎を築いた人物。
彼の功績が本当に彼一人のものであったかどうかはこの際置いておくとして、生前「聖徳太子」と名乗っていなかったことは事実です。
彼が残した多くの功績を称え、神聖視した呼び名が「聖徳太子」。
時代が下るにしたがってその業績や人物像は神格化され、やがて「聖徳太子信仰」が生まれます。
聖徳太子が築いた四天王寺は、その信仰の要のひとつでもあるのです。
日本三大奇祭「どやどや」
大阪の冬の風物詩のひとつに、毎年1月14日に四天王寺で行われる「どやどや」があります。
紅白の褌を締めた参加者が境内の六時堂を奪い合うというもので、真冬に裸の男性が大勢集まっているさまは、まさに奇祭。
昔は近隣の庶民たちが境内へ「どやどや」と集まって札を奪い合っていたようですが、現在は清風高校と清風南海高校の男子生徒や職員のみで行われています。
このお祭りは元旦から行われている天下泰平・五穀豊穣を祈願する法要の結願日に開催されており、同日の仁王門前では正月飾りなどを燃やす「どんと焼き」が行われています。
四天王寺の見どころ
ではさいごに、四天王寺の見どころをご紹介していきたいと思います。
石の鳥居
まず入り口に見えているのは石の鳥居。
神仏習合の名残で、境内にあった神社は明治の初めに分離されてしまっていますが、この石の鳥居だけは今も残されています。
夕日がきれいに見えるスポットとしても有名で、このあたりは「夕陽ヶ丘」とも言われています。
西大門
石の鳥居をくぐってまっすぐ歩くと西大門が現れます。
柱には「転法輪」が付いており、一回まわすとお経を一回読んだことになります。
中心伽藍
お寺のメインともいえる中心伽藍。
中門、五重塔、金堂、講堂が一直線上に並んでいるのが特徴です。
金堂や講堂の側から中門や五重塔を見上げると、背後にあべのハルカスが見えます。
六時堂
江戸時代に建てられた重要文化財・六時堂。
法要や納骨なども行われる場所です。
亀ノ池・石舞台
六時堂の前にある石舞台と、その下にある亀ノ池。
石舞台は4月22日の聖徳太子の命日に行われる法要で雅楽が奉納される場所。
亀ノ池ではたくさんの亀たちが甲羅干しをしている微笑ましい光景を見ることができます。
元三大師堂
魔除厄除や合格祈願の御利益がある元三大師堂。
正月過ぎには大阪中から受験生が訪れる「新春合格祈願護摩供」が行われます。
宝物館
境内にはご紹介しきれなかった見どころもたくさんありますが、宝物館にもぜひ訪れてみてください。
貴重な文化財が多数展示されており、教科書で見たことがあるようなものも収蔵されています。