現存する天守は国内にわずか12しかないことをご存知でしょうか。
長野県にある松本城もそのひとつで、現存天守のなかでも珍しい平城です。
地上五層と地下の6階建てで、現存天守のなかでも比較的規模の大きなお城になります。
背後に控える日本アルプスの山々との対比が印象的で、黒と白のコントラストがはっきりとした天守の外観も何とも言えず美しいです。
堀の水面に映る天守には趣があり、夜にライトアップされた姿も幻想的な雰囲気を醸し出しています。
本記事では、松本城の歴史や見どころについてご紹介していきたいと思います。
現存天守を持つ城のなかでも国宝5城に選ばれている松本城
現存12天守のなかでも国宝に指定されている天守はわずか5つで、松本城はそのうちのひとつに選ばれています。
遺構としての天守が残っているのはもちろん、城の来歴にまつわる資料が残されていることが国宝認定のポイントとなったようです。
そんな国宝の城のなかでも、最も古い歴史を持つ松本城は、長野県の中でも人気の観光スポットになっています。
ここでは、松本城が辿ってきた歴史と現存する天守をはじめとするお城の見どころなど、松本城観光がさらに楽しくなるような情報をお届けできればと思います。
松本城の歴史
松本城の前身は深志城と呼ばれ、島立氏が築き、北信濃攻めの拠点として入城した武田信玄が改修したと考えられていますが、その仔細はあまりわかっていません。
武田信玄の死後、木曽氏を挟んで小笠原氏が入城し、小笠原氏が深志を松本と改めたと言われています。
徳川家康の関東への転封に伴い小笠原氏は古川へ移り、松本には豊臣秀吉の命で石川数正が入りました。
石川数正は長い間徳川家の重臣を務めてきましたが、数正は突如豊臣秀吉に寝返った人物として有名です。
現在の松本城はおおむね数正とその息子・康永親子によってつくられました。
城郭と城下町の大規模な整理を行い、特に数正が文禄の役で亡くなった後はさらにスピードを上げて天守の完成を急いだと言われています。
江戸時代に入ると石川氏は改易のうえ御家断絶を言い渡され、松本城には再び小笠原氏が入ります。
その後も、戸田氏、松平氏、堀田氏、水野氏とさまざまな家が松本城に入りますが、最終的に幕末の松本城を治めたのは、再び松本の地を任された戸田氏でした。
明治維新後は荒廃や再開発が行われますが、さまざまな人々の手によって天守は守り継がれます。
昭和に入り天守が国の史跡や国宝に認定されることでますます保全活動が活発になり、第二次世界大戦後は公園としての整備が進んで現在のような形になりました。
松本城の見どころ
では、現存天守を持つ松本城の見どころについて見ていきましょう。
現存する城にはあまり見られない平城
松本城の特徴は、何と言っても平城であることです。
戦国時代の城は防御に優れた山城が多く、姫路城などに代表される戦国時代後期から江戸時代初期にかけて建てられた城には、丘陵地を利用して守りと交通の便の両方をバランスよく取った平山城が多いのですが、松本城は平地に築かれた平城です。
三重の水濠や三の丸の武家屋敷などで防御を強める構造になっています。
優美な特徴ある天守・櫓
松本城の天守は石川氏の時代に作られたものですが、天守を形成する櫓のうち、辰巳附櫓と月見櫓は松平氏の時代に作られました。
鉄砲への備えもしてあるなど、実用的で少し無骨にも見える大天守や小天守と、戦の無い江戸時代らしい優美な造りの櫓が隣接している姿は不思議としっくりと馴染んでいます。
時代を超えた復号連結型の天守もあまり見かけませんので、これもまた松本城の特徴のひとつと言えるでしょう。
石垣
松本城の石垣には、「野面積み」、「布くずし積み」、「算木積み」の三種類の石の積み方があります。
野面積みと布積みの中間的な積み方である布くずし積みや、後の時代ほどきっちりと石を加工しているわけではない不完全な算木積みからは、松本城が戦国時代と江戸時代の狭間に建てられたという時代背景を見ることができますね。
黒門・太鼓門
本丸御殿へと続く一ノ門と、内堀を渡ったところにある高麗門を総称して黒門と呼んでいます。
一ノ門の瓦は昭和期の天守の大改修で得た瓦を再利用して再建されており、歴代城主を務めたさまざまな家紋の瓦を見ることができる注目スポットです。
二ノ門には控塀や枡形のほか狭間も見ることができ、優美な平城でありながらしっかりと守りを固めていることがうかがえます。
ドラマのロケ地としてもよく使われている太鼓門は、平成に再建されたもの。
玄蕃石と呼ばれる巨石には迫力があります。
本丸御殿・二の丸御殿跡
本丸御殿や二の丸御殿は残っていませんが、地図を見ながら実際に歩くと、当時の大きさがよくわかるかと思います。
まとめ
松本城の歴史や見どころについて解説しました。
貴重な現存天守のひとつであり、美しい外観も魅力的な松本城。
長野県に旅行する際は、ぜひ立ち寄ってみてください。