伊勢神宮などと並んで「一生に一度は行ってみたい」と思う方も多い香川県の金刀比羅宮。
「こんぴらさん」の名称で古くから人々に親しまれてきました。
歴史ある建物や貴重な収蔵品はもちろん、四季折々の自然の美しさも魅力的な県内屈指の観光スポットです。
本記事では、「こんぴらさん」こと金刀比羅宮の歴史と見どころについてご紹介していきたいと思います。
神話の時代から続く「琴平神社」
琴平山の中腹に御本宮がある金刀比羅宮は、古くは「琴平神社」と呼ばれていました。
江戸時代の書物には神話の時代から続く歴史ある神社であるという記述も見られます。
金刀比羅宮がお祀りしている神様のうちの1柱が大物主神です。
大物主神については諸説ありますが、大国主命の和魂で、国づくりの神話に深い関連があると言われています。
時代が下るにしたがって仏教と日本古来の神々の信仰が混ざった「本地垂迹説」が定着するようになり、「金刀比羅大権現」と改称したそうです。
当時瀬戸内海に浮かぶ島であった琴平山に大物主神が行宮を作ったのが琴平神社のはじまりとされており、そのため大物主神は今でも海の神様として親しまれています。
金刀比羅宮と崇徳天皇
金刀比羅宮に祀られているもう1柱の神様が崇徳天皇。
「保元の乱」の際に境内の「古籠所」に参籠したと言われており、讃岐国(現在の香川県)で崩御ののち、金刀比羅大権現に合祀されました。
庶民から武家、公家とさまざまな身分の人々から信仰を集めていった金刀比羅宮ですが、やはり朝廷との結びつきが強く、江戸時代には毎年春秋の2回、御撫物(おなでもの・祈祷などの儀式に使用する穢れを除くための呪物)が下賜されていたそうです。
江戸時代の旅行ブームと金刀比羅宮
戦乱の世が終わり平和な江戸時代に入ると、庶民のあいだで空前の旅行ブームが巻き起こります。
特に湯治場や寺社仏閣は関所の通行許可が下りやすいことから多くの人々が訪れる人気の観光スポットになっていました。
古くから信仰を集める金刀比羅宮にも全国からたくさんの参拝客が押し寄せ、「こんぴら参り」は一生に一度は行きたいところとして人々に知られるようになりました。
現在は外国人も多く訪れる国際的な観光名所になりつつあります。
金刀比羅宮の見どころ
ではさいごに、金刀比羅宮の見どころをご紹介していきたいと思います。
桜馬場西詰銅鳥居(さくらのばばにしづめどうとりい)
門船町を抜けて大門をくぐり石畳の上をしばらく歩くと、石造りの大きな鳥居が見えてきます。
桜の馬場はその名の通り春には桜のトンネルをくぐることができる美しい場所。
付近には「今治造船」が寄進したスクリューや神馬が飼育されている厩があり、石段を上る道中にもたくさんの見どころがあります。
特別に境内で販売が許可されている「五人百姓」と呼ばれる飴屋で「加美代飴」も購入してみてください。
1368段の石段
境内の石段は何と1368段もあります。
御本宮までの道のりには785段の石段があり、かなり体力を使いますが、道中にはさまざまな見どころがあるので適宜休憩をはさみながらのんびりと登っていきましょう。
こんぴら狗
鳥居のそばにある犬の銅像は、飼い主の代わりにこんぴら参りを果たした犬たちの姿をかたどっています。
こんぴら参りが大流行した江戸時代に、何らかの理由でお参りすることができない人々が飼い犬に代参させ、道中の人々はそれを温かく見守りながらサポートするという風習がありました。
旭社
御本宮もそろそろ近づいてきたかというくらいの場所にある旭社。
天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)をはじめとする神々を祀っており、江戸時代後期に40年がかりで造られたお社は国の重要文化財にも指定されています。
御本宮
800段近い石段を上った先にやっと見えてくる御本宮。
さまざまなことにご利益があると言われており、古くから人々の信仰の拠り所となってきました。
近くの讃岐平野や讃岐富士(飯野山)を望む展望台からは、天気が良ければ瀬戸内海や瀬戸大橋も見渡すことができます。
御本宮の奥には白峯神社、厳魂神社(奥宮)と続きますので、体力に余裕のある方はせっかくですのでさらに先にも進んでみてください。
表書院
往きはひとまず御本宮を目指すという方が多いかと思いますが、帰りは境内のほかの建物も覗いてみてはいかがでしょうか。
表書院は、宝暦・天明期に活躍した円山応挙が手掛けた障壁画が展示されています。
当時の一般的な浮世絵は被写体の特徴を強調して描くことが多いのに対して、応挙の絵は写実的な画風が特徴的です。
高橋由一館
近代日本を代表する画家である高橋由一は、狩野派を学んだ経歴も持つ日本初の西洋画家と言われる人物。
「豆腐」や「琴平山遠望図」など、27作品が展示されています。
門前町
お参りの後は、門前町でお食事やショッピングを楽しみましょう。
老舗の和菓子屋さんからおしゃれなカフェまで、さまざまなお店が充実しています。
旧金毘羅大芝居(金丸座)
門前町を抜けると見えてくる芝居小屋が金丸座。
江戸時代のこんぴら参りブームを機に常設されるようになった歌舞伎の芝居小屋がもとになっており、現存する日本最古の芝居小屋と言われています。