奈良県橿原市にある橿原神宮。
初代・神武天皇とその妻・媛蹈韛五十鈴媛皇后が祀られている神社です。
創建は明治時代と、比較的新しい神社ですが、神話や皇族との関係が深く、歴史的にも重要な場所に建てられています。
静けさが漂う境内は四季折々の自然が美しく、散策しながら自分や身の回りを見直すのにもちょうど良いスポットです。
本記事では、橿原神宮にまつわる神話や歴史と、その見どころについてご紹介していきたいと思います。
自然豊かな広々とした境内
橿原神宮は、甲子園球場13個分もの広大な敷地を持つ神社です。
本殿から授与所を抜けて少し歩いたところには、奈良県内でも有数の野鳥観察スポットである「深田池」があります。
遊歩道も整備されているので、お時間のある方は湖畔を歩きながら鳥たちを観察してみてください。
境内の奥の方にある「畝傍山」は、「万葉集」にも登場する山。
200メートルほどの高さがあり、北参道にある登山道入口から山頂までは歩いて30分ほどかかりますが、耳成山と香具山を望む山頂からの眺めは圧巻です。
四季折々の自然と社殿が美しいコントラストを生み出している境内は、散策するだけでも雑念が消え去り、心が研ぎ澄まされるような気持ちになります。
ゆったりと境内を散策して、心を落ち着けて自分を見直す旅には最適な場所です。
神武天皇と橿原の地
神武天皇とその妻をお祀りする橿原神宮は、明治に入ってから民間の有志により、神武天皇が即位したとされる場所に創建された神社です。
この項では、神武天皇が橿原の地で即位するまでのいわゆる「神武東征」の物語をご紹介したいと思います。
九州高千穂の宮に住んでいた神日本磐余彦火火出見天皇(かむやまといわれひこほほでみのすめらみこと・のちの神武天皇)は、ある日豊かな国づくりを目指して東へと船で旅立ちました。
日本の中心である大和国を目的地としていましたが、それを目前とした孔舎衛坂というところで、豪族に襲われ一旦船へ退却します。
このとき、神武天皇は兄を亡くしてしまいました。
今度は熊野の地に上陸し、天照大御神の遣い・八咫烏の助けも得つつ土着の国つ神(くにつかみ)たちを従え、兄の仇も討って大和を平定。
苦難の末、「畝傍山」の東の麓・現在橿原神宮のある橿原宮で最初の天皇として即位しました。
橿原は日本のはじまりと深く関わりのある土地なのです。
橿原神宮が創建された経緯
橿原神宮が創建されたのは、「日本書紀」で神武天皇が即位したとされる年号から逆算して2500年以上先の明治23年のこと。
明治に入って皇統の権威・関心が高まったこともあり、民間有志で日本はじまりの地・橿原宮に神武天皇をお祀りする神社を建てようという動きが起こります。
これに感銘を受けた明治天皇は、京都御所の内侍所(ないしどころ・宮中で天照大神をお祀りしていた場所)と神嘉殿(しんかでん・新嘗祭が行われていた場所)を、それぞれ御本殿、拝殿として下賜されました。
こうして明治23年4月2日に創建された橿原神宮。
日本のはじまりと深い関わりのある神聖な場所であり、開運・招福や延命・長寿にご利益があると言われています。
神武天皇即位からちょうど2600年後にあたる昭和15年には、国主導のもと宮域が拡大されて現在のような規模にまでなり、周辺の駅なども整備。
2月11日の紀元祭(建国記念の日)には「紀元二千六百年奉祝紀元節大祭」が執り行われ、多くの参拝客でにぎわい、昭和天皇も御親拝されました。
皇族の祖がお祀りされている橿原神宮では、御製(ぎょせい・天皇がお詠みになった歌)や御歌(みうた・皇族がお詠みになった歌)をもとに作舞されており、神事や結婚式などで奉奏されています。
橿原神宮の見どころ
ではさいごに、橿原神宮の見どころについてご紹介していきたいと思います。
参道・鳥居
橿原神宮へ参拝する際にまず目に入るのが、高さ10メートルほどもある大きな鳥居。
神社の鳥居と言えば朱色を思い浮かべる方も多いかと思いますが、橿原神宮は皇統と深い関わりのある神社なので、伊勢神宮などと同様に素木造りです。
本殿
前述のとおり、京都御所の内侍所を明治天皇より下賜された本殿。
国の重要文化財にも指定されており、神武天皇が崩御されてから2600年の節目に行う神事に合わせて葺き替えられた檜皮が美しい建物です。
幣殿
祝詞を奏上する幣殿は、昭和14年に造られたもの。
毎年建国記念の日に行われる「紀元祭」では、御幣物を奉献し、御祭文を奏上します。
拝殿
拝殿は、諸祭典や結婚式が行われる内拝殿と、参拝客が訪れる外拝殿があります。
どちらも昭和14年に造られたもので、近代に入ってから編み出された神社建築様式である「二重拝殿型」が採用されている拝殿です。
さざれ石
国家・君が代にも詠われているさざれ石。
実際にどのようなものかを見たことがある方は意外にも少ないのではないでしょうか。
小さな石同士の隙間に炭酸カルシウムが入り込んで固まった大きな塊となっています。
あまり見る機会がないものなので、参拝の際にはぜひご覧になってみてください。