京都府と滋賀県の県境に位置する比叡山。
そこに今から約1200年も前に開かれた延暦寺は、今もなお人々の信仰を集める大寺院です。
日本に存在する宗派の祖の多くは比叡山延暦寺で修業し、それぞれの悟りを開いていったと言います。
20世紀末には世界遺産にも登録され、他宗教にも寛容な性質から毎年世界中の諸宗教を招いて「比叡山宗教サミット」を行うなど、今や世界中に開かれた稀有なお寺です。
貴重な文化財も多く有する比叡山延暦寺には、ぜひ一度訪れてみたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、比叡山延暦寺の歴史や見どころをご紹介していきたいと思います。
日本仏教の母山・比叡山
天台宗の総本山であり、日本仏教のさまざまな宗派を生み出した比叡山。
比叡山延暦寺と聞くと、比叡山という山の上に延暦寺というお寺がひとつあるのかと想像してしまいますが、東塔エリア、西塔エリア、横川エリアという3つのエリアを総称して比叡山延暦寺と呼んでいます。
特に横川エリアはほかの2つのエリアから少し離れた場所にあるので、1日ではとてもまわりきれません。
観光する際には、どこのエリアを中心に参拝するのかをあらかじめ決めておくと良いでしょう。
また、比叡山延暦寺は人々が紡いできた信仰や歴史を物語る文化財だけでなく、美しい自然にも恵まれた観光スポット。
琵琶湖や京都市内を見下ろすことができるので、自然散策に訪れるのも楽しいかと思います。
最澄と比叡山
天台宗を開いた最澄は、今の滋賀県大津市のあたりを治めていた一族のもとに生まれ、仏教への信仰が篤い両親の影響もあって10代で出家しました。
東大寺で戒律を授かった彼が修行の地に選んだ場所こそ、比叡山だったのです。
今は荘厳な伽藍が建ち並ぶ延暦寺ですが、当然のことながら当時は山深く木々が生い茂った場所にすぎません。
最澄が修行のために建てた「一乗止観院」というお堂は、やがて「根本中堂」となり、比叡山の中心になっていきます。
「根本中堂」がある東塔エリアは最も観光地として整備されているエリアでもあるので、初めて比叡山に行くという方はまず東塔エリアを参拝してまわると良いかもしれませんね。
比叡山にこもり修行を続けた最澄は、やがて天台教学に興味を持ち始めます。
天台教学の本場・中国の天台山で天台教学を学び、その後禅や密教の教えも受けた最澄は帰国後、朝廷の許可を得て天台宗を開き、多くの弟子教え導きました。
晩年、最澄は当時奈良でしか受けることが出来なかった正式な戒律を、比叡山でも受けられるようにすることを強く望みます。
彼の生前は奈良の僧侶たちの反対に遭い叶わなかったものの、死後7日後に願いは聞き届けられ、比叡山でも戒律が受けられるようになりました。
最澄の死を惜しんだ嵯峨天皇は、最澄が比叡山で修業を始め、お堂を築いたころの「延暦」という年号を与え、「延暦寺」という名を授けたのです。
東塔エリアの見どころ
ここからは、比叡山延暦寺の見どころをエリア別にご紹介していきたいと思います。
まずは比叡山全体の中心地である東塔エリアから。
見どころが多く、範囲も広いエリアなので日帰りで観光したいという方は東塔エリアだけの観光でも十分に楽しめるかと思います。
まずは1200年間守り継がれてきた「不滅の法灯」がある「根本中堂」に参拝しましょう。
比叡山の総本堂であり建物は国宝、回廊は国の重要文化財です。
そのすぐ近くにある「大講堂」には、比叡山延暦寺にゆかりのある諸宗派の開祖たちの木像が祀られており、いかに比叡山が日本の仏教の発展に欠かせない場所であるのかがわかります。
全国に6か所ある宝塔の中心である「法華総持院東塔」や学問を司る文殊菩薩を祀った「文殊楼」も必見です。
西塔エリアの見どころ
続いては「釈迦堂」がある西塔エリア。
東塔エリアからは徒歩で30分、シャトルバスで5分ほどの場所にあります。
秀吉が三井寺から移築した「釈迦堂」には御本尊の釈迦如来を安置しており、比叡山延暦寺の中で最も古い建物であると言われています。
弁慶がふたつのお堂を繋ぐ廊下を肩にかけて担ったことからその名が付いた「にない堂」。
左手にある阿弥陀如来をご本尊とする常行堂と、右手にある法華三昧を修す普賢菩薩を祀った法華堂が廊下で繋がった少し珍しい造りをしています。
また、最澄が眠る「浄土院」も西塔エリアにあります。
横川エリアの見どころ
さいごは、ほかのふたつのエリアからは少し離れた場所にある横川エリア。
西塔エリアからは徒歩で90分、シャトルバスで10分ほどの場所にあります。
紅葉が美しい「横川中堂」は、秋だけでなく季節ごとにさまざまな表情を楽しめる非常に美しいお堂。
舞台造りの建築には昔の人の知恵を感じられます。
そこから少し歩いたところにある「元三大師堂」はおみくじ発祥の地としても知られており、普通のおみくじではなくお坊さんに人生相談をして助言をもらうようなスタイル。
人生の岐路に立たされているときや、何か大きな悩み事がある際にはぜひ訪れてみてください。