夏目漱石の名作「坊ちゃん」の舞台となったことで広く知られている道後温泉。
愛媛県の県庁所在地である松山市内にあり、ほかの観光地とのアクセスも良いことからも観光客に人気の温泉地です。
その歴史は3000年にもわたると言われており、長きにわたり人々から愛されてきました。
本記事では、道後温泉について、その歴史や外湯の魅力などを中心にご紹介していきたいと思います。
3000年の歴史を持つ国内屈指の名湯
「古事記」や「日本書紀」にも登場する道後温泉は兵庫県の有馬温泉や和歌山県の白浜温泉などと並ぶ日本最古の温泉であるとされており、その歴史は3000年にも及ぶと言われています。
古くは「伊予の温泉(いよのゆ)」や「熟田津の温泉(にきたつのゆ)」などと呼ばれていましたが、大化の改新によって国府が置かれるとそこを中心に道前、道中、道後という名称が使われるようになります。
このように国府との位置関係から、この温泉はやがて「道後温泉」と呼ばれるようになりました。
道後温泉にまつわる伝承・逸話
長い歴史を持つ道後温泉には、さまざまな伝承や逸話が残されています。
ここでは、知っていれば観光がもっと楽しくなるような道後温泉にまつわる伝承や逸話をいくつかピックアップして見ていきましょう。
白鷺の伝説
道後温泉のシンボルマークにもなっている湯玉。
お湯のしずくや温泉が湧き出ている様子を表していると言われており、この湯玉を発見したのが一羽の白鷺であるという伝承があります。
足に傷を負った白鷺が岩間から湧き出る温泉を見つけ、毎日通って傷口を浸したところ、みごとに傷が治ったというものです。
この岩間はいつしか「鷺谷」と呼ばれるようになり、人々は記念に石を置きました。
現在その石は道後温泉駅前の放生園に移して保存されているので、ぜひ見に行ってみてください。
玉の石の伝説
「伊予国風土記」に記載されている神々にまつわる伝承です。
大国主命(おおくにぬしのみこと)が重病の少彦名命(すくなひこのみこと)を救うために道後温泉に入れてやったところ、病はたちどころに快癒したというもの。
快復した少彦名命は石の上で「ましましいねたるかも(しばらく寝ていたようだ)」と叫んで舞ったとの記述があり、その石が「玉の石」です。
「玉の石」は道後温泉本館の北側にあり、少彦名命の足跡に柄杓でお湯をかけて祈ると願いが叶うと言われています。
聖徳太子と道後温泉
法興六年(596)、聖徳太子が道後温泉に訪れた際に詠んだとされる詩が石碑になって残っています。
聖徳太子のほかにも多くの皇族や貴族が道後温泉に訪れていたようです。
なかでも額田王が詠んだ「熟田津に 船乗りせむと 月待てば 潮もかなひぬ今は漕ぎ出な」は有名。
平安時代の民謡にも道後温泉は登場し、当時の文学作品の最高傑作である「源氏物語」にも道後温泉の描写が見受けられます。
正岡子規・夏目漱石と道後温泉
松山出身の俳人である正岡子規と、道後温泉を舞台にした名作「坊ちゃん」の作者である夏目漱石。
日本の近代文学の礎を築いたふたりは、学生時代から親交があることが知られています。
正岡子規に関する資料が展示されている「子規記念博物館」は、正岡子規の足跡について学ぶことができる道後温泉内にある施設です。
3階にはふたりが松山で同居した「愚陀仏庵」の一部が復元されており、彼らが切磋琢磨した様子を感じ取ることができます。
夏目漱石はこの「愚陀仏庵」で小説「坊ちゃん」を書き上げました。
まもなく保存修理工事が完了する道後温泉本館
ここからは、道後温泉の外湯についてご紹介していきたいと思います。
1894年に造られた道後温泉本館は、木造三層楼の和洋折衷の建物。
増改築を繰り返した建物には独特の雰囲気があり、映画「千と千尋の神隠し」のモデルのひとつになったと言われています。
2019年1月から行われている保存工事も2024年12月には完了する予定で、現在も現役で公衆浴場として使われている貴重な文化財です。
カジュアルな公衆浴場・椿の湯
1953年に誕生し、1984年に改築された本館の姉妹湯で、地元の人も日常的に入湯している比較的カジュアルな公衆浴場である椿の湯。
白壁の蔵屋敷を模したモダンな造りで、本館とはまた違った魅力を持つ建物です。
「太古の道後」をテーマにした道後温泉の新たな外湯・飛鳥の湯
2017年に誕生した道後温泉の新たな外湯である飛鳥の湯。
「太古の道後」をテーマに、その名の通り飛鳥時代をモチーフに伝統工芸やアートを融合させたおしゃれな浴場です。
細部にまでアートが施されているので、エントランスや浴室だけでなく、休憩室や廊下、階段などにも注目して過ごしたいですね。
聖徳太子が道後温泉の椿を讃えたという逸話にちなんだ中庭の「椿の森」も素敵です。
道後ハイカラ通り(道後商店街)
温泉で疲れを癒した後は、浴衣姿で道後ハイカラ通り(道後商店街)をそぞろ歩きするのが定番。
お土産選びをしながら、愛媛名物のみかんスイーツや鯛めしを堪能してみてください。