県土の6分の1を占める琵琶湖の固有種と、昔から途切れることなく紡がれてきた農村文化が根付いている滋賀県。
関西地方の中でも特に農業や淡水漁業が盛んで、米、野菜、豆、芋など、ほとんどのものを県内で自給することができると言われています。
「鮒ずし」をはじめ、独特な食文化が受け継がれているのもこの地域の特徴です。
本記事では、滋賀県の食文化やご当地グルメについてご紹介していきたいと思います。
琵琶湖の固有種と脈々と受け継がれてきた農村文化
約60種もあると言われている固有種。
琵琶湖の固有種は保全されているだけでなく、昔から人々の食卓に上がり大切に食べられてきました。
固有種である「ホンモロコ」を串焼きにして泥酢をかけた「焼きもろこのどろ酢」や、「ビワマス」を使った料理など、淡水魚を使用した郷土料理がたくさんあります。
「ビワマス」は秋の産卵期に雨が降った後現れることから、「あめのい」や「あめのう」と呼ばれることもあり、「ビワマス」を米の上に乗せて丸ごと炊いた「あめのいおご飯」は家族や親戚で集まって食べる郷土料理です。
また、滋賀県の郷土料理と言えば「ふなずし」。
発酵食品の中でも強いにおいと独特の風味から倦厭されがちですが、とても身体によく古くは整腸剤代わりに食べられることもあったのだそう。
フナだけでなく、ウグイ、ハス、ホンモロコ、アユなど、さまざまな魚を発酵させます。
鮒ずしは県全域で昔から食べられているものですが、地域によって味付けも異なるのだとか。
一般には北部は塩味が強く、南部は甘味が強いと言われています。
お土産などでもらった「鮒ずし」があまり美味しく感じられなかった方も、違う地域のものを食べれば案外美味しく感じるのかもしれません。
ここからは滋賀県を、湖北エリア、湖東エリア、湖南エリア、湖西エリアの4つに分けて見ていきたいと思います。
湖北エリア
琵琶湖の北東部に位置する湖北エリア。
冬は積雪が多く、余呉のあたりでは5メートルも積もることもあるのだとか。
冬は雪に閉ざされてしまうこの地域では、保存食が発達しました。
「白菜のたたみ漬け」や、山菜を干したり塩漬けにしたもの、魚を発酵させたものなど、バリエーション豊かな発酵食が伝わっています。
福井県の敦賀に隣接しているため魚介類も手に入ったようで、焼きサバを煮て煮汁を絡めた「鯖そうめん」という郷土料理はお祭りなどの際に食べられていたそうです。
「焼きさば寿司」も定番のおもてなしメニュー。
冬は「鴨鍋」も名物で。
シベリアから琵琶湖へ越冬に来る天然の鴨は、身が引き締まっており脂身も甘いのが特徴です。
湖東エリア
近江商人ゆかりの地である湖東エリア。
農村地帯である近江の次男や三男は田畑を与えられず、仕方なく消火に丁稚奉公へ行ったり行商に出ていたりしたことから、商人文化が根付いたそうです。
中山道や北國街道といった街道沿いにあり、交通の要所であったことも行商が栄えた由縁であろうと考えられます。
近江の発酵食に文化は、近江商人によって全国に広められ、遠いところだと山形の方でも滋賀県の食文化の影響を受けているものがあるようです。
「丁稚羊羹」、「赤こんにゃく煮」、「丁子麩のからしあえ」など、近江商人と関わりの深い郷土料理が伝わっています。
和風ベースのスープが特徴的な「近江ちゃんぽん」や近江米と地元の食材をふんだんに使用した「ひこね丼」といった個性的なご当地グルメにも注目。
観光の合間のおやつには、細く伸ばした餅でこしあんを包んだかわいらしいお菓子「小糸餅」がぴったりです。
湖南エリア
京都と隣接している湖南エリア。
古くから都との繋がりが強く、京の華やかな食文化に絶えず影響を受けてきたエリアです。
稲作や畑作が盛んで、古くから都へ米や野菜を運んでいた地域です。
お正月のお雑煮やお祭りなどで振る舞われる「ちらし寿司」、「棒鯖鮨」などは京都の影響を深く受けていますが、もちろん「鮒ずし」など、滋賀県らしい味もしっかりと根付いています。
また、信楽焼で有名なこの地域のもうひとつの名産が「朝宮茶」。
9世紀初頭に最澄が中国から茶を持ち帰ったことをきっかけに栽培が始まり、このあたりは日本最古のお茶の生産地であると言われています。
お茶そのものはもちろん、最近は「朝宮茶」を使用した抹茶スイーツなども人気です。
湖西エリア
さいごは湖北地域と同様に雪深い湖西エリア。
山が多く平野部が少ないので、棚田での農業が盛んです。
この地域で食べられている「畑漬け」は、棚田で採れた野菜を塩と唐辛子で漬けています。
この地域でも厳しい冬を越すために考案された保存食が多く伝えられており、若狭から京へと繋がる「鯖街道」の通り道であることから、フナではなくサバを発酵させて食べることが多いそうです。
近江牛や琵琶湖の魚をすき焼きにした「じゅんじゅん」もこのエリアの郷土料理。
関東風に割り下を使ったり、ほかの関西の地域のように砂糖で肉を炒めたりするのではなく、まずはお出汁で炊いていくので、とてもやさしい味わいに仕上がります。