「食い倒れ」のまち・大阪。
古くから物流の拠点として栄えた大阪には、全国各地の食材が集まってきました。
商人のまちであり、無駄を嫌う大阪人ならではの「始末の精神」と食へのこだわりが生んだ大阪の食文化は、今や日本全国だけでなく世界中にもその名を轟かせています。
大阪は「粉もん」があまりにも有名ですが、それ以外にも魅力的なご当地グルメが詰まったまちです。
本記事では、大阪府の食文化やご当地グルメについて解説していきたいと思います。
天下の台所・大阪
海に面し、肥沃な土地を持つ大阪は、古代には難波京が置かれるなど古くから栄えていましたが、現在のような商都のイメージが定着したのは豊臣秀吉の時代から。
秀吉が大阪城を本拠地として以来、大阪は物流の拠点として整備され、徳川幕府の誕生に伴い政治の中心が江戸に移ったのちも大阪は商業の拠点として栄えました。
特に濃厚な昆布とカツオの合わせ出汁をベースとした「出汁の文化」が根付いており、「お好み焼き」や「たこ焼き」に代表される「粉もん」をはじめ、さまざまな食べ物に出汁が使われています。
にぎやかで華やかな大阪市内の印象が強いかもしれませんが、大阪府はエリアによってさまざまな食文化が根付いてきました。
ここでは大阪府を、大阪市内、北摂エリア、河内エリア、泉州エリアの4つに分けて見ていきたいと思います。
大阪市内
まずは「これぞ大阪」と他府県の方が想像する大阪市内から。
関西、ひいては西日本の経済の拠点である大阪市は、ビジネスでの出張から観光客まで、毎年多くの人々が訪れるまちです。
「お好み焼き」や「たこ焼き」を取り扱うお店は市内に限らず府内のいたるところにお店があり、それぞれがそれぞれにこだわりを持っていますが、特に大阪市内で注目したい「粉もん」は「いか焼き」。
大阪で一般に「いか焼き」というと、小麦粉ベースの生地にイカの切り身を入れて薄く焼き、ソースを塗って巻いたものを指します。
デパ地下などでも売られており、府民の身近なファストフードのひとつです。
関西の押し寿司文化の代表ともいえる「ばってら」や「てっさ」「てっちり」などのフグ料理も、府内全域で食べられていますが、市内には有名店も多く存在します。
大阪の「始末の精神」が生んだ郷土料理と言えば「船場汁」。
鯖のアラなど、普通は捨ててしまうようなところから出汁を取って大根を炊いた商家のまかない料理です。
「どて焼き」や「関東煮(かんとだき・おでんのこと)」の定番具材である「牛すじ」も、もとは捨ててしまうような部位を料理に使用しています。
食文化から垣間見える商人気質な大阪人の性格が浮かび上がって来るようです。
北摂エリア
大阪府北部に位置し、兵庫県や京都府と隣接する北摂エリア。
主に淀川の北側を指すことが多く、閑静な住宅街や里山、自然公園などで構成された比較的のどかな地域です。
農業も盛んで、「吹田慈姑(すいたくわい)」、「服部越瓜(はっとりしらうり)」、「三島独活(みしまうど)」、「鳥飼茄子」などの「なにわ伝統野菜」の栽培も盛ん。
山村で栽培されている寒天を使用した、一般的なようかんと比較すると甘さ控えめな「丁稚ようかん」が名物になっています。
また、現在の私鉄の在り方のパイオニアともいえる阪急電鉄の沿線地域が多くを占める北摂エリアは、府内でも少し上品なまちというイメージです。
おしゃれなカフェやレストランが多く、市内からのアクセスも良いので、ランチやお茶などに少し足を延ばしてみても良いかもしれません。
河内エリア
東大阪や八尾など、中小の町工場が軒を連ねる河内エリア。
奈良県と隣接するこのエリアでは、古墳や遺跡も多く発掘されており、古代から大きく発展していたことがうかがえます。
ラグビーのまちでもある東大阪には、かつてカレー工場もありました。
その両方のイメージが合わさってできたのが「東大阪カレーパン」。
ラグビーボール型の揚げパンの中には、どこか懐かしい味わいのカレーが入っています。
農村文化が根付くこのエリアの郷土料理が「あかねこ」。
皮ごと挽いた小麦ともち米を練って作ったもので、田植えの後に豊作を祈願して食していました。
現在は市内に向けた野菜の近郊栽培が盛ん。
江戸時代には街道の要所として栄え、現在も歴史的な町並みが保全されている高野街道沿いには老舗の酒蔵もあります。
羽曳野市には自家農園を有する老舗のワイナリーもあり、予約すれば見学も可能です。
泉州エリア
さいごは海に面し、和歌山県と隣接する泉州エリア。
府内全域で食べられている鱧料理ですが、特にこの地域では身近な食材。
鍋や天ぷらでいただくことが多い、夏の風物詩です。
また、全国的に有名な「泉州水なす」が栽培されているのもこの地域。
水なすのみずみずしさを損なわないよう、浅漬けにして食べるのが定番です。
古漬けにする場合は、海老じゃこ(小海老)と炊いた「じゃここうこ」という郷土料理にすることが多いそうです。