白桃、マスカット、ブドウなど、フルーツ大国として知られる岡山県。
古くから中国・四国地方の交通の要所であり、周辺地域の影響を受けながらも独自の文化を築き上げてきました。
波が穏やかで温暖な瀬戸内海に面しており、漁船漁業だけでなく牡蠣や海苔の養殖も盛んです。
自然に恵まれ、変化に富んだ地形を持つ岡山県の食文化は、まさに日本の食文化の縮図。
本記事では、岡山県の食文化やご当地グルメについてご紹介していきたいと思います。
農業・漁業が盛んな晴れの国
中国地方の南東部に位置する岡山県。
「晴れの国」と呼ばれるほど晴れの日が多く、豊富な水源と肥沃な土地を背景にフルーツの栽培や稲作が盛んです。
穏やかな瀬戸内海の海に面し、漁業や養殖も盛ん。
それらを使用した郷土料理やご当地グルメがたくさんある食の宝庫です。
ここでは岡山県を、沿岸エリア、備前エリア、備中エリア、美作エリアの4つのエリアに分けてご紹介していきたいと思います。
沿岸エリア
まずは瀬戸内海に面した沿岸エリアから。
小さな島々が点在し、穏やかな波と段々畑が広がるさまは、まさに日本の原風景。
1934年に日本で最初の国立公園として指定された瀬戸内海沿岸地域は、島国・日本の心のふるさととも言えるのかもしれません。
吉井川、旭川、高梁川の栄養豊富な三大河川が流れ込む海は漁場としても優れており、「いしもちじゃこ」、「アキアミ」、「ままかり」といった瀬戸内海の海の幸が水揚げされています。
「いしもちじゃこ」と呼ばれる小魚は「いしもちじゃこの落とし揚げ」に、サクラエビの仲間である「アキアミ」は「あみとだいこんの煮付け」という郷土料理にすることが多いそうです。
関東ではサッパと呼ばれることもある「ままかり」はニシンの仲間。
秋ごろに水揚げされる脂の乗った「ままかり」は、酢漬けや刺身、塩焼きなどにするほか、ハレの日には「ままかりずし」にしてお祝いします。
また、岡山の魚と言えばサワラ。
「サワラの値段は岡山で決まる」と言われるほどで、脂の乗った赤身は刺身にすると絶品です。
備前エリア
兵庫県と隣接する備前エリア。
県庁所在地の岡山市があり、県政の中心となっているエリアです。
お祝い事やお祭りの際に振る舞われる「まつりずし」は「備前ずし」や「岡山ずし」とも呼ばれる岡山県の代表的な郷土料理。
岡山県では地域によってさまざまなばら寿司が伝承されており、ばら寿司はハレの日には欠かせないものになっています。
ギンブナを細かく刻んで野菜などとともに醤油やみりん、出汁で煮込んでご飯にかけた「ふなめし」は、岡山の冬の郷土料理。
川魚特有の臭みのあるフナですが、冬は比較的食べやすくなるそうで、好みは分かれるものの地域の味という感じのする一品です。
少し変わったご当地グルメには、「とんかつラーメン」というものがあります。
その名の通りラーメンにとんかつを載せたもので、ボリューミーで食べ応えのあるご当地ラーメンです。
また、県の中心街である岡山駅周辺には、フルーツ大国・岡山の新鮮な果物を贅沢に使ったフルーツパフェのお店が軒を連ねます。
スイーツ好きな方は、ぜひ新幹線の待ち時間などに訪れてみてください。
備中エリア
岡山県西部に位置する備中エリア。
江戸幕府の直轄地・天領であった倉敷は、今も歴史的な街並みが残されていることで有名で、毎年多くの観光客が訪れます。
南は瀬戸内海に面し、北には中国山地がそびえる自然豊かなエリアです。
北部の稲作が難しい地域では、古くから蕎麦などの雑穀の栽培が盛んでした。
醤油ベースの鶏ガラの出汁で野菜や豆腐を煮込んだけんちん汁を蕎麦にかけた「けんちんそば」は冬にぴったりな郷土料理です。
大陸から持ち込まれ、飢饉に備えて栽培されていた「かきたび(モロコシキビ)」もこの地域でよく食べられていた穀物のひとつ。
「かきたび」を団子状にして食べやすくした「たかきび団子汁」は、飢饉を見越した先人たちの知恵が感じられます。
また、高梁市は国内では珍しい紅茶の産地。
天空の城・「備中高梁城」の霧深い気候が紅茶の栽培に適しており、外国産に比べてほのかに甘くまろやかな口当たりが特徴です。
日持ちがしますので、お土産としても喜ばれます。
美作エリア
県北部に位置する美作エリア。
美作国は「続日本紀」のなかで確認できるほど長い歴史を持っているエリアでもあります。
新鮮な魚が手に入りにくい内陸の山間部では、塩漬けのサバの棒寿司である「鯖寿司」がごちそうでした。
秋まつりや田植えの後にたくさん作って近所で振る舞う習慣もあったようです。
梅雨明けに豊作を祈って食べられる「けんびき焼き」は農作業に関連した年中行事に沿った人々の永い営みが感じられる郷土料理。
小麦粉を捏ねた生地で餡を包み、みょうがの葉で包んで焼いたもので、夏バテ防止などのために食べられていたようです。