九州の最南端に位置する鹿児島県。
温暖な気候と山海の豊かな自然に恵まれ、火山活動が盛んな桜島など、独自の地形も多く持つ個性豊かな県です。
古くから南方の島々や大陸との交易が盛んで、独自の食文化が育まれ、個性豊かな郷土料理やご当地グルメがたくさんあります。
また、「かごしま黒豚」、「鹿児島黒牛」、地鶏など、畜産業が盛んであることを背景に肉料理も豊富です。
本記事では、鹿児島県の食文化やご当地グルメについてご紹介していきたいと思います。
豊かな自然と独自の文化に育まれた個性豊かな食文化
霧島山、桜島、開聞岳といった活火山を有し、太平洋や東シナ海に面した鹿児島県。
火山灰が降り積もった独自の地形や盛んに行われた交易などから育まれた独自の文化が、個性豊かな食文化を生み出してきました。
代表的な郷土料理である「さつま揚げ」は、沖縄の「チキアギー」をルーツに持ち、鹿児島に根付いていったもの。
ほかにも中国の料理と似たような豚肉料理が伝わっているなど、国際色豊かな食文化が垣間見えます。
鹿児島県は「かごしま黒豚」や「鹿児島黒牛」といった肉が美味しいことでも有名。
とんかつ、しゃぶしゃぶ、せいろ蒸し、焼き肉など、さまざまな食べ方で楽しむことができます。
また、鶏の飼育が盛んな宮崎県や鹿児島県では鶏肉を生食で食べる文化があり、新鮮な鶏肉が手に入るところでは鹿児島の甘い醤油をつけていただく「鶏刺し(とりさし)」があります。
熱した溶岩石で鶏肉や豚肉・牛肉を焼いて食べる「溶岩焼き」も人気です。
手軽に食べられるご当地グルメとしては「鹿児島ラーメン」が有名。
博多ラーメンや熊本ラーメンとは違い、スープが白濁していないのが特徴。
お通しのような感じで大根の酢漬けやたくあんが出されるのも鹿児島のラーメン屋ならではです。
ほかにも鹿児島県には、エリアごとにさまざまな美味しいものがあります。
ここでは鹿児島県を、薩摩エリア、姶良・伊佐エリア、大隅エリア、離島エリアの4つに分けて見いきたいと思います。
薩摩エリア
まずは県庁所在地である鹿児島市を含む薩摩エリアから。
南方、大陸、そして本州の文化が入り混じって独自の食文化を形成しており、特に薩摩藩を治めた島津家の居城があった鹿児島市中心部では武家由来の郷土料理も伝えられています。
ご飯に「灰汁持ち酒」を混ぜ込んで発酵させた「酒ずし」は島津家の宴会で余ったご飯に余ったお酒をかけて一日置いて食べたところ、良い具合に発酵していて美味しかったことから食べられるようになったと言われている郷土料理。
現在はタイ、エビ、イカ、さつま揚げなどを載せた豪華な晴れの日の料理になっています。
南九州市では「知覧茶」の栽培が盛ん。
爽やかな香りとまろやかな甘みが特徴です。
また、鹿児島県発祥の甘くて冷たいスイーツと言えば「白くま」。
かき氷に練乳、果物の缶詰、小豆などを載せた見た目も涼やかでかわいらしいご当地グルメ。
通年で提供しているお店もありますが、やはり夏の鹿児島で南国気分とともに味わうのがおすすめです。
ほかにも、武士の二本差しに見立てて竹串を2本刺した「両棒餅(ぢゃんぼもち)」というみたらし団子も人気です。
姶良・伊佐エリア
霧島などの景勝地や温泉街が有名な姶良(あいら)・伊佐エリア。
「蒲生(かもう)の大クス」がある姶良市では、江戸時代から食べられている蒸し饅頭である「加治木まんじゅう」が名物。
あんまんのようなふんわりとした素朴な味わいのおやつです。
焼酎発祥の地と言われている伊佐市。
地元では「からいも」と呼ばれているサツマイモは、琉球を介して大陸から伝わってきたもので、火山灰が降り積もった稲作に不向きな土地でも育つことから重宝されてきました。
炊き込みご飯の「からいもご飯」、蒸したもち米と練った「ねったぼ」など、主食からおやつまでさまざまなかたちで親しまれています。
大隅エリア
志布志(しぶし)湾と鹿児島湾に面した大隅エリア。
まき網漁や一本釣り、底引き網漁などによる魚の水揚げがなされているほか、ブリの養殖も盛ん。
桜島の特産品である「桜島大根」と炊いた「ぶり大根」は双方の甘みや旨味といった長所を引き出しており、地元でも親しまれている味です。
また、温暖な気候と日照時間の長さを活かして野菜や果物の栽培が行われています。
サツマイモ、白菜、いちご、マンゴーなど、さまざまな農作物が収穫されています。
離島エリア
さいごは離島エリア。
鹿児島県は実際に人々が暮らしている離島を多く有する県です。
離島では、本土にはない独自の文化が育まれており、それは食の面でも垣間見ることができます。
奄美大島の郷土料理「鶏飯(けいはん)」は「とりめし」というよりは沖縄の「ケーファン」と呼ばれる料理に近い御茶漬けのようなもの。
ご飯に別皿に盛られた具材を載せ、鶏がらスープをかけていただきます。