「うどん県」の異名を持つ香川県。
日本のうどんの中でおそらくもっとも有名であろう「讃岐うどん」は、県民のみならず、全国にファンがいます。
農業も水産業も盛んで、うどん以外にもさまざまな美味しいものにあふれた県です。
本記事では、香川県の食文化やご当地グルメについてご紹介していきたいと思います。
肥沃な平野部に恵まれた農業の盛んな地域
四国の北東部に位置し、瀬戸大橋によって岡山県と結ばれている香川県。
山地がそのほとんどを占める四国には珍しく讃岐平野と呼ばれる肥沃な土地が広がっており、県土の半分近くを占めています。
日本一面積が狭い都道府県として知られている通り農耕地はそう多くはないのですが、温暖な気候と長きにわたる開墾の歴史もあり、稲作や畑作が盛んに行われていました。
農耕地が狭いが故の工夫としては田んぼの畔にそら豆が植えられていたことなどが挙げられ、乾燥させて煎ったあと、醤油や砂糖、みりんなどを混ぜた調味液に一晩浸した「しょうゆ豆」は現在も食べられています。
そら豆そのものの甘さが醤油の塩気と風味によく合う素朴な味わい。
瀬戸内海に面した沿岸部では漁業が盛んで、天然魚はもちろん養殖にも力が入れられています。
そんな香川県の名物と言えば、冒頭でもご紹介した「讃岐うどん」です。
コシが強い麺といりこの風味が効いた出汁が特徴で、県内ではさまざまな有名店がしのぎを削っています。
お正月に食べるお雑煮にあんこ餅を入れることでも知られており、観光客向けに年間を通して提供しているお店もあります。
甘じょっぱい味わいがクセになるそうです。
ここからは香川県を、東讃エリア、中讃エリア、西讃エリア、離島エリアの4つに分けて見ていきたいと思います。
東讃エリア
まずは徳島県とも隣接している東讃エリア。
県境に位置する引田では、こしあんをお餅で巻いた「うずまきもち」がひな祭りの際の行事食として食べられています。
この渦は鳴門の渦潮を表しており、鳴門の漁師と漁場を争った結果負けてしまった江戸時代の引田の漁師たちの、鳴門への未練が表れているそうです。
引田周辺では和三盆も栽培されており、お土産に人気。
江戸時代に高松藩を治めていた松平氏がサトウキビを植えるように指示したことから栽培が始まったそうです。
海沿いでは船舶漁業や養殖が盛んで、特にハマチの養殖で有名。
ここで養殖された「ひけた鰤」は、脂がのっていて甘く、絶品です。
中讃エリア
瀬戸大橋で岡山県と結ばれている中讃エリア。
讃岐平野が広がっていて農地に適しているのですが、川の水の量が少なく、ため池から水を引いて農業を行っていたそうです。
稲刈りが終わって水田から水を抜く際には鯉や鮒といった川魚がよく獲れます。
田植え前の時期に川をさらえるとドジョウが獲れ、野菜やうどんと一緒に煮込んだ「どじょう汁」が食べられていました。
裏作で小麦も盛んに栽培され、うどんや団子にして行事やお祝い事などの際に食べていたそうです。
特に半夏（はんげ）の小麦の収穫や田植えがひと段落したころには、小麦粉の団子に餡をかけた「はげ団子」が食べられていました。
ご飯、もやし、卵、刻んだたくあんなどとともに細かく刻んだうどんを混ぜて炒めた「ぴっぴ飯」は香川県の家庭の味。
「ぴっぴ」とは香川県の方言で、うどんの幼児語なのだそうです。
西讃エリア
三方を山に囲まれ、三豊平野から海へと抜ける西讃エリア。
温暖で肥沃な三豊平野では、稲作、裏作の麦、畑作が盛ん。
海沿いではいりこがよく獲れ、この地域で獲れたものは特に「伊吹いりこ」と呼ばれます。
いりこと野菜を入れて炊き込んだ「いりこご飯」はこの地域で親しまれている郷土料理。
いりこの豊かな香りやしっかりとした旨味を堪能できる一品です。
三豊市豊中町にある宇賀神社で行われる春と秋の大祭では、「えびみそ汁」が振る舞われます。
芝エビのほかにお米や豆腐が入っており、エビの頭やしっぽ、お米のとぎ汁なども余すことなく使った昔の人の生活の知恵を感じる行事食です。
離島エリア
さいごは小豆島をはじめとした瀬戸内海に浮かぶ離島エリア。
穏やかな瀬戸内海の恩恵を受けた島々では、春のサワラやマダイ、夏のハモや小エビ、秋のアナゴ、冬のヒラメなど、新鮮な魚介類が豊富に水揚げされます。
貝類や海藻類もよく獲れます。
観光スポットとしても人気の小豆島は、古くから醤油づくりやそうめんづくりで知られている場所。
老舗の醤油を使用したせんべいや佃煮も販売されているので、お土産にも最適です。
地元で醸造された調味料と新鮮な魚介類を用いた「ひしお丼」もぜひとも食べておきたいですね。
また、小豆島は日本のオリーブ栽培が始まった場所としても知られており、オリーブの木が育てられているオリーブ園は観光スポットにもなっています。
オリーブオイルやピクルスに加工されたものはもちろん、「オリーブソフト」なども販売されているそうです。