中国地方の中心部に位置する広島県。
牡蠣の養殖が特に有名で、「かき飯」、「かきの土手鍋」、「かき雑煮」、「かきフライ」など、牡蠣を使った料理が豊富です。
一年を通して温暖な瀬戸内の気候を利用したレモンの栽培も盛ん。
「広島風お好み焼き」などのご当地グルメも豊富です。
本記事では、広島県の食文化やご当地グルメについてご紹介していきたいと思います。
変化に富んだ地形・気候を持つ広島県
南側は波が穏やかで大小の島々が浮かぶ瀬戸内海に面し、北側には1000メートル級の山々から成る中国山地がそびえる広島県。
雨や雪が少ない瀬戸内海式気候が特徴の南部、やや寒冷で農業が発達している高原部、冬の寒さが厳しく積雪量が多い北部と、地形や気候の変化に非常に富んでいます。
広島県では、それぞれの地形や気候、そして文化的背景によって、さまざまな食文化が育まれてきました。
ここでは広島県を、安芸エリア、備後エリア、芸北・備北エリアの3つに分けて見ていきたいと思います。
安芸エリア
まずは県庁所在地がある広島市や造船で有名な呉市がある安芸エリアから。
原爆ドームや厳島神社など、県内の主要な観光スポットが揃っているエリアでもあります。
広島のグルメと言えば、真っ先に牡蠣が頭に思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
広島では古くから牡蠣を食べる習慣があったようです。
縄文時代や弥生時代にはすでに天然の牡蠣が食べられており、16、7世紀にはすでに養殖が行われていたと考えられています。
現在の広島県の牡蠣の生産シェアは全国の実に半分を占め、日本屈指の牡蠣の産地となっているのです。
身が大きく濃厚な味わいが特徴の広島の牡蠣は、全国から圧倒的な支持を得ています。
「かき飯」、「かきの土手鍋」、「かき雑煮」、「かきの殻焼き」、「かきフライ」と、広島市内を中心に県内のさまざまなところで新鮮な牡蠣料理を楽しむことができます。
もう一つの広島名物と言えば、「広島風お好み焼き」。
地元では単に「お好み焼き」と呼ばれることが多く、生地と具材を混ぜることなく重ねて焼いていくのが特徴です。
広島市内だけでなく、県全域で食べることができます。
厳島神社で有名な観光地・宮島では、「あなご飯」が名物。
この地域ではあなごも古くから食べられており、明治時代に駅弁として登場して以来、宮島観光名物になっています。
海軍のまちである呉や江田島では、「海自カレー」が名物です。
また、東広島市にある西条というまちは、京都府の伏見、兵庫県の灘と並ぶ酒蔵のまち。
きめ細かな味わいが特徴で、飲みやすい甘口のものからきりりとした辛口のものまで、さまざまな日本酒が楽しめます。
毎年「酒まつり」で振る舞われる「美酒鍋」は、酒のまちならではの郷土料理。
鶏肉や野菜を酒と塩コショウで煮たシンプルなもので、もとは蔵で働く「びしょ」と呼ばれる人々の賄いであったことから、「びしょ鍋」とも呼ばれていました。
備後エリア
県の南東部に位置する備後エリア。
南部は瀬戸内海に面した温暖な地域で、タコ、タイ、小エビなどが水揚げされています。
海老、野菜、豆腐などの上にご飯を載せ、昆布ベースの出汁をかけた「福山うずめ」と呼ばれる郷土料理や、新鮮なタコを使用したタコ料理が名物です。
ワケギやクワイ、柑橘類などの生産も盛ん。
クワイはあまり馴染みがない方も多いかもしれませんが、この地域では、素揚げ、サラダなどのほかに、「クワイの甘煮」と呼ばれる郷土料理にして食べられています。
また、美しい景観が広がり小説や映画の舞台にもなっている尾道は、「尾道ラーメン」が有名。
鶏ガラと醤油をベースにしたスープに背脂が載っており、尾道市を中心に県内に100店舗以上が軒を連ねる全国的にも人気のご当地ラーメンです。
芸北・備北エリア
県の西北部に位置する芸北エリアは、寒さの厳しい地域。
北部の山間の地域は豪雪地帯で、冬はスキー客でにぎわいます。
木型に酢飯とネタを入れて押して成型する寿司を一般に「押し寿司」と言いますが、広島では「角寿司」と呼んでいるそうです。
山間部では島根県から塩漬けされた鯖などを運んでいたことから、「鯖の角寿司」が食べられてきました。
「漬物焼きそば」や「夜叉うどん」などのご当地グルメも人気です。
県の北東部に位置する備北エリアは、比婆山や道後山などの険しい山々が連なる地域。
かつてたたら製鉄が盛んであった比婆では、役牛としての牛の飼育が盛んでした。
時代が経るにしたがって、たたら製鉄は衰退し牛を労働力として使うことも少なくなっていきます。
肉牛の需要が高まると、「比婆牛」は食用としての改良が進み、ブランド牛としての地位を築きました。
そんな「比婆牛」と地元の野菜をふんだんに使用した「比婆牛丼」は、周辺に訪れる際にはぜひ食べておきたいご当地グルメです。